休憩 それはもっと早く知りたかった……

ミカがやっとさらし代用品に慣れてきたタイミングでの話



ミカは屋敷の中庭にあるベンチで、ローブの袖をまくりながら洗濯物をたたんでいた。

さらし代用品も、ようやくコツがつかめてはきたものの、毎回巻くのは面倒くさい。

干すときも何となく人目が気になる。


 


(もう少し……こう、普通のやつが欲しい……)


 


とはいえ、ラセルに「下着ください」と言う勇気はない。


いや、ないというか、ないに決まってる。死んでも言えない。


 


そこへ、タイミング悪くラセルがふらっと現れた。


 


「織物の検品に出していた布が届いた。裁縫室に置いておく」


 


「へえ。ラセルさんって、そういうのも手配するんですね。生活感ないのに」


 


「必要なら仕立て屋に頼めばいい。寸法と素材を渡せば、同じものも複製可能だ」


 


「……へ?」


 


「下着なども、特に難しい品ではない」


 


「~~っ!? え、ちょっ、待って、それ! 今!?」


 


何気なく言われた一言に、ミカはタオルを落とした。


背筋がゾワッとする。顔が一気に熱くなる。


 


「ちょ、ちょっと! その、いきなりそんな単語出されると困るんですけど!?」


 


「困る必要はない。話の流れとしては自然だ」


 


「ええ~~!? 自然でした!? 今の、自然だった!?」


 


焦って手元の布を無駄に整え直しながら、ミカは頭の中をフル回転させていた。


いや、確かに数日前、勝手にさらし巻いてしのいだ。確かにラセルは無言だったけど……。


 


(……あれ、気づいてた?)


 


こっそり隠したつもりだったが、まさか把握済みだったなんて。


ミカの顔は赤みを帯びたまま、さらに真っ赤に染まっていく。


 


「言ってくれればよかったのに……!」


 


「おまえは尋ねなかった」


 


「それは、そうですけど!?」


 


言えなかった、じゃなくて、言わなかった。いや、言えるわけない。


ミカは背中を向け、必死に心拍を落ち着けようとするが、無理だった。


 


それでも。


どこか内心では「この人、ちゃんと見てたんだな」と思えて。


少しだけ、安心してしまったのも事実だった。

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