第31話 見知らぬ場所

 一般の利用者が使う発着ポート。そこに内設されたカフェでカササギたちが宇宙船発着の定時まで待っていた。バッジは用あって少し先に店から出て、テーブルに残っているのはカササギとティナとフィアの三人だ。

 

 先に食べ終わったフィアが背もたれに身を預けて体を伸ばしている。


「依頼も終わったことだし、次の依頼はどうするの」


 カフェの中を軽く見渡しながらカササギが答える。


「少し休みましょう。次の依頼も入っていませんし」

「もし入ったら?」

「その時はその時です。依頼内容次第ですよ」

「そうね」


 軽く会話を交わしながら、フィアは横目でティナを見る。

 ティナは黙々と一人で大量の料理を食べていた。カフェに置かれているものだからどれもが軽食なのだが、そう幾つも頼むと軽食ではない。


「ほんと、よく食べるわねぇ……若いっていいわぁ」


 顎に手を置いて心底羨ましそうにティナを眺める。するとティナは手を止めて、フィアの方を見た。


「だったら内蔵を機械化――ぁが」

「そういうこと言ってるんじゃないのよ。分かってるでしょ? まったく」


 フィアがティナの両頬を軽くつねる。


「あふが……すみがません」

「まったく、何言ってるのよ」


 ティナの頬から手を離し、フィアはテーブルに肘をついて頬のところに手を置きながらティナの方を見る。


「それよりも、あの子は大丈夫なの?」


 カササギもティナも、フィアの言う「あの子」が誰なのかすぐに分かった。

 ジンのことだ。

 カササギもフィアもティナ越しにジンが何をしようとしているのかは聞いている。そのあまりにも無謀な作戦。とても成功するとは思えなかった。フィアの言葉は当然のものだった。

 ティナとしても彼が無事に生還できる確立なんて天文学的なものだと分かっている。

 しかしながら、どこか成功させてしまう気がして、その先を考えてしまう。


「分からないです。でも……」

「でも……?」


 ティナが手を止める。


「もし宇宙に出れたらメトロポーズっていう惑星に行くらしいですよ」

「メトロポーズ? どこよそこ?」


 フィアが疑問符を浮かべる横でカササギが通信端末を使ってメトロポーズを調べる。


「調べても出てきませんね、彼はメトロポーズについて何か話していましたか? それとなぜ、その惑星に?」


 一瞬少し検索しただけだがカササギが探しても見つからないという事実が、メトロポーズに対しての疑問を深める。


「いや、特には話してなかったです……ただ、なんかドクっていうジンの友達? が昔その惑星にいたらしくて、行くらしいです」


 ジンは詳しく話さなかった。

 しかし自らの体のこと。ナノスキンという謎の物体。ドクの過去。ジンに何をしたのか。それらを知るために記憶を遡って、ドクがふと零した、昔いたというメトロポーズという惑星を目指す。

 まるで置手紙かのように、ジンは死地へと向かう前にティナにそのことを伝えていた。


「そうですか。彼がもし、生きてあの死地から帰ってくるようであれば、少し調べてみましょうか」

「はは。きっとすぐに分かりますよ。もし成功したらすぐにニュースになるはずですから」


 情報統制もできなそうですし、とティナは付け加えた。


 ◆ 


 草木一つすらない枯れた大地。どこまでも広がる灰色の地平線。人工物の一つも見つからない荒野に珍しく風化していない真新しい人工物が落ちていた。破壊されしきった宇宙船のような造形のものが地面に半分が埋まった形である。

 機体に覆いかぶさった砂の様子から荒野に放置されて一日ほどが経過したと推測できる。

 

 誰一人としていない荒野で放置された宇宙船の瓦礫。 

 その中で一人が目を覚ます。

 

「……っは。はぁ……はぁ。なんだ」


 操縦桿の部分で転がっていたジンが目を空ける。

 口の中に入った砂埃を咳払いしながら、ゆっくりと周りを見渡す。

 ジンのいる宇宙船の先頭部分は地面に埋まっていて、周りは茶色の土で埋め尽くされていた。一方で振り向いて宇宙船の後部を見てみると、割れた窓から光が差している。

 どうやら後部は地中に埋まっていないようだった。


「っぺ、か、ったく」


 もう一度口の中に入った砂を吐き出し、ジンが座席や入り口の突起に手をかけながら後部へと移動する。

 段々と強くなる光。

 窓越しに見えてきたのはどこまでも広がる荒野。


「どこだ……ここ」


 出入口の扉が壊れていたので、ジンはそこから外に出る。上手く体に力が入らずそのまま落下して地面に落ちるが、すぐに立ち上がった。そして破壊された宇宙船を背景に、ジンはただ荒野を眺める。


 ◆


 殺害目標――ジン。

 対象は現在消息不明。

 軍用機――X99について秘密裏に実行された作戦物であるため公表は禁止。以上の理由から東企業連合を通しての懸賞金依頼は不可。懸金屋運営からの達しにより、裏での懸賞金依頼も不可。

 上記の理由から部隊が結成される。

 サイバーテクニカ社、アストラ技研、エコロヘルパス財団、計三社の企業傭兵によって合同して組織される独立した作戦部隊である。

 任務は対象――ジンの殺害及び軍用特別機X99の確保。

 

 作戦行動開始。


 

 第一章 惑星ペースウッド編――了

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