「異世界食堂」や「異世界居酒屋のぶ」のような、とても面白いコンセプトだなと思いながら読ませていただきました。
例に挙げさせていただいた作品は、食事を通して異なる価値観の間柄の人々をつなぎとめ、相互理解を促すことで幸せな雰囲気に満ち足りた充実感溢れる作品となっています。
また、言語コミュニケーションが可能で一定の知性を持ち合わせていながらも通貨の概念を持たないというモンスターたちの飲食代を配信の投げ銭で補うという構想も、将来性を感じさせるものがあってよいアイディアだと思います。
さらに、ダンジョンならではの特殊な食材を用いた料理にも「ダンジョン飯」に通じた「未知の食材への好奇心」を感じることができ、ワクワクします。
惜しむらくは短編であるがゆえでしょうか、伸びしろを感じさせながらもそれを十全に味わい尽くせず、物足りなさを感じてしまう点がネックです。
お店のメニューのレパートリーも定食屋として見てもかなり控えめで、定番の料理や店長の得意・イチオシ料理と呼べるようなものが感じられなかったので、話を膨らませていくうちにそういったものが登場するのかと思うと、なんとも歯痒いものを感じます。
また、モンスターたちが蛮族チックなたどたどしい話し方をしていて語彙力をふんだんに使うことができないため、彼らからの食レポリアクションをどう表現するか、という課題点も中々に難しい部分があります。
この部分は、表現豊かな人間冒険者と一緒に食事をした際のリアクションに期待したいところです。
総じて、大きな伸びしろのある、成長途中の息吹が感じられる作品でした。