第15話 強さ

開いた扉の向こう側には約20人の白い法被を着た荒い団体が立っていた。

私は驚きのあまり身体が動かなかった。

(あ、終わった。)

この一瞬の間が今までの人生で一番スローモーションであった。

そんなスローモーションに溶け込めない2人の戦士がいた。

兄とマキナさんだ。2人は驚く暇もなく奴等のいる扉へ真っ先に走り込んでいた。逃げるのではない。自ら立ち向かいに行ったのだ。幾度となく死地を乗り越えてきた2人の勇気には脱帽するしかない。

白の法被を着た敵達も一斉に倉庫内へ流れ込んできた。ドス黒い声を挙げる者もいれば甲高い声を挙げる者もいた。奴等は年齢性別関係なく作られた目新しい組織らしい。

兄が一直線に先頭の巨体男を回し蹴った。巨体男は尋常ならぬ力に虚を突かれたのか後ろへ吹っ飛ばされていった。罵声が止んだ時にはマキナさんが次々と敵の顎へハムの皮を切るように薄く流した。流された顎に気付かぬままバタバタと白い法被は気絶していく。そのまま兄とマキナさんは残った16人相手に乱闘へ持ち込んでいった。

後ろから鉄棒を叩き込まれるかと思いきや、ノールックでかわして鉄棒人の横腹を右拳で射止める。多分肋骨を3つか4つ逝ったに違いない。兄の得意技だ。真正面から高く飛び蹴りしてきた相手にはその勢いが活かしてちょこんと顔面肘当てした。マキナさんはカウンターが得意。

そのまま僅か数分で片はついた。

血だらけになったリーダーらしき角刈り男は怯えながら兄の尋問に答える。

「両親は今どこだ。答えなければてめぇの小指を真反対まで折る。」

一語一句威厳に満ちていた。兄とは思えない。

「くっかか。……て、テメェらは、もう、終わりだ。」

「折るか。」

彼の右小指に手を掛けようとした時、彼はすぐ話を続けた。

「待て待て待て。本当だ。あんたらは『アンチ』の罠にハマってんだよ!」

「罠!?」

側のマキナへ視線を送るが当のマキナも疑問の表情を浮かべていた。

「俺達は単なる使いパシリさ。『アンチ』はもう日本に来ている。南米のnetsを撲滅してな。」

「なっ!」

「nets?」

すかさずマキナさんが説明した。

「…私達が長年協力していた殺し屋組織。……やっぱりダメだったか。……本当に、どうしよう。」

兄は腹いせに角刈り男を一発右頬を殴った。

「『アンチ』は今どこだ!!俺達の両親は!!」

「ハハッ。もう遅いよ。あんたの両親はとっくに始末されただろうさ。加えて『アンチ』はもうここへ向かっている。」

「何だと!冗談をい」

手を振り上げた瞬間、南側の扉がゆっくり開いた。総じて南側の扉を見る。扉の向こう側にはたった1人の女が立っていた。

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