触媒
「あれって本当のことかしら?」
「本当ですね。悪魔である私が断言します。あれは悪魔とのハーフです」
「へー。皇国の大司教様が悪魔だったなんてねぇ……いいことを知れたわ」
逃げるようにベニテス大司教が去っていった後、お嬢様は悪い笑みを浮かべる。
「……それで、ここから大事な話だけど、私たちアリミア王国は悪魔がかつて、この世界に訪れていたさいに残した遺物であったり、肉片であったりを触媒に悪魔を召喚するわ」
そこから一転、急にお嬢様は真面目な表情で言葉を投げかけてくる。
「悪魔の子。それを触媒に、親を召喚することはできるのかしら?」
「もっと上が出来るでしょうね」
「……上?」
「はい。上です。悪魔にとって血縁というのは大きいのですよ。触媒としての反応はその親を呼ぶどころではないでしょう。その親の生まれ。親の種───そこに、近いところまで召喚できるでしょう」
原罪、まで届くかと言われれば厳しいか、モウくらいであれば呼べるのではないだろうか?
「一般論で考えれば、モウ一体で人類の危機ですからね」
「……」
とはいえ、モウでこの世界だと十分だろう。
何でも成し遂げられるだろう。
まぁ、制御出来ればの話だが。
「……もしかして、ベニテス大司教がここにいるってのはだいぶまずい、のかしら?」
「ふふっ、お嬢様は恐れる必要はありませんよ」
不満そうに思案するお嬢様に対し、僕は不敵な言葉を返す。
「ただ、貴方は座して待てばよいのでしょう」
「そういう、訳にもねぇ?」
「貴方が何を望み、何を為そうというのか。それに従い、駒を動かせばよいのです。私も、モウも、あのドラゴンも、すべてはお嬢様の御心のままに」
もう僕は既に自分の実力をあまり隠そうとしていなかった。
僕自身の力も、モウの力もこの世界だと過剰戦力もいいところ。あの生まれて間もないドラゴンでさえ、国一つ相手にすることだってできるはずだ。
「……ありがとう」
それを受け、お嬢様は苦笑を漏らし、そして、笑みを漏らす。
「私は、私の領の為に動く。ここで何を掴めるか。それが、すべてね」
その次にお嬢様が口にするのは何とも頼もしい言葉だった。
「はい。その通りにございます」
そんなお嬢様の言葉に対し、僕は満足げに頷く。
「私はあくまで招待された側よ。基本的には相手が動くか。それを待つわ。主導権を握られていると思うと……それは癪だけど、それくらいを認める度量は持っておくべきよね?」
「えぇ、その通りかと」
少人数で動く僕たちの今後の方針。
それを定めるのだった。
まぁ、とりあえずは何もしないという方針なので、これから何かが変わることはないのだけど。
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