『王道ファンタジーの裏で最強の遊び人 〜伝説級スキルで、魔王討伐も美少女攻略も余裕でした〜』

おたべ〜

【第一話】 転生したら「遊び人」でした。しかも最弱職じゃないってマジ?

「この書類、今日中に全部まとめておいてくれる?」


深夜2時を過ぎたオフィスに、乾いた上司の声が響く。


「……はい」


俺の名前は春日ユウト、28歳。ブラック企業歴7年目の社畜戦士だ。

今日も終電を逃し、仮眠も取れず、空の弁当箱に小さな夢だけが詰まっている。


「終わらねぇ……」


机に突っ伏した瞬間だった。

目の前が、真っ白になった。


──あぁ、ついに倒れたか。

そう思ったが、それは違った。


次に目を開けたとき、俺は草原に寝転がっていた。


「え……ここ、どこだ?」


空はやけに澄み、風は甘く、空気が美味しい。

見慣れたビルも、騒音も、終電もない。


──異世界。

俺でもわかる。これ、異世界転生だ。


「異世界転生してるー!!」


そう叫ぶ俺の目の前に、突然ウィンドウが開く。


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名前:カスガ・ユウト

年齢:28

職業:遊び人(Job:Joker)

称号:異世界転移者

スキル:〈遊戯模倣〉〈幸運極振り〉〈無限適応〉

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「ゆ、遊び人……?」


ふざけたジョブ名に俺は絶望しかけた。

“遊び人”なんて、ゲームじゃ最弱職の代名詞だろう。

踊ってるだけで戦えない。そんなイメージしかない。


だが、目を凝らしてスキル説明を読むと――


■〈遊戯模倣〉:

他者のスキルを模倣し、条件を満たせば習得可能。模倣後、成長倍率3倍。


■〈幸運極振り〉:

すべてのランダム要素に極端な偏りを生じさせる(ポジティブ限定)。


■〈無限適応〉:

どんな環境・状況にも適応し、最適解を自動選出・行動。


「……チートじゃん、これ」


最弱どころか、最強の裏職じゃないか。


そのとき、またウィンドウが開いた。


=============

メインストーリー開始:

“勇者レオン、魔王討伐の旅へ”

あなたは関係ありません。自由にお過ごしください。

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「いや、関係ないってなんだよ!」


突っ込みたくなる内容だが、まあいい。

俺はこの世界での第二の人生、満喫させてもらうぜ。


まずは街を目指そう。飯も金も宿も必要だ。


草原を歩き出すと、運良く旅商人の馬車が通りかかった。


「へぇ、転移者か。よかったら乗ってく?」


「まじっすか!ありがとうございます!」


幸運スキルのおかげか、話はトントン拍子に進む。

商人の話によれば、近くの街・ルエンブルグは“勇者御一行”の出発地らしい。


「勇者?レオンって名前でした?」


「そうそう!知ってんのかい?今年の勇者様は期待の新星って評判だぜ」


なるほど。表のストーリーは勇者たちがやる。

なら、俺は裏で好き勝手やって、気づけば全部片付けてました――

そんな感じ、悪くない。


「さて、“遊び人”の力、試してやろうじゃねぇか」


ユウトの異世界冒険が、今始まる。

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