第6話 別れは突然にして、涙のように
シリウスは出征して鬼狩りの帰路に着く。
太陽は灼熱の様で、茹だる熱気に包まれていた。
ふと、焼ける匂いがした。
廃墟の匂い。滅びの匂いだ。
嫌な予感がする。そうでないことを切に祈る。
祈りは裏切られた。
そんな、嘘だろ……
国は滅びていた。生きてる者など居なかった……。
「ユズリハ、ユズリハは居ないのか?」
涙を流すまいとユズリハを探す。
ユズリハは血を流して倒れていた。
「あ、あっ、ユズリハッ。」
俺は彼女に駆け寄った。
「ユズリハッ、今、助ける」
「助からないよ……私、分かるんだ」
「そんなの分からないじゃ、ないか!」
「ねえ、シリウス」
「私ね、君の頑張り、見てたんだ」
「大丈夫、君はしっかり、進めていたよ」
(涙を流す俺)
「俺は、君に……、君に何も、出来なくっ、て……」
(微笑む彼女)
「君に重荷は残すまいとしたんだけれど……」
「これ、あげるね」
彼女が渡したのはミサンガだった。
彼女が人間として生きた証。ユズリハの自己主張。
「そんな大切な物を、俺に……」
「君に、渡すね……」
彼女の手からミサンガが渡る。
俺の胸には不思議と力が湧いてくる。
俺から涙が流れていた。
まるで、彼女は熱と生命を俺に託すかの様で……。
彼女の手が地に落ちる。
その時、太陽が瞬いた。
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