6怖目 『お通夜』
今日、学校のホームルームでクラスメイトのカホちゃんが亡くなったと聞かされた。
日曜日の夕方、人気のなかった近所の踏切に飛び込んで、電車にはねられたらしい。
今夜、お通夜があるらしいが、『先生は来たい人だけで来ればいい。無理強いはしない』と泣きながら言った。
私はお通夜に出席することにした。
カホちゃんとは家が近く、昔からよく遊んでいたからだ。
その日の夕方、私はお母さんと一緒に黒い服を着て、カホちゃんの家に向かった。
カホちゃんの家には、カホちゃんの親戚や通っていた塾の友達、そして学校の先生や校長先生、何人かクラスメイトや隣のクラスの子も来ていた。
家に上がると、居間には、奥の中央に笑顔で写る、カホちゃんの大きな写真が飾られ、たくさんのお花がお供えされ――その前には小さな棺桶が。
しばらくして、お葬式が始まった。
お坊さんがお経を唱えながら木魚を叩き、順番にお焼香を上げ、棺桶の中のカホちゃんにお別れの言葉を告げていく。
カホちゃんママは、お焼香の途中で棺桶にすがりながら泣き崩れ、それをカホちゃんパパが抱えていた。
続いて、カホちゃんのおじいちゃんやおばあちゃん、親戚などがお焼香を終えた後、先生やクラスメイトの家族がお焼香を上げた。
これも、先生は棺桶にすがりついて、ぐずぐず泣き、お焼香を上げて席に戻ってきたクラスメイト達も、顔を真っ赤にして泣いている子もいれば、顔を真っ青にしている子もいた。
私の番が回ってきた。
私はお母さんと一緒に、お母さんの真似をしながらお焼香を上げ、開いた棺桶の中のカホちゃんを見た。
その姿に私は衝撃を受けたと同時に、どうして先生が『無理強いはしない』と言っていたのかがわかった。
棺桶の中のカホちゃんは顔中が紫色のアザだらけで、少し視線を横にずらすと、カホちゃんの体は、まるでオクルミで包まれた赤ちゃんのように白い布でグルグルに巻かれていた。
しかし、明らかに体のパーツがいくつか無くなっており、ただでさえ小柄だったカホちゃんの体はさらに小さくなっていた。
――カホちゃん。幼稚園の頃からずっと仲の良かったカホちゃん。
どうして死んじゃったの? どうして踏切に?
ボロボロと涙が溢れて、カホちゃんの顔がよく見えなくなった。
お母さんも泣きながら、二人で手を合わせた。
みんなのお焼香が終わると、カホちゃんパパが、みんなの前に立った。
『本日はご多忙の中、カホの葬儀にご会葬いただき、誠にありがとうございます』と言った後、しばらく話を続けていたが、途中でボロボロと泣き出してしまい、何度も何度も『すみません』と謝っていた。
明日は家族と親戚だけで葬式をした後、火葬場に行って、カホちゃんを燃やすらしい。
お通夜も終わり、帰ろうとした時、カホちゃんママが声をかけてきた。
「ごめんね、〇〇ちゃん。もし嫌じゃなかったら、カホに最後の言葉をかけてくれない?」
私は頷くと、カホちゃんの棺桶の前に行き、顔を覗いた。
さっきは悲しみと衝撃で気付かなかったけど、改めてよく見ると、安らかな顔をしている。
それはまるで眠っているみたいで、少し呼びかけただけで、眠そうに目を開けながら、『おはよう』と言ってくれそうな――そんな寝顔に見えた。
隣を見ると、またカホちゃんママがぐずぐず泣いていた。
ひんひん鼻をすすり、涙をポロポロ流しながら――
「カホ……カホ……なんで死んでしまったの?」
私はそれを見るのが辛くて辛くて、またカホちゃんの顔に目を向けた。
カホちゃんは目を開けて、カホちゃんママの方をギョロッと睨んで――
『おまえが殺したんだろ』
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