5怖目  『ストーカー』


 人気のない夜道。


 頼りない街灯が、ところどころに滲むように灯っている。


 静寂のなか、足音がふたつ。私のものと、それより少しだけ重い、もうひとつの――


 まただ。今日も、アイツがつけてきている。


 黒いフードを深くかぶった男は、荒い息を漏らしながら、じりじりと距離を詰めてくる。


 どこか歪んだ足取りで、まっすぐ、私だけを見ている。


 お願い、誰か。


 助けて……お願いだから……。


 もうすぐ、明るい通りに出る。 


 あの角を曲がれば、きっと――


 だが、届かなかった。


 背後から肩を掴まれ、突き倒される。


 冷たい刃が、胸に――突き刺さる。


 一度。二度。三度。

 何度も。何度も。何度も――。


 ――やっぱり、逃げられなかった。




 死んだはずの私の時間は、そこで終わらなかった。


 あの日から、時計の針は同じ場所で止まり続けている。


 私を殺したあと、アイツも命を絶った。


 それなのに、あの夜は終わらない。


 今も、毎晩。あの時間になると、私たちは“再び”ここに現れる。


 私は逃げ、アイツは追い、殺す。


 それだけの、終わりのない繰り返し。


 この地獄から、誰も私を救ってくれない。


 ねえ、お願い。

 もう、私を――


 この“夜”から、解放して――。

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