3怖目 『すき、きらい』


 僕たちはちーちゃんのことが大好きだ。


 ちーちゃんは僕たちを見つめるときはいつもニコニコしながら「きれいだね」と優しく言ってくれる。


 ある日、ちーちゃんが僕たちのところへ来た。


 いつも通り、ニコニコして僕たちのことを見つめている。


 ちーちゃんは、小さな手をそっと僕たちに伸ばした――撫でてくれるのかな、なんて、思ってた。


 ブチっ――


 ちーちゃんは、僕の隣にいた仲間の体をいきなり引きちぎった。


 何が起こったのか理解するよりも早く、ちーちゃんは仲間の頭に指で摘んでこう言った。


 「すき!」


 仲間の頭の一部が引き千切られる。


 仲間が次々と悲鳴を上げる。


 『痛い、痛いよちーちゃん!』


 引き千切られた子は、必死にちーちゃんに呼びかけた。でも――その声は、ちーちゃんには届かない。


 「きらい!」


 ちーちゃんがまた引き千切る。


 『――やめてやめて! どうしてそんなこと言うの?』


 「すき!」


 ブチっ――


 「きらい!」


 ブチっ――


 「すき、きらい、すき、きらい、すき――」


 ブチっブチっブチっブチっブチっ――


 「きらい!」


 ブチっ。

 

 もうすっかり千切る箇所が無くなった仲間はぐったりとして、動かなくなった。


 どうして、どうしてそんなことするの、ちーちゃん。


 僕たち、友達じゃなかったの?


 他の仲間はすんすん泣き、恐怖に震えている。


 そんな僕たちの悲しみを他所に、ちーちゃんはがっかりした様子で――


 「きらい……かぁ」


 だが、すぐにパッと明るい顔をするとこちらへ顔を向けた。


 「まあいっか、まだこんなにたくさん咲いてるんだもん」


 ちーちゃんの手が、こちらへ影を落とす。


 「こうきくんは、ちーのことがすき!」


 ブチっ――

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