第15話 流通商人

 拠点に現れたロナンとか言うクソ男がパンツ一つになるまで見張り、その後ハンニバルが縛り上げた。

 腕は後ろ手に縛り、両足首をクロスさせて、その間を交錯させるように何箇所かの基点で結ぶ。その後、ボロ布でぐるぐる巻きにして更に上から縛り、横倒しにして顔だけが動ける様にした。ミノムシ拘束である。


「はわわ……ごめんなさいです……」

「いえいえ……私の身の安全が保証できるのでしたらいくらでも縛ってください」


 エクエルは謝っているが俺とサンダーは男の荷物を調べ、ハンニバルは男の着ていた服を調べる。


「石とか、木の根っことかしか無いね。後、この小瓶の銀色の液体は何だろ?」


 サンダーは荷物の中身を丁寧に出して外に並べる。訳わかんねぇモンばっかだな。ハンニバルなら何がわかるか? と、


「……」


 俺は取り出した一つの小瓶を見つけて驚愕する。


「天那?」

「エクエル! すぐにソイツから離れろ!」

「え?」

「早くこっちに来い!」


 エクエルは少し困惑気味に駆け寄ってくるとサンダーの側に。俺は立ち上がり、ナイフを抜く。男に歩み寄る途中でハンニバルから声がかかった。


「どうした?」

「……お前の方は何か出たか?」

「護身用の仕込み粉末が服の至る所に仕掛けられてる。ハハハ。食らうと涙とくしゃみが止まらなくなるヤツな」


 俺はハンニバルに見つけた瓶を投げ渡した。


「なんだこりゃ?」

「『覚醒薬ドーズ』だ。『強化兵士レギオン』が飲むことで素体ベース能力を一時的に引き上げる効果がある」

「ドーピングか。つまり、ロナンは『強化兵士』か?」

「間違いねぇだろ」

「だが、そうだとすると少し辻褄が合わない事もあるぜ?」

「あ? ヤツの肩を持つのか?」

「まぁ、聞いてくれよ天那。お前がサンダーとエクエルの為に警戒するのもわかる。だが、認識の方向性が一方通行だと大きな要素を見落とすぜ?」

「……何が言いたい?」


 ハンニバルは男を見る。男は俺からの敵意と『覚醒薬』を見て何も言わずに汗を流していた。


「オレもロナンの素性に関して全部説明出来るんだよ。尋問しながら照らし合わせるから立ち会ってくれ」 

「…………」


 認めたくはないがハンニバルは俺には無い知識と視点を持っている。話を聞いてからでも男を始末するのは遅くは無いか……


「だが、変な矛盾があったら即殺る。『強化兵士』は丸腰に見えても何を持ってるか解らねぇからな」

「ハハハ。OKだ」






 天那は決断から実行までのラグが殆ど無い。

 『夜狼』が、そう言う特徴だからかもしれないがそれ以前に、天那自身も多くの戦いを経験した上で、そう言う結論に至った故の行動だろう。


 だからこそ、しっかり側で見ててやらないと、どんどん社会から孤立してしちまうな。目が離せないヤツだぜ。


「ロナン、いくつか質問を良いか?」

「はい! どうぞなんなりと!」


 オレの問いにミノムシ横倒し状態でロナンは返答を返してくる。隣の天那の視線から、嘘をつくなよ? と言う前振りは必要無さそうだな。


「まず、何でこの基地に来た? 村人から何も聞いて無かったのか?」

「確かに近くの町に滞在した時に、この基地は機能していないと言う情報は手に入れました。しかし、私個人の性分と致しまして、自らの目で確認しない限りは真実とは考えないのです。足の届かない距離ではありませんでしたので」

「テメェの心得なんざ、どうでもいい」


 次は天那の質問が向けられる。


「『覚醒薬』がお前の荷物に入ってた。どこで手に入れた?」


 オレは天那から渡された『覚醒薬』をロナンの目の前に置く。


「コイツは『研究所』以外では作られない。そして、持ってるのは『強化兵士』だけだ」

「私は小さく貴重なモノを取り扱っておりまして、その『覚醒薬』は横流しされた物を高値で取引し入手したしだいです」


 ロナンは緊張から汗を流しつつも、言葉に詰まる事なく『覚醒薬』の入手経緯を語る。


「私、ロナン・ブロードは商人でも特殊な商品を取り扱いしておりまして、万人に一人が価値を見出すモノを中心に商いをしております」

「おい、俺をあんまりナメんなよ? そんなガラクタばかり売ってお前に利益が出るわけねぇだろ。適当言ってやがるなら――」

「ほ、本当です! 集落や村には一人は私の商品を買うお客様がいらっしゃるのです!」

「チッ、時間の無駄か……」

「主な“商品”は『情報』だろ?」


 天那がロナンの首をナイフで掻っ切りそうだったのでオレが間を繋ぐ。


「あ? 情報だ?」

「……その……そちらの男性の方、お名前をお伺いしても――」

「嘘か、クソ野郎が」

「じょ、情報です! 古い言い伝えから最新のモノまで幅広く取り扱ってもらわせてます!」


 天那の圧は脅しを超えてるから話がスムーズに進んでいいねぇ。まぁ、命より高いモノはこの世には無いからな。

 すると、ロナンは観念したように全てを語る。


「私は『流通商人』です……主な商品は“情報”です……」

「だ、そうだ。天那、何か質問してみろよ。お前しか知らない様なヤツ」

「わ、私にも限界はありますよぉ!?」

「“ブレイカー”はどこにある?」


 と、天那の質問にロナンは言葉を止めた。“ブレイカー”。オレは知らない情報だな。

 すると、ロナンは焦った表情から真実を語るように真面目に告げる。


「確認をしたいのですが……“ブレイカー”とは『城門破壊戦棍ブレイカー』の事でしょうか?」

「ああ、そうだ」

「中央戦線における『オーディーン』の『中央第五基地』にて回収保存されております。実物を見たので間違いありません」

「…………ちっ」

「ハハハ。それは、どう言う舌打ちだ?」

「この野郎の言葉は信憑性がある。“ブレイカー”はそうなる可能性が高い状況だった」


 どうやら天那にしか解らない情報だったみたいだな。オレもこの波に乗らせてもらう。


「【軍神】マーリンは今、どうしてる?」

「その情報は……私の安全と関係が……」

「さっきのはデタラメか。クソ野郎――」

「わぁぁ!! 【軍神】マーリンは! 『オーディーン』の『統括総司令官』に就任しています!」


 お、マジで戦争終わるじゃん。


「例のお前の師匠か?」

「ああ。天那、戦争は10年以内に終わるぜ。『連合軍』の負けだ」

「ペッ、知るか」

「あの……」


 ロナンが恐る恐る聞いてくる。


「私の命に差し支え無ければ……お名前をお聞きしても……?」

「オレはハンニバル・K・バルカ」

「…………六道天那だ。外で俺の事バラしたらテメェを解体バラしに行くからな」

「は、はい! それはもちろんでございます!!」


 とりあえず『強化兵士』疑惑は薄くなったので、サンダーとエクエルも呼んで自己紹介。

 天那の監視の元、服を着させてビジネスの話をするか。

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