第12話 静寂の中に何を見る

 僕とヴェルグレドさん、それからジーフリトさんは、とりあえずその場を離れお互いの経緯を話し合っていた。


 ジーフリトさんは僕がヴェルグレドさんと会った後、いろいろ大変だったみたいだ。しかし、魔王が王都に来ていたなんて。全ての裏に魔王が居てヴェルグレドさんとかを操っていたのなら納得がいく。


「魔王、魔王かぁ。悪い人じゃないと思うけどなぁ。」


 ヴェルグレドさんは呑気すぎる。自分が騙されてたって自覚はないのだろうか。


 ジーフリトさんは気まずそうにしている。まあ、あんなことがあったらグレてしまうのも理解できる。なんたって、今まで信じていた神に裏切られたのだから。だからといって反抗期みたいなグレ方をすることはなかったと思うが、まあいいだろう。


「それより、ジーフリト。あのとき急に自殺して悪かった。」


「???」


「急すぎて混乱したと思うが、私には私なりの理由があったのだ。理解してくれ。」


 ヴェルグレドさんはいったい何を言っているんだ? 自分の自殺をなぜジーフリトさんに謝ってる? ますます意味が分からない。


「い、いや、僕も殺そうとして悪かったよ……。助けてくれてありがとう。」


 ジーフリトさんも若干虚を突かれつつも謝罪した。

 よし、これで仲直りは成立した。まあ、もうヴェルグレドさんの無罪を主張すべき対象(王国の人たち)はいなくなっちゃったけど。


「過去のことはもういいです! これからどうするか話し合いましょう!」


 僕は区切りをつけるためにもパンと手を打った。

 そして、王城の跡地の方に視線をやる。


 そこには依然として巨大な光輪が燦々と輝いていた。


「どうするか、か。僕は、奴を殺したい。奴は最早神とは呼べない。」


 僕も同意見だ。だが、僕らでは敵う気がしない。


「私はなんでもいいぞ!」


 わかってた。ヴェルグレドさんに今の状況が理解できるわけない。


「じゃあ、早速行こうか。」


 ジーフリトさん気が早すぎる。作戦とか立てないの?


「———その話、ちょっと待った。」


 突如、僕らを呼び止める声がしたかと思えば、空間が裂け、虚空から黒髪の聡明そうな青年が出てきた。


「どの面下げて出てきたぁ!」


「やぁ! 久しぶり!」


 二人それぞれの反応を示している。いうなれば――二者二様、だろうか。

 いやいや、言葉遊びなんかしている場合ではない。この青年は何者だ?


「まあまあ、そんな怒らないでよ。元勇者君。それに、久しぶりだね。ヴェルグレド君。」


「黙れ! お前のせいで、お前のせいで―――魔王!!」


 えっ、この人が魔王? まったく風格を感じない。その辺に居そうな青年って感じだ。でも確かに、登場の仕方が異常だし、どことない底知れなさはある。


「落ち着いてよ。俺は話し合いをしに来たんだ。」


「お前の話はもう聞かない!」


 ジーフリトさんがそれだけ怒るのも無理はないだろう。魔王に王国関係者が皆殺しにされて、それが引き金となってこうなったのだから。


「…今は、聞くべきかと。」


 心を殺してそう提案する。多分、勝てないと思う。ジーフリトさんも、ヴェルグレドさんも。


「話が分かるね。まず、俺はシラーが邪魔なんだ。でも今戦える状態じゃない。だから、君たちにシラーを倒してほしいんだ。」


 なるほど。だが、僕らにシラーと戦うメリットが存在しない。


「もちろん、タダ働きはさせない。ヴェルグレド君、君には、君が一番知りたいことを教えてあげよう。」


「なに!?」


「そして、ジーフリト君。君は、俺の領地でスローライフさせてあげよう。」


「…………それは、魅力的だな。」


 この人、やるな。的確に二人が欲しがっている物を提示して見せた。ヴェルグレドさんのに関しては曖昧過ぎて怪しいけど。


「決まりだな。俺の配下を呼ぼう。肉盾にでもするといい。」


「え? いいんですか?」


「いいよ。もともと捨て駒のつもりで集めたし。」


 そう言って魔王が指を鳴らす。すると、四方に空間の裂け目が出現し、四つの人影が現れた。それぞれ頭に特徴的な角を持っており一目で魔族と分かる。


「お呼びでしょうか、魔王様。」


「リセルド、ここに。」


「グラウヴァス、参上!」


「………」


 個性的な人たちだな。ウィルクリスはそう感じた。


「あっ、ルクシアじゃないか! 久しぶりだな!」


 ヴェルグレドさんが魔族の一人———青に近い黒髪の女性に手を振っている。

 一方ルクシアと呼ばれた女性は気まずげに顔をそらした。


「それと、これを渡しておこう。」


 魔王が異空間から何かを取り出す。

 それは、朽ちた聖剣。剣先はボロボロに欠け、平地もくすんでしまっている。


「修復は間に合わなかった。すまないね。」


「……いや、十分だ。」


 ジーフリトは朽ちた聖剣を見て覚悟を決めたようだ。引き締まった顔をしている。



「行こうか。」


 僕とヴェルグレドさん、そしてジーフリトさんに魔王の配下四人を加えた七人は光輪に向かって歩いて行った。

 僕は、この戦いをなんとしてでも見届け、後世に伝えることを誓った。




 ―――――瞬間、世界が反転した。

 僕らは、曇り空を見下ろした。

 ―――――瞬間、時が止まった。

 僕らは、思考すらできなかった。


 後には、静寂だけが残った。

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