第2話 新人(異色)

「今日は追加の人員が三名来てくれた。紹介する。」


 ジーフリトさんがそう言うと、特徴的な三人が前に出てきた。


「俺はゼファ・リ・ドラーだ。ニーズル神国で聖騎士をやってる。」


 厳つい顔の騎士はそう名乗った。顔にいくつも傷跡があって、どう見ても聖騎士というなりではない。

 表情も険しく、本当に神職なのか疑いたくなるくらいだ。


「私はリラ、リラ・フィロメーネ・アルゼリーナよ。フリンスト共和国で信仰系の魔術を専攻していたわ。」


 こちらは、なんというか、格式が高そうな感じのお嬢様だ。なぜこんな部隊に派遣されたのか分からない。

 彼女はその腰まで伸びてる銀髪をはらって後ろに下がった。


「メルキオールという。結界を専門とした魔術師だ。よろしく。」


 今度は、気難しそうなおじいさん。どこにでもいそうな見た目のおじいさんなのに、どこか独特な雰囲気を放っている。


「うん、彼らは隣国からわざわざ来てくれた。みんな仲良くするように。」


「はーい。」


 返事をしたのはウィル一人。ウィルは顔を赤くした。


「それから、前線から結界の維持が怪しくなってきたって連絡がきた。もしかしたら増員を待たずに出撃することになるかもしれない。準備しておくこと。じゃあ、この後は野外で演習だから、ひとまず解散。」


 ……え? たったこれだけの人数で出撃するかもしれないってこと? 新しく来た彼らを含めても二十人いるかいないかくらいだよ??

 

 僕は立ち去っていくジーフリトさんを追いかけた。


「待ってください! 出撃するかもしれないって、これだけの人数でですか? アンデッドの大群と戦うんですよね?」


 ジーフリトさんは立ち止まり、爽やかに笑った。


「そうだね。でも、上もこれ以上人数は割けないらしいし、仕方ないんだよ。」


 僕はその言葉を聞いて驚愕した。その死霊術師ネクロマンサーは国を脅かす存在じゃないのか?


「ちょっと、僕、話してきます!」


 ジーフリトは、走り出すウィルクリスの背を笑って見送った。その目は、どこか冷めていた。



 野外演習が一段落したころ、ウィルクリスはとぼとぼと宿舎に帰ってきた。


「どういた? 小僧、辛気臭ぇ顔しやがって。」


 この人は…、確か、聖騎士のゼファさんだ。


「すいません。ちょっと、話が拗れちゃって…。」


 ゼファさんがバンと背中をたたいてくる。

 僕は思わずつんのめってしまった。


「ガハハ! てめぇは若いんだからもっといい顔しとけよ! 小僧!」


 ……なんか、この人やけに機嫌いいな。紹介の時は、めちゃくちゃ険しい顔してたのに。


「なにか、いいことあったんですか?」


 そう聞くと、ゼファさんはポリポリと頭をかいた。


「それがなぁ、あのジーフリトってやつ、めちゃくちゃつええんだよ。俺ぁ国元で騎士団のやつ全員ぶちのめしたが、あんな強い奴はいなかった。」


 ……もしかして、この部隊って、問題のある人員の寄せ集めなのだろうか。

 さっき王城で話した宰相の言葉が脳裏によぎる。


「ほかの国が攻めてくるかもしれないこの状況で人員を割けるわけないでしょう。もし、あなた方が失敗して、切羽詰まった状況に陥ったら軍を投入しますよ。」


 王宮にとってジーフリトさんのことが邪魔なのか?

 だとするとこの編成にも納得がいく。

 クソっ、ジーフリトさんは本当にいい人なのに、こんな扱いを受けているのが納得いかない。


「おい、話聞いてんのか?」


「すっ、すいません!」


「だからぁ、稽古つけてやろうかって。」


「遠慮しときます! 夕食の準備があるので!」


 僕はそそくさとその場を立ち去った。

 この人に稽古をつけられるとか、冗談じゃない。



 夕食を作り終え、全員に配り終わった僕は、席についていた。


 今日作ったのは、トマトと赤豆のポタージュだ!

 なかなか白い豆が手に入らなくて、ポタージュというよりはポタージュ風のシチューとなってしまったが、アレンジとしては悪くないだろう。


 僕がポタージュを啜っていると、となりに銀髪の女性が座ってきた。

 えーっと確か、魔術師のリラさん、だっけ。


「これ、あなたが作ったの?」


「はい、そうですけど。」


「ふーん。フリンストのそれとはまるで違うわね。まろやかさがない。これじゃシチューじゃない。」


「はい…、すいません。」


 僕はしょんぼりとした。もうちょっとゆっくり市場を回ればよかった。それか、完熟トマトを使ったのがよくなかったのだろうか。

 クリームベースでのポタージュも研究しておこう。


「……でもまあ、これはこれで悪くない。香草の使い方は上出来ね。味に深みがあるわ。」


 僕はそれを聞いて顔を明るくした。


「よかった! ありがとうございます!」


「ふん! 悪くないってだけよ。やっぱり故郷の方が一番だわ。」


「精進します!」


 褒めてもらえてよかった。そっか、今まではみんな王国の人だったけど、今度はいろんな国から人が来てるのか。あとで、残りの二人にも好みとか聞いておこう。


 食堂にジーフリトさんが入ってきた。

 どことなく空気が重くなる。ゼファさんだけは嬉しそうにしてる。


「食事中にすまない。連絡だ。上からの決定で、出撃は三日後に決まった。」


 さらに空気が重くなる。

 ジーフリトさんが続けて話す。


「出撃したら、命の保証はできない。降りたい人は降りてくれて構わない。」

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