第11話 追悼?それとも哀悼?
それからというもの、ヴェルグレドは三日三晩休まず死者の蘇生を続けた。休みなくひたすら負のエネルギーを練って、損傷が少ない死人にそれを込める。
もう何回目かわからない。だが、また新たにアンデッドとなった兵士が立ち上がった。そして、一連のやり取りを経て彼は死を選んだ。
「まったく、ヴェルグレド様の慈愛が伝わらないなんて愚かですね。」
ヴェルグレドは後ろをぞろぞろとついてくる人たちを見てため息を吐いた。
アンデッド化を拒む人が多いとはいえ、母数が多いとそれだけ少数派も多くなるものなのだ。十人に一人くらいの割合で、ヴェルグレドに賛同する人も現れ始めた。
「私は、あくまで彼らの選択を尊重する。」
「流石です!! ヴェルグレド様!」
キラキラとした目で魔術師の女性がヴェルグレドを見ている。
正直付きまとわれるのは困るが、悪いことばかりではない。騎士のような人を蘇生したとき、襲われそうになったのを彼らが止めてくれたのだ。
まぁ、しばらくはこのままにしておいてタイミングを見て逃げようかな、とヴェルグレドは考えていた。
「我々はこのままヴェルグレド様をお守りするぞ!」
「この方に一生ついていくんだ!」
「アンデッドだから死なない! 永遠にこの方の御傍にいれる!」
「なんて素晴らしいんだ!」
うるさいなぁ。そう思いつつヴェルグレドは次の死人へと取り掛かった。
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「まさか、こんなにも早いとはね…。」
ジーフリトは、王から下された命令を思い出しため息を吐いた。
「ゴードルド帝国との戦に現れた
生還した兵士から話を聞くと、どこからともなくアンデッドの大群が湧いて出てきたらしい。それによって軍は混乱、そのまま敵軍に押し潰されたとか。
ちょうど、昨日から送っている偵察が帰ってきているらしいので、話を聞きに行く。ジーフリトは、暗部のある城の地下へと降りて行った。
「やぁ。」
ジーフリトが、顔見知りの暗部の男に背後から声をかける。
「……はぁ、たとえあなたであったとしても暗部として背中を取られるのは恥です。やめてください。」
ジーフリトは、ははと笑って誤魔化す。君だって僕を信用していないくせにさ。
その言葉は声には出さず、心の中で毒づく。だが、この中途半端に鋭い暗部の男は気づいたのだろう、皮肉に笑って言った。
「あなたを信用するひとなんてだーれもいませんよ。それはあなたが一番分かっていることでしょう?」
ジーフリトの目がすっと冷たくなる。だからこの男は嫌いなのだ。
「…もういい。ヒュブリスの丘で見たものを教えろ。」
「わかりました。生存者は一名を除いて全滅、アンデッドが数体徘徊しているのを確認しました。」
「…その一名というのは?」
「おそらく
「聞いてない。」
男が、はっと笑って唾を吐いた。
「さぁ、もう話せることはありませんよ。さっさと倒してきてくださいよ。勇者様。」
ジーフリトは、精一杯の微笑を保ちつつ、男のもとを去る。
歩きながら考える。
しかし、こんな短期間でどうやってそこまで移動してきたのだろうか。まさか、自分と同じように魔王の魔法で飛ばされてきたのか。だとしたらヴェルグレドの背後には魔王がいると考えるべきか。
……考えてもきりがないな。とにかく、目の前の問題を片付けることだけを考えよう。
しかし、予言の内容も気になる。本当に、自分には魔王を倒すだけの力はあるのか? あの魔法に抵抗すらできなかった。ジーフリトは、彼我の圧倒的な実力差をひしひしと感じていた。
『祝福を持ちし勇者産まれ、やがて蔓延る悪を打ち滅ぼさん。』
国としての見解は、予言は徳義神によってもたらされたものらしいが、実際のところは不明だ。これが正しいとすると、魔王は烈悪神の使徒か何かなのか?
ジーフリトは、答えの出そうにない問いを頭を振って追い払い、走り出した。
城の城壁を飛び越し、そのまま屋根を駆ける。王都の外までほんの五分もかからなかった。
そして、ジーフリトは目的地へ向け再び走り出した。
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ヴェルグレドが戦場を歩き蘇生できそうな死体を探していたその時、周りにいた人たちが急に身構えだした。
「ヴェルグレド様! 下がっていてください!」
「ここは、我らがお守りします!」
「え? いったいな…」
轟音。アンデッドの一人がヴェルグレドを庇って伏せる。あたりに土煙が立ち込め、ヴェルグレドはゴホゴホと咳をした。
「っ! お逃げくださいヴェルグレドさ、まぁ…。」
前に立って剣を構えていた人の首がドサッと落ちる。
「…彼は部隊をまとめ上げる隊長だった。」
もう一人、首が落ちる。
「彼は優秀な兵士で、将来に見込みがあった。」
そしてもう一人。
「彼には家族がいた。よく、妻を自慢していた。」
土埃が晴れる。
そこに立っていたのはジーフリト。紛れもない勇者だった。
彼は、爽やかに笑う。
「やぁ、ヴェルグレド。」
一方ヴェルグレドは、ぎこちなく笑った。
「や、やぁジーフリト…。」
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