第四節 絆のノートに刻まれたもの

運動会が終わった翌週。

校庭ではまだ赤白の旗が風に揺れ、教室には勝利の余韻が静かに漂っていた。


「ねぇねぇ、チーム・トレノってさ、マジで強すぎたよね」

「体力もすごいけど……4人が完璧に動いてたのがすごかった」

「リンちゃん、ほんとに一度も落ちなかったし!」


クラスのあちこちで、4人の話題が絶えなかった。


そんな中、担任の先生がふと思い出したように声をかけてきた。


「そういえば……“トレノ”って、どういう意味なんだ?」


ハルが少し照れたように笑う。


「“キズナ・トレーニングノート”の略です」

「最初は3人で書き始めたノートで、今は4人の記録になってます。目標とか練習内容とか、ちょっとした日記も」


先生は興味深そうに目を丸くした。


「へぇ……ちょっと見せてもらってもいいかな?」


さちは一瞬だけ戸惑ったが、すぐにうなずいた。


「……はい。先生なら、いいですよ」


放課後。

教室に残った先生と、4人の机に広げられた一冊のノート。


表紙には、大きく書かれたタイトル――


《絆のトレーニングノート》


ページをめくると、びっしりと書き込まれた日付、メニュー、目標、感想の数々が並んでいた。


『初めての腹筋30回、意外とキツかったけど、3人でやると乗り越えられる』

『ハルのアドバイスでフォーム改善。やっぱり仲間ってすごい』

『さちが今日、自分から「もう1セットいこう」って言ってくれた。泣きそうだった』

『リン加入! 柔軟性バケモン。でもすぐ仲間になった。すごく自然だった』

『勝ち負けじゃない、自分たちのベストを出したい』

『体力テストはB。でも、胸を張ってB。Aより誇らしい』


ページのすみには、時折かわいいイラストや笑顔のスタンプ、

「今日の名言」なんて欄も添えられていた。


先生は、そっとノートを閉じた。


「……すごいな」


ぽつりと漏れたその声に、4人が顔を上げた。


「正直……体の鍛え方もすごいと思ってたけど、それ以上に驚いたのは――」

「“心のつながり”だよ」


先生の目は、まっすぐ4人を見つめていた。


「このノートには、どんなトレーニング本よりも大切なことが詰まってる。支え合って、認め合って、前に進む。それってもう、スポーツを超えてるよ。……これは、君たちの人生の宝だ」


リンが、そっと言った。


「Thanks, sensei. It means a lot.」


ユキが小さくうなずきながら続けた。


「でも、このノートはまだ途中なんです。これからも、書き続けたいから」


「うん。もっと強くなるから。4人で」


「ねっ、“チーム・トレノ”!」


先生は笑ってうなずいた。


「その名前、先生も誇りに思うよ。堂々と、これからも胸を張って進みなさい。君たちが見せてくれた“絆”は、きっとたくさんの人の励みになる」


窓の外、夕焼けがやさしく教室を染めていた。


4人の間に流れる、静かな達成感。

そして、ページの余白に残された未来――


“絆のノート”は、これからも続いていく。


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