第三節 誇りを背に、駆ける日

運動会の前日。

夕暮れのトレーニングルームには、四人の声と熱気が満ちていた。


「仕上げは体幹と脚力メインね!」


「リン、反射とバランスも重点的にやろう。明日は上だから、どんな動きにも耐えられるように」


「了解! 私はしなやかで速い動きを見せるよ!」


「じゃあ――“持ち上げテスト”いくよ!」


さちが足元からどっしりと踏ん張り、左右のハルとユキが腕でリンを支える。三人の連携で、リンの体が空に向かってまっすぐ持ち上がった。


「せーのっ!」


空中でバランスを取りながら、リンは両手を広げた。


「パーフェクト。これは勝てるね!」


練習を重ねるたびに、笑顔と自信が増していった。



そして、運動会当日。


初秋の澄んだ空。爽やかな風が吹き抜け、校庭には紅白の旗がはためく。

騎馬戦を前に、6年2組のメンバーが入場門で待機していると――


「よーし、6年2組! 気合入ってるかー!」


担任の先生がやってきた。


「おっ、あれがウワサの……チーム“マッスル女子”!」


「先生ーっ!!」


思わずハルが叫ぶと、周囲に笑いが起こる。


「ちがいます、“チーム・トレノ”ですから!」


「ハルちゃん、顔まっ赤〜!」


ユキが肩をすくめ、さちも笑いながら続けた。


「でも、あながち間違ってないかもね。筋肉、すごいし!」


その言葉に、クラス全体が和やかな雰囲気に包まれる。


「じゃあ、いくよ! 円陣だ!」


「せーのっ!」


「トレノも、2組も、全力で勝つぞーーっ!!」


「おおーーーっ!!」


拳が空に突き上がった。



騎馬戦、開始。


四隅から進む各クラスの騎馬の中で、ひときわ異彩を放つ一騎――

それが、チーム・トレノ。


上に乗るのはリン。

左右から体を支えるのはハルとユキ。

最下段で全体を安定させ、しっかりと地を踏みしめて支えるのがさち。


4人の姿は、まるで一体の“動く要塞”だった。


実況が響く。


「おっと、2組の騎馬が前進! トレノの持ち味は柔軟性と体幹。どう動くか!」


リンが身体を反らせ、攻撃を華麗に回避。

反らせた体勢のまま、下から相手の鉢巻きを奪う。


「一本取ったーっ!!」


会場が沸き上がる。


下で支える三人は、汗をにじませながらも完璧なバランスを崩さない。


「右から来るよ、ユキ!」


「OK! ハル、左斜め前、あたし支えるから踏ん張って!」


「さち、沈むよ、大丈夫?」


「もっといけるよ!」


4人の声が、まるで一つの生き物のように響き合う。


誰よりも低く、速く、安定した騎馬が、次々と敵の鉢巻きを奪っていく。


敵が突進する中――

リンが小さく体をひねり、反対の手で一閃。


「また取った! チーム・トレノ、これで3本目!!」


観客席がどよめく。


「残り30秒! もう一本いけるか!?」


「トレノ! トレノ! トレノー!!」


自然発生したコールがクラス中に広がった。


最後の一騎に向かって突進。

リンが跳ね上がるように腕を伸ばし、鉢巻きをつかむ。


「決まったーーーっ!!」


笛が鳴る。騎馬が止まり、リンが静かに降り立った。


さちの肩に手を置き、4人は呼吸を整えながら顔を見合わせる。


「やったね……!」


「完璧だった……!」


「ほんとに勝てた……!」


「トレノ、最強!」


勝利の喜びと同時に――

彼女たちの胸に広がったのは、「自分たちの力でやりきった」という確かな達成感だった。


4人は、力強く手を取り合った。


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