バカな私を許して

finalphase

バカな私を許して

同じクラスの如月初音から告白されたのは高校2年生の時。




彼女は、私にとってあこがれの存在だった。可愛くて、何でもできて、優しくて...太陽のような存在。




そんな彼女に告白されて断る理由なんてどこにもない。




私たちは、その日から付き合い出した。




一緒に海に行ったり、祭りに行ったり、ホテルに泊まったり、色んなことがあったっけ。




「あの頃は楽しかったなぁ。」、私は過去の思い出に浸りながら、初音と受験勉強をしていた。




勉強が苦手な私は、数学の問題と対面するだけでストレスだ。




きっと勉強ができない自分にイライラしていたんだと思う。




ふとこんな言葉が口から洩れた。




「私やっぱ勉強向いてないわ。良いよね、初音は。何の苦労もなく良い点数が取れて。」




無意識に悪気なく発した言葉に初音が反応する。




「は?何よその言い方?あたしが見えないところで日頃どんだけ努力してると思ってんの?あたしほど努力してないお気楽さんが、何の苦労もないなんて言わないで。」




私は彼女のその言葉に再びカチンときて言い返した。




「私だって...私だって、自分なりに一生懸命頑張ってんの。頑張っても勉強できない人の気持ちなんて、初音にはどうせ分からないくせに。勝手なこと言わないで!」




私は泣きながら教室を飛び出した。




翌日、私はあの時の行動を痛烈に後悔することになる。




初音が、私の彼女が...交通事故に遭って意識不明の重体になったのだ。




「何で私は昨日あんなこと言っちゃったんだろ。」




「あんなことさえ言わなければ初音がこんな目に遭うことはなかったのに...」




心の中から後悔の念が押し寄せる。




それから、私は毎日のように彼女のお見舞いに行った。




文字通り寝ているだけの彼女に声をかける。




「初音、ほんとにごめん。バカな私を許して」




毎日のように同じ言葉を繰り返す。




お見舞いに行き始めてから8日目。私がいつもの言葉をかけて病室を出ようとすると、初音に腕を掴まれた。




「日葵...あたしが、あんたを置いて、先に旅立つわけ、ないじゃない...」、彼女はとても小さな声で言った。




私が何かを言おうとした時には、彼女は再び意識を失っていた。




それから1週間、初音は徐々に意識を取り戻し奇跡的な回復を見せた。




けれど、事故の後遺症なのか、彼女の左手が再び元通りに動くことはなかった。




私はそれからというもの、毎日のように初音に謝っている。




謝って済むことじゃないかもしれないけれど、気持ちだけは伝えたい。




その度に、初音は言うのだった。




「事故に遭ったのは、日葵のせいじゃないよ。それに、あたしには、左手がなくたって、日葵がいるじゃない。」




私は彼女のこの言葉を聞く度に、胸が張り裂けそうなくらい苦しくなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バカな私を許して finalphase @finalphase2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ