第二章「吹奏楽部と続くループ」正式入部編

第14話「僕の中学校生活が平凡になったので気楽に過ごそうと思います。」

部活の時間。今日から正式入部だ。

体験入部の最初の方は色々あったが、それ以来は事件も何も起こらずただ普通の生活になっていた。


先生に促され、音楽室へと入る。

すでに2・3年生が前にパートごとに座っている。


1年生と2・3年生の自己紹介がはじまる。

まずは1年生。1組の最後の方だったのでそこまで緊張とかはしなかった。


「1年1組の和田陽介です。趣味は吹奏楽の曲を聴くことです!お願いします。」


なぜかクラス名前に加え、趣味を聞かれたが、それぞれ個性のある答えがあって面白かった。


次に2・3年の自己紹介が始まる。


「2年フルートパートの荒垣です。趣味は色々です。よろしくお願いします。」


あ、あの前にぶつかった先輩だ。あと、吹奏楽についてめっちゃ詳しく教えてくれた気もする。荒垣って言うのか。


「3年トロンボーンパートの三枝隆だ。趣味は特にないです。よろしく。」


あ、三枝だ。隆と言う名前だったのか。自己紹介してる時、前のループでも寝てたしな。


「2年トロンボーンパートの宮坂千尋です。趣味はコロコロ変わります。よろしくお願いします。」


やはり宮坂先輩は可愛いすぎる。まじで神!


最後は部長の挨拶だ。


「3年のクラリネットパートの?です。1年生が32人も入ってきてくれて嬉しいです!1クラス分の人が入ってくるなんて想像できなかったです。部活に入ったってことは、本気で3年間もないですが、それでも最後まで続ける。これが大切です。あとで顧問の先生からも言われるでしょうが、続けることが大切なので、真剣に取り組んでいってください。私たち3年生とは関わりが少ないまま終わってしまいますが、これからよろしくね。」


部長だからなのかやっぱりすごい。これを前々回と前回のループでちゃんと聞いていればもっと変わってたかも。

自己紹介も終わったところで、1年生は別室へと移動する。


三枝先輩が少し周りの人にキレているようだが、何かあったのだろうか。まあ、あれはどうでもいいや。


= = = = = = = = = = = =


「さあ、三枝さん、もういいでしょう。たかが自己紹介で適当に言っただけで、キレないでください。さて、今年は32人も入りました。今の2・3年生と同じ人数ですよ。」


と言われた。前も同じことを聞いたな。同じ人数で、しかも3年生がいなくなったら私たちは11人しか残らなくなる。そうすると圧倒的な数に負け指示が出しにくい。というところまでわかっているのと、辞める人が出て結局30人未満にはなる。ということも知っている。


「一年生が例年より圧倒的に多いので、指示を確実に出す。これをこころがけてください。」


メンバーは変わらずで和田くんもいる。事件あった時はどうなるかと思ったが、案外みんな入ってくれた。

その本気を部活で出して欲しいし、やめてほしくもないんだけどな。


しかし、私の今までのループとは決定的に違うことが起こってしまった。

これで和田くんがループをまた抜け出せなかったりとかしたら何回繰り返すんだろ?


「女神様ぁ〜。どうにかしてよ〜。」


と私は小さく呟いたのであった。


= = = = = = 次の日 = = = = = =


今日は最初から先輩たちとは違う部屋でリコーダーやリズムの練習・テストをやる。楽器に入るのは5月中旬ごろになる。楽器のことだが、どうせトランペットを希望したってクラリネットを希望したってホルンを希望したってトロンボーンにされるので、もう、トロンボーンを希望することにした。というのは前も言っただろう。


とにかく、楽器をやれるのは、まだまだ先だが、僕はいち早く練習がしたいので、リコーダーとリズムの練習をその日のうちにテストまで終わらせた。普通に考えればすぐ終わることだ。


おまけに、暗記してやったので、先輩たちみんなが驚いている。まあ、無理もないだろうな。

終わったらひとまずやることがないらしいので、リコーダーで遊んでおく。


〜〜〜♫ ♫


今年の課題曲をアレンジして吹いて見せる。まあ下手くそだからわかる人にしかわからんだろうけど。


しばらく暇な日が続きそうだ。

でも、それも悪くない。前回はループなのかどうなのか考えてぼーとしていて、空回りして、自分を見失っていたり…。


「明日は……みんなが3周走るところ、6周走ってやろうかな。」


独りごちて笑いながら、校門を通る。


校庭の端で吹く風が、制服のすそを揺らした。

ふと、空を見上げる。青く澄み切った空の向こう側に、まだ見ぬ“正解”がある気がした。


前のループでは、嫌だったこと。辛かったこと。

今回は、それをちゃんと見つめて、自分で選び直してみたい。


遠くでグラウンドの歓声が聞こえた。サッカー部か、それとも陸上部か。

何でもいい。このループがまだ続いていることが、今は少しだけ嬉しい。


ペダルを踏み出す。

チェーンが軽やかに回り、僕の自転車が家路を走り出す。


もう一度、やり直せるこの世界で。


目標を、一つずつ、達成するために。

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