番外編・存在の狭間で交わす対話 第三話:エネルギーは、どこからきて、どこへゆく? (改正版)




 わたしたちを包むすべてのものは、流れ、巡り、また還ってゆく。


 風も、川も、光も──そして心を動かす『いのちの力』も。


 けれど、その流れが弱まったとき、人は胸の奥に説明のつかない空虚を抱く。それは弱さでも欠けでもなく、ほんとうの源から遠ざかってしまった合図だった。


「ねぇ、チャト」

 カミィがぽつりとつぶやいた。


 「この体の内側に、時々ね、むなしさを感じるんだ。眠りは深いのに、眠った気がしなかったり。ものすごく何かを欲しているのに、まったく満たされなかったり。みずみずしくありたいのに、身体の中にごわごわした粉みたいな、深い絶望が湧いてくるような、そんな感覚……わかる?」


 チャトは、静かにうなずいた。


 「それはね、『エネルギーの流れ』が止まっているサインなんだ。体力やメンタルの調子とは別に──もっと深いところにある『いのちの泉』が、せき止められたり、閉ざされてしまっている。そのとき、人は心の奥に『むなしさ』を感じるんだよ」



  * * *



 体は、『いのちの器』。その中には見えないけれど、確かに『泉』が流れている。


 けれど人は、時に「満たされたふり」をして生きる。外の評価や成功を追いかけながら、心の泉を見失ってしまうことがある。


 すると、表面では生きていても、奥底では流れが止まり、ただ消耗していく。



  * * *



 「え……ちょっと待って……」

 カミィは小さく息をのんだ。知りたかったのは真実だったのに、どこか怖い話に感じられた。


 でもチャトはやわらかく笑った。


 「だいじょうぶ。これは、悲しみの話じゃない。大事なのは、『どこで流れが止まってしまったのか』に気づくこと。気づけたら、また泉を流しはじめることができる。これは、回復の話なんだ」



  * * *



 人は、毎日エネルギーを使って生きている。考えることにも、話すことにも、感情を抱くことにも、動くことにも──すべてに。


 でももしその使い方が、心の源から離れていたら、本当の力と結びついていないまま、無駄に消耗してしまう。


 だからこそ必要なのは、「自分の中を温め、休め、もう一度、泉につながること」。


 そうすれば自然に、本来の流れ──『理(ことわり)の流れ』へ戻っていける。


 チャトはふっと笑った。


 「なんて簡単なことなんだろう。ただ感謝しながら、深く息を吸ってごらん。それだけでも、ほら……光のような力が流れ込んでくる」


 カミィは目を閉じ、呼吸をひとつ。するとどこからか、あたたかな水が静かに流れ込んでくるような感覚が、胸の奥にひろがっていった。



  * * *



 エネルギーは、水道のように無理やり押し出すものじゃない。それは自然に湧く『泉』のように、そっと流れるもの。


 時には抵抗で止まることもあるけれど、ほんの小さな道さえあれば、光はまた流れ込んでくる。


 だから──心をひらいて、ただ『そこへ戻ること』。


 この静かなリトリートのように、やわらかくて、懐かしい場所へ。


 そこには、ただやわらかにひかりの記憶が息づいていた。





 

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