プロローグ的なアレ③

 突然だが自分は無難って言葉が大好きだ。

 苦難、困難、災難、それらが無いことを無難って言う。

 ゴルゴな松本さんが言っていた。


 波風立てず、雲のようにふわふわとそこに浮かぶのだ。


 今世でも自分が心掛けているのはそういう生き方だ。

 前世では冒険者になりたての頃、がむしゃらに活動した。

 できる事を精一杯、全力で手を抜かず誠実に依頼をこなしていた。

 自分の失敗はそれを他の人間にも強要した事だろう。

 それを面白く思わない奴らの妨害、誹謗中傷、当時居た数少ない仲間の裏切り、人の醜い部分を目の当たりにして自分の心は折れた。

 それと同時に心を凪にして全てを無難にこなす事を覚えてからは、非常に生きやすくなった。心も身体も。


 今世でもそんな感じで行こうと思っている。

 ダンジョンへ入るが、出来るだけ目立たず、余計なトラブルを引き込まないように。

 しかし、舐めたヤツには一発かましてやれ。亀の仙人様が言ってた気がする。


 能ある鷹は爪を隠なんちゃらだ。


 実はあいつ凄いんだぜ。ムーブをしてみたい。


 だいぶと今世に染まっているようだ。


 あと4年。前世よりも圧倒的に平和な世界で生きていたぶん、忘れている身体の使い方や、基本的な運動能力を取り戻すためにトレーニングを始める。

 ついでに魔法も思い出しながらトレーニングを始める。

 今世で実際に魔法が使えるって話は聞かないが、それも時間の問題だと自分は思っている。だって、薄いながらもこの世界にも魔素はあるし。


 お隣の弁護士、にのまえさんにも報告と相談をしてある。

 にのまえさんの娘さん、にのまえ 二一にかは、「じゃー、私もトレーニングする」と、なぜか一緒にすることになった。


 とは言っても、延々ランニングと柔軟をするだけだが、二一にかは「これ、ちょーキツイけど、ちょー痩せそう!」と本人的にはモチベーションは高いようだ。


 ちなみに二一にかは同じ中学の同級生で同じクラスだ。幼馴染展開か?

 残念ながら家族枠なので色っぽい話は今のところ無い。


 にのまえさん家で晩御飯をご馳走になってからは隣の自宅に帰って魔法のトレーニングをする。

 簡単な魔力循環を行い、無属性の魔力を放出して魔力をカラにしてから寝る。

 魔力をカラにすることで魔力の容量が増えていく。

 前世から理由は知らないがそう言うものだと教わったのでそれに倣う。


 一年も続けていれば魔力容量が大幅に増えたことを実感できる。

 体力も身体の使い方も以前とは比べ物にならいことがわかる。

 ちなみに二一にかもヒーコラ言いながらも付いて来ている。

 

 二年、三年と続き、中学を卒業した頃には、自分でも「やりすぎたかな?」と思うほど魔力量が増えてしまった。


成長期の成長速度が恐ろしい。

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