プロローグ的なアレ④

 駆け足すぎる気もするが、今日は16歳の誕生日。これでやっと探索者資格の講習を受けて、試験に合格すれば正式に探索者へとなれる。

 結局、高校には進学していない。ちなみに隣の二一にかは近所の高校へ進学してた。


 40時間の講習と実技は前世での経験からすればモノ足らないというか、抜けているところが少々気にはなったが、なんとか波風立てずに無難にこなし、実技も必要以上に本気を出さず、かつ手を抜いているように見せないように気を遣った。


 試験も無事にクリアー。晴れて探索者へとなれた。


 その日の晩はにのまえさん家で祝福をされ、誕生日が2ヶ月先の二一にかには「待ってなさいよ!」と謎のお叱りを受けた。


「探索者の事故率はかなり高いと聞くから、気をつけて探索するんだよ」


 と、自分の未成年後見人である、にのまえ 二三ふみさんには心配されたが、どうやら自分の父親も一度決めたら何があっても意見を曲げない頑固な人だったらしい。

 自分の中での父親の印象では全然頑固な印象はなかったのが少しおかしく思う。

 その父親なもんで、自分も頑固だと思っていたそうで、外野が言うよりも、見守ってバックアップしようとしてくれるそうだ。ありがたい。


「あー学校面倒い……私も一二三ひふみみたいに探索者一本で行けばよかった」


 二一にかが自分の顔を見ながらそんな事を愚痴る。知らんがな。

 にのまえさんは目が笑っていない笑顔で二一にかを嗜める。


「せっかく入った高校だ。途中で辞めずに卒業だけはしておきなさい」

「でも、一二三ひふみは高校にも行かずに探索者になったよ?」

「彼はぶっちゃけるとFIREしているからね。ボクと違って正直働かなくても安泰だから」

「じゃー、やっぱりあたし、一二三ひふみのお嫁さんになろっかなー?そしたら、あたしも働かなくても良くなるんじゃない?」

「謹んでお断りいたします」

「なんで!?」



 このやりとりは昔からある定番のやり取りだ。本気か冗談か、二一にかはこうやって寄生宣言をしてくる。だが、あいにく二一にかの家事スキルは壊滅的で、掃除、洗濯、料理と全てがダメな残念な女だ。

 自分がこなせるので、自分がやればいいのだが、寄生宣言している奴を嫁にするつもりはない。というか、もう二一にかは家族のようなものだ。

 身体つきはエロいけど、それだけだ。情欲なんて湧いてこない。


「まぁ、二一にかが探索者資格を取ってからになるけど、時間を合わせて一緒に探索すればいいじゃん。別に急いで自分の将来を狭める必要なんてないだろ?」

「くぅー!なんか、一二三ひふみの癖に余裕の発言ムカつくー!」

「知らんがな」


 ほどほどの時間でお開きとなり、自宅へと帰ろうとしたら二一にかがこちらに近づき、ボソリと呟いた。


「本当に、気をつけてね」

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