第1話 出会いと入団

ここはテイストニア大陸。剣と魔法が主流で剣は大抵の者が扱え、魔法は魔力を宿す者のみが扱え人口の約2割程度でそれもほぼ男。魔力を宿す者は「魔法使い」と呼ばれさらにそれらの魔法を組み合わせて高度な魔法ー魔術を駆使する者を「魔術師」と呼ぶ。テイストニア大陸の西側は魔力が濃く魔力を宿す者や魔物が生まれやすく、それが理由で大陸1の魔術団ー王立魔術団が設立された。




 あれから約13年後

テイストニア大陸の大陸·シーゼルフォルト王国の首都·デュオの門前

「ふ~う、長かった~」 

1人の女が約10間乗っていた馬車を降りて伸びをする。彼女の名はシルファリア。薄ピンクの髪のロングヘアでくりくりしたエメラルドのような瞳。年齢は16歳くらい。肩からショルダー型の鞄をかけている。

「まったくも∼、リースから遠すぎるよ~」

約15日間座りほとんどの時間座りぱなっしのため座り疲れてしまった。シルファリアは、ここから遠く離れた東側の小国·リースからこの国の王立魔法団に入団するためにやって来た。今日の午後から入団式である。

「え~っと、ここからは地図を見ながら行こう」

これから先は馬車は走れないため歩いて向かう必要がある。始めて訪れる場所なので持参した王立魔術団までの道のりが描かれてある地図を見ながら、道を間違えないようしなければならない。その上、入団式や王立魔術団の敷地内の近くで手続きをしてくれた知人と待ち合わせもしているため遅れるわけにもいかない。

(もう王女じゃない。これからは魔術団で魔術師として生きていくんだから)

シルファリアはリース国の元王女であり、王立魔術団に入団する。今日はその第一歩だ。決意を胸に門をくぐった。


  

シルファリアは女でしかも東側の生まれにしてはかなり珍しく、生まれた時から多くの魔力を宿していた。そのせいで3歳の時の誕生日会で2人いる兄王子の2番目に重症を負わせてしまい、それが原因で別棟に隔離されて育ち、使用人どころかか兄や両親にも距離を置かれていた。そのことから女でありながら大量の魔力を宿していることがコンプレックスになっている。事件の時に表向きは死んだことになっていたため存在を隠されて生きていた。なので王女としても役割もほとんどやってこず、国から出たことが一度もない。それに国に帰ってもほぼやることがなく、両親は入団手配はしてくれたが「帰ってこなくてもいい」と言われ、万が一の時のためのための紹介状と一緒に国から追放され、生まれて始めて国を出た。



「わ∼すごい~。こんなにたくさんの人が歩いてる…」

何分か歩いてディオの大通りに着いた。すると多くの人がいて賑わっている。歩いている人や出店で買い物する人、中央に噴水があるのでそれを眺める入や近くで休憩する人などいろんな人がいる。

「うちの店見ていって~、今なら大サービスだよ~」 

 「ねぇねぇ、それでそれで」

 「へえ~、そんなことがあったんだ~」

 「見て見て、お母さん。こっちこっち」

 「こら~、走ったら危ないわよ~」

 (みんな楽しそう。ここは一方通行だからそのまま歩いていこう)

大通りを歩き始めたシルファリア。

そうして歩き始めて5分くらい経つと、ぶわっと何が肩までの上半身に触れる。風だ。すると

 「あっ!地図が…」

一瞬だけ風が強まって手に持っていた地図が飛ばされてしまった。ちなみに紹介状は鞄の中だ。これまでなくしたらどうしようもない。

「待って∼」

地図を追いかけるシルファリア

(待ち合わせしてるから早めに着きたいのに)

シルファリアも顔見知りで優しく人物だかあまり長い時間は待たせるのは申し訳ない。

やがて地図は一本道を外れた大木に引っかかった。高い位置に引っかかったためつま先立ちでもジャンプしてもとどかない。その上ここはあまり人がいなく梯子などもない。

(どうしよう。取れない。だれか一本道に戻って取れそうな人を連れてこようかな)

少しの間そんなかんじでどうしようか考えていると

「はいどうぞ」

男が話しかけてきた。

地図を受け取るために男の方を見る。すると男はとても華やかな容姿をしていた。鼻筋がよく整った外見。首筋までとどく黒髪にサファイアのような青い瞳。年齢は20代前半くらい。180センチはあるだろと思われる高身長だが優男と風な顔立ちで威圧感は感じない。

 「ありがとうございます。」

地図を受け取ろうとする。すると男は地図をシルファリアが取れない高い位置に持っていく。

 「ちょっとなにするんですか!早く返してください!」

シルファリアが声を荒げて怒て地図を取ろうと再びジャンプする。

すると男は少し上の方を向いて両手で地図を持ちのぞき込みながら

 「へえ~君は王立魔術団に行くんだね」

 「そうですよ!」

早く返してくださいと付け加える

 「へえ~女の子が珍しいな」       

男が手を下げてシルファリアに地図を渡す。

 「知人と近くで待ち合わせをしているんです」

(入団するためとは言わないでおこう。どんな反応されるかわからないし)

今しがたのことを思うと余計に口にしずらい。

 「それは男かい?」

 「男女1人ずつで夫婦です」

 「へぇ~、だったらいいかな。男だけだったら気をつけないと。君かわいいから狙われるかもしれないよ」

気をつけてねとウインクをする男。

 「そんなことありません」

きっぱりと否定するシルファリア。すると

男が探るような視線でシルファリアを見て

 「地図を持っているということは君、もしかしてこの辺りに来るのは始めてなのかな?」

ふと話題を変える。

 「はい、そうです」

そうしたら男はシルファリアに気づかれないように目にいたずらな光を宿し

「だったら私と近くまで一緒に行かないかい。私も近くに用事があるから案内するよ」

そう言って、男はシルファリアの手をとり握りしめ見つめてくる。男と目が合う。シルファリアは恥ずかしくなり頬を赤色に染め、男から視線をそらす。

「あの…」

あまり見つめないでくださいと言おうとしたが恥ずかしさで上手く口にでなかった。その上声が小さくなり

 「ん?」

男は聞きづらかったのかなんなのかさらに男は顔を近づけてくる。

(近い。近い)

あまりの顔の近さに顔が赤くなり思考が鈍りそうなり、それに

 (なんか心臓の音みたいなのが聞こえる)

シルファリアの心臓はドキドキと脈を打っているようにも聞こえた。

しか

「あのっ、私急いでいるので顔と手を離してください!」

何とか大きめな声をだして男に頼む。

 「それは残念だ。もっと君と話したかったよ」

男は手と顔をシルファリアから離した。これ以上妙なことはしないようだ。

「ではこれで」

シルファリアが背を向けようとすると

「あっ、ちょっと待ってくれないかい」

男は引き留めた

「せめて名前を教えてくれないかな。それくらいはいいよね」

男から名乗らないとねウインクをして言い

「私のユーザンだよ」

「シルファリアです」

「シルファリアか。またね」

ユーザンがシルファリアに向かって手を振る。シルファリアはユーザンに今度こそ背を向けて歩き始める。 

(なんだったんだろう。なんかびっくりしたしドキドキしたような気もする)

さっきあったかことを忘れるよう、地図を食い入るように見ながら歩くシルファリア。



シルファリアが王立魔術団に向かって再び歩き始めて姿が見えなくなった頃、ユーザンはその場で考えことをしていた。

(面白い子だったな。そうか彼女が。おっと、私も早くあそこに向かわねば) 

そうして目的地に向かって歩き始めたユーザン。




それから何分か歩いて王立魔術団の高い白の塀の前に男女2人組の姿が見えた

 「フリード!ジル!」

シルファリアは2人の姿が目に入った瞬間、2人のところに駆け寄り名前を呼んだ。 

 「姫様っ!?姫様ですかっ!?」

女の方が驚きつつ嬉しそう声をかける

 「久しぶり∼、会いたかった」

 「それはこちらも同じですよ∼。それにこんな立派なレディになられて」

シルファリアと女が抱き合った。2人が感動の再会をしていると 

 「いや∼、姫様お久しぶりですね。」

男の方も話しだし、2人が抱き合うのをやめる。

男の方はフリード。少し焼けた肌色に刈り上げた短めの茶髪の同じ色の瞳。180センチを超えると思われる高身長で面倒見が良い顔をしている。年齢は20代後半くらい。

女の方はジル。クリーム色のショートヘアにハチミツ色の瞳。170センチくらいの身長で年齢は20代後半くらい。

 「にしても姫様よく分かりましたね」

 「2人のことはよく覚えるし、あまり雰囲気変わってなかったから」 

あの事件の後、シルファリアはすぐに別棟に隔離された。あの時はなにがあったかよく理解できずに怖がられとても悲しかったが、2人はそんなシルファリアに対しても怖がらず優しく接してくれた。それは幼い頃のたったの数年だかシルファリアにとっては大事な思い出だ。それに定期的に手紙のやり取りもしていて。だから2人がリースを出てからもなんとかやってこれた。2人が入団手続きなどもしてくれて、本来なら一定の魔力を宿す者しか入団できない王立魔術団は入団前に魔力量検査が必要だが、シルファリアは幼い頃から大量の魔力を宿していたためフリードが話をつけてくれた。名前も、本来なら「シルファリア·エセル·リース」だか2人と同じ姓を名乗って「シルファリア·バロス」という風に名前を登録してもらった。

 「2人はよく分かったね」

分からないかもしれない少し不安だったが。

 「そりゃ分かりますよ」

 「幼い頃の面影もありますし、姫様のは髪と瞳特徴的ですからね」

2人がねっと顔を合わせる 

 「そういえば2人は王立魔術団ではどうしてるの?」

知っているがに書かれていたが、一応聞いてみる

 「俺はここの団長です」

 「私は食堂でご飯づくりとして働いていますわ」

フリードとジルがそれぞれそう言って

 「本当にすごいよ∼。特にフリード。団長って王立魔術団で1番の実力者ってことでしょう」

 「ねえ、ホント」

 「いえいえそんな。そんなことはないですよ」

シルファリアとジルの言葉に謙遜するフリード。

 「えっと、じゃあ、団長、ジルさんって呼んだ方がいいかな」

シルファリアが呼び方を変更を提案する。

「他のやついる場ではそうですね、あと敬語もですよ」

フリードがアドバイスする。たしかに2人はシルファリアの上司になるので人前ではその方がよいだろう。

 「…はい、団長、ジルさん」

団員モードで返事するシルファリア

 「だったら私にも敬語はやめてシルファリアって呼んで」

シルファリアが敬語をやめるように言って名前呼びを提案する。

 「わかったわ。シルファリア」

 「これからよろしくな、シルファリア」

2人がシルファリアの名前で呼び捨てにしてため口で話す。

 「あと結婚もした」

フリードがそう言って

 「だいぶ遅れちゃったけどおめでとう」

シルファリアは若干間をあけて

 「「ありがとう」」

お祝いの言葉を送るシルファリア。それに感謝するジルとフリード。

 「というか、そろそろ部屋に案内しないと式に間に合わないぞ」

フリードが思いだしたかのように言う

 「たしかにそうね。間に合わなくなっちゃうもの。隊服も置いてあるものね」

同意するジル

 「ほら、こっだ」

そう言って歩き始めたフリードにシルファリアとジルが着いていく




 「ほら、ここがあなたの部屋よ」

ジルに案内され今日から暮らす部屋の前までやって来たシルファリア。フリードは「取ってくるものがある」と言って途中別れた。

 「机の上に隊服とかが置いてあるから着替えてきてね」

 「わかったよ」

ジルに言われて部屋に入るシルファリア。


 「ここが私の部屋…!」

始めての一人部屋に嬉しさのあまり声をだす。

 (机の上に服がある。横には靴も)

これが隊服なのであろう。シルファリアは着替え始めた。


 「どうかな…?」

着替え終わり部屋から出てきたシルファリアは、隊服姿で途中別れて手に紫色の薄い布の上に水晶のようなものをもったフリードと先ほど案内してくれたジルの前に立つ。

 「似合ってるぞ」

 「かわいいわ」

2人が褒める。シルファリアが着ている王立魔術団の隊服は、王立魔術団の紋様入りの紺色が主な色で黄色の2つボタンが前と袖のところに付いてあり、黒のスカートとブーツだ。ちなみに男性は黒のズボンである“魔術師”なだけ全体的に落ち着いた雰囲気だ。

 「ありがとう…」

少しはにかみながらお礼をいうシルファリア。

 「あっ、そういえば」

フリードが思い出したように呟いた。

 「一応シルファリアの魔力検査しておかないといけないな」

 「たしかにそうね」

ジルが同意する。話はつけてあるとはいえ念の為魔力検査はしておいた方がいい。

 「シルファリア。ここに手を置いて魔力を流してくれないか」

そう言ってシルファリアの前に手のりサイズの水晶を出すフリード。

 「うん…、分かりました」

団員モードで返事をし直し水晶に触れて魔力を流すシルファリア。

 (ゆっくり流し込むようにイメージして)

しばらくすると水晶は淡い青色に光った。

 「これは魔力の基準値が上間っていると光る仕組みなんだ。心配いらなかったな」

フリードが水晶をジルに渡して

 「ほら、式に行くぞ」

シルファリアを手招きしてフリードについて行くため体の向きを変えるシルファリア

 「私はそろそろ戻らないといけないわ」

夕食の準備もあるしねと言い、2人とは別方向に体を向けるジル

 「またね、ジル」

 「またな」

そうして3人はそれぞれの目的地に向かった。



フリードに連れなれ入団式が行われる訓練場にやってきたシルファリア。入団式といっても小規模なもので団長の挨拶と新入団員のグループわけテストだけだ。かしこまった場所でなくても問題ない。訓練場は広い。奥に多くの的が立ててあり、下は一面土である。挨拶ため着いた途端にフリードと別れた。他の新入団員はすでに全員集まっているらしく訓練場の真ん中に9人が横一列に並んでいた。来たばかりのシルファリアは一番左に並ぶ。すると周囲がざわめき始める。

 「えっ、女!?」

 「間違えて来たのか?」

 「始めて見たぞ」

 (まあ、そうだよね)

このような反応されるのは大体想像はついていた。

 (早く始まってほしいよ)

シルファリアがそう思ってそんなに経たないうちに、隊服を着たフリードがやって来て前に置いてあるマイクの前に立つ。

 「みんな、集まったか。だったら始めるぞ」

そうしてフリードの挨拶が始まる。フリードが、団員の心構えや激励の言葉などを述べた後

 「これで俺の話は終わりだ。次は班分けテストだ。結果に応じてどこの班に所属してもらうかを決める。一人ずつあそこの的に全力で火魔法を撃ってくれ」

フリードが横にずれて的を指す。

 「あの的は特殊な素材で作られていているから気にせず全力をぶつけて大丈夫だ。じゃあ俺から見て左のやつから頼む。俺は後ろで見とくから。」

そう言ってフリードは後方に向かって歩き始める、新入団員達は縦に並び一人目の者から全力で魔法を撃っていく。

 「次!」

1人が撃ち終わったらフリードが大きな声で次を促す。




 (まぁ、こいつはあいつの担当がよさそうだな)

新人たちが打っていく最大威力の魔法を見ながらそんなことを考えて、5人程撃ち終わってところにフリードの横に1人の男がやって来た。

 「ごめん、ごめ~ん」

 「なにやってたんだ。もう新入団員の半分が撃ち終わってるのにお前は」

フリードが注意する

 「ちょっと用事が長引いたのと面白い子に出会ってね」 

 「なんだそれは。とにかく副団長としての自覚をもっともて」

「は~い」

男ーユーザンは返事をした。



 「わ~、すげ~」

 「このなかで一番威力が高い魔法を打ったぞ」

9人目が魔法撃ち終わり歓声が響く

 「次!」

フリードが次を促しシルファリアの番がやってくる。

 「さっきの女だ」

 「どれくらいなんだろう」

再び周囲がざわめき始める。

 (集中。集中)

多少周囲は気になるが強力な魔法を撃つため集中する。

 (体中の魔力を手にもってきて)

そうしていると魔法陣が手の前に出て来て、体中の魔力のほとんどが手に集まる。

 (今だ!)

シルファリアが的に向かって火を放つ。それはすごく大きく燃え上がった。周囲の反応は、

 「始めて見た…」 

 「あの女ヤベェ…」

 「嘘だろ。信じられない」

驚く者、怯える者、が多い。 

 「は~い、全員撃ち終わったので結果に基づいてそれぞれどこの班に所属してもらうか俺から発表させてもらう」

フリードが周囲を静かにさせる。フリードがそれぞれに所属班を伝えていく。そしてシルファリアの番がくる。

 「え~とっ、9番目のヨルと10番目のシルファリアはこの中で魔力が多く出せる魔法の威力も強いから、それぞれ俺か副団長の班に所属してもらう」

そう言ってフリードがそれぞれどちらを団長班、副団長班に入れるか迷っていると 

 「あの~、副団長は一体どんな人なんですか」

シルファリアが質問する。すると

 「呼んだかな~」

と声がした。シルファリアは声の主の方を見ると思わず言葉を失った。

 「王立魔術団の近くで待ち合わせしてる言ってたからもしやとは思ったけど、本当にそのもしやだったとは」

声の主は先ほど会った男ーユーザンで隊服を着ている。 

 「いや~、こんなに早く君と再開出来て嬉しいよ」

ユーザンが嬉しそうに言う。それを見たフリードが質問する。

 「なんだお前ら、知り合いか?」 

 「さっき大通りで彼女の地図が木に引っかかったから取ってあげんだ」

 「違います!いや、違わないけど…」

ユーザンの返答につけたそうとするがうまくその後の出来事を口にできずあたふたする。 

 「ふ~ん、なるほどな」

それを聞いたフリードがニヤニヤしてシルファリアはあることを思い出し嫌な予感がした。フリードは面倒見が良いが、たまにニヤニヤする時がありそれはだいたいロクでもない。嫌な予感が当たらないように思うが 

 「よしっ!シルファリアは副団長の班所属で直属部下な!」

フリードがそう言った。 

 「ありがとうねフリード」

さらに嬉しそうになるユーザンとは反対に 

 「え~~!?ちょ…ふ、団長~」

シルファリアはさらにあたふたする。

 「これからよろしくねシルファリア」

ユーザーンがシルファリアに向かって手を振る。

 「そんな…」

シルファリアはその場で固まってしまった。



 






 

 

 


 






















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