第009話 ポケモン情報収集開始

 1997年1月15日 新年の始まり


「聡!大ニュースだ!」


 翔が朝から興奮して僕の家にやってきた。


「どうしたの?」


「ポケモンのアニメ、4月から始まるって正式発表があった!」


 僕は内心で『ついに来た』と思った。これで仁天堂株の上昇はさらに加速するはずだ。


「すごいね。どこで聞いたの?」


「朝のニュースでやってた。それと、俺の従兄弟からも詳しい話を聞いた」


 翔の従兄弟はゲーム業界で働いていて、いつも貴重な情報をくれる。


「どんな内容のアニメなの?」


「主人公の男の子がポケモンマスターを目指して旅をする話らしい。ゲームのストーリーをベースにしてるけど、アニメオリジナルの要素もあるって」


 僕は前世の記憶を思い出していた。ポケモンアニメは子供たちに爆発的な人気を得て、ゲーム以上のブームを巻き起こすはずだ。


「面白そうだね」


「それだけじゃない」


 翔がさらに興奮して続けた。


「グッズ展開もすごいことになるらしい。ぬいぐるみ、文房具、お菓子、なんでもポケモンになるって」


『メディアミックス戦略の本格化』


 僕は心の中で確信した。これで仁天堂は単なるゲーム会社から、総合エンターテイメント企業に変わる。


 学校では、ポケモンアニメの話題で持ちきりだった。


「聡たち、アニメ始まったら絶対見るよね?」


 佐野君が聞いてきた。


「もちろん」


「投資の勉強にもなるしね」


 山口さんが付け加えた。


 投資研究会のメンバーは、ポケモンアニメを「市場調査」として位置づけていた。


「みんなでアニメの感想を共有して、人気度を分析しよう」


 僕が提案すると、みんなが賛成した。


「いいね!視聴率とかグッズの売上とかも調べてみよう」


 放課後、僕と翔はゲームプラザ田中を訪れた。


「株少年たち!新年おめでとう」


 おじさんが笑顔で迎えてくれた。


「おめでとうございます。ポケモンアニメのこと、聞きました?」


「ああ、すごいことになりそうだよ。うちの店でもポケモングッズの注文が殺到してる」


 おじさんが興奮して話した。


「特にぬいぐるみ。ピカチュウのぬいぐるみなんて、発売前から予約でいっぱいだ」


「ピカチュウ?」


「アニメの主人公のポケモンらしい。黄色くて可愛いんだ」


 僕は前世の記憶で知っていた。ピカチュウはポケモンの顔として、世界中で愛されるキャラクターになる。


「他にはどんなグッズが?」


「文房具、お弁当箱、洋服、なんでもある。4月の放送開始に合わせて、一斉に発売されるんだ」


 翔が驚いた。


「すげー。ポケモンってそんなに大きなビジネスになるんだ」


「これは始まりに過ぎないよ」


 おじさんが予言するように言った。


「きっと社会現象になる」


 家に帰ると、僕は特別な投資ノートを作った。


『ポケモンアニメ分析ノート』


『基本情報』

『放送開始:1997年4月』

『内容:少年とポケモンの冒険』

『期待効果:ゲーム売上増、グッズ展開』


『市場予測』

『子供層への浸透率:90%以上』

『グッズ市場:年間100億円規模』

『海外展開:2-3年後に本格化』


『仁天堂株への影響』

『短期:アニメ開始で注目度上昇』

『中期:グッズ売上で収益拡大』

『長期:IPブランドとしての価値確立』


 夕食時、父さんに相談した。


「お父さん、仁天堂の株、もう少し買い増ししたいんだ」


「買い増し?今でも十分持ってるじゃないか」


「でも、これからポケモンアニメが始まるから、もっと上がると思う」


 父さんが真剣に聞いた。


「根拠は?」


 僕は準備していた資料を見せた。アニメ化の発表、グッズ展開の計画、市場予測。


「確かによく調べてるな」


「でも、リスクもあるぞ。アニメが失敗したら株価は下がる」


「分かってる。でも、僕はポケモンが成功すると確信してる」


 母さんが心配そうに言った。


「聡、投資額が大きくなりすぎない?」


「大丈夫。お年玉とお小遣いの範囲内だから」


 結局、両親は僕の買い増しを認めてくれた。ただし、投資額は総額20万円以内という条件付きで。


 1月30日、僕は追加で仁天堂株を購入した。


 現在の株価は2,800円。3株を購入し、手数料込みで8,500円の投資だった。


 これで僕の保有株は合計14株になった。


 翔も同時に追加購入した。彼は2株を追加し、合計22株の保有となった。


「これで準備完了だな」


 翔が満足そうに言った。


「アニメが始まるのが楽しみだ」


 2月に入ると、ポケモンアニメの宣伝が本格化した。


 テレビCM、雑誌広告、ゲーム店のポスター。至る所でポケモンの宣伝を見るようになった。


「すごい宣伝量だね」


 山口さんが感心した。


「これだけ宣伝すれば、絶対にヒットするよ」


 佐野君が確信を持って言った。


「でも、宣伝だけじゃダメでしょ?内容が面白くないと」


 田村君が現実的な意見を述べた。


 僕は前世の記憶から答えた。


「きっと面白いよ。ゲームが面白いんだから、アニメも面白いはず」


 3月に入ると、仁天堂の株価は3,000円を突破した。


 僕の14株の価値は42,000円。投資額約22,000円に対して、含み益は約20,000円になった。


 翔の22株の価値は66,000円。彼の含み益も15,000円を超えた。


「すげー!もう投資額の倍近くになってる!」


 翔が興奮していた。


「でも、まだ売らないよ」


「分かってる。アニメが始まってからが本番だもんな」


 投資研究会でも、ポケモン関連の調査が日課になっていた。


「今日、おもちゃ屋でポケモングッズの予約状況を聞いてきた」


 山口さんが報告した。


「すごい人気らしい。特にピカチュウのぬいぐるみは予約だけで完売だって」


「俺は本屋で調べてきた」


 佐野君が続けた。


「ポケモン関連の攻略本とか漫画とか、すごい数の出版予定があるらしい」


 僕たちは、まるで市場調査会社のような活動をしていた。


 でも、それが楽しかった。投資を通じて経済の仕組みを学び、社会の動きを観察する。


「僕たち、本当に小学生?」


 田村君が笑いながら言った。


「でも、こういう勉強って学校では教えてくれないよね」


 山口さんが真面目に答えた。


「聡のおかげで、すごくいい勉強ができてる」


 3月31日、小学校最後の日。


 僕たちは新しい投資ノートを作った。


『中学生投資家への準備』


『目標』

『アニメ放送開始による株価上昇を的確に捉える』

『グッズ市場の動向を継続調査』

『新しい投資機会の発見』


『現在の成績』

『聡:投資額22,000円→評価額42,000円(+90%)』

『翔:投資額53,600円→評価額66,000円(+23%)』


『4月からの新体制』

『中学校でも投資研究を継続』

『ポケモンアニメの視聴・分析』

『月1回の成果報告会』


 その夜、僕は1年間を振り返った。


 小学5年生から始まった本格的な投資活動。テレビ出演、翔とのパートナーシップ、投資研究会の拡大。


 すべてが順調すぎるほど順調だった。


 でも、本当の挑戦はこれからだ。中学生になり、ポケモンアニメが始まり、投資環境も変わっていく。


『中学生投資家として、さらにレベルアップしよう』


 そう決意して、僕は眠りについた。


 明日から中学生。新しいステージの始まりだ。

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