この回転性の世界で君と出会い、ぼくはクロノスタシスを知った。

丸山弌

プロローグ

――この物語は、突発的な回転性のめまいに悩む高校三年のぼくが、保健室のベッドに横たわったまま地球の自転をジャックしようとするところから始まる。


 この日も、世界は間違っていた。

 この地球という星は、いつも狂っている。


 というのも、本当は目まぐるしく回転しているぼくの視る景色というのは、ぼくの眼球ではなくて世界が回転しているからに他ならない。


 ベッドに横たわったまま、目を閉じてみる。暗闇の中でも、世界が回転していることがわかる。


 ぼくだけが知っている、この惑星の本当の自転の姿。真実を知るぼくに、安寧なんてものは訪れない。


 だれか、この地球の自転を止めてくれないだろうか。きっとそれが、ぼくがこの世界で正気を保つための、唯一の手段。そう思っていた。


 彼女、月島つきしまなぎと出会うまでは。

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