第22話 大人の遠足と「魅せる」勇気

私は田中里香。45歳。主婦。

今日、私は「もう一度輝く私」を見つける。

別に、昔に戻りたいわけちゃうけどな!


私の定位置は、静まり返ったリビング。

子供たちも大きくなり、手がかからなくなった。

夫との関係も、最近はどこか冷え込んでいる。

私自身も、女性としての魅力を失ってしまった。

そう、感じることが多くなった。

鏡を見るたびに、ため息が出る。

昔は、もっと輝いていたはずなのに。

それが、今の私の大きな悩みだった。


だけど、今日だけは、違った。

ある日、友人の鈴木さんから電話がかかってきた。

「ねえ、里香! 大人の遠足に行かない?」

誘われたのは、久々のハイキング。

正直、最初は気が乗らなかった。

こんな私が行っても、どうせ浮くだけだ。

そう思った。

でも、鈴木さんの「きっと楽しいよ!」という言葉に、

心が少しだけ揺らいだ。

久々の外出。

何を着ていけばいいか、悩んだ。

特に、年齢と共に下垂してしまった胸元が、

どうしても気になってしまう。

今の私では、自信を持って参加できない。


スマホを手に取る。

オンラインショップを開いてみた。

検索したのは「大人の女性向けインナー」。

そこに写っていたのは、

年齢に合わせた自然なリフトアップ効果のある、

パッド付きインナーだった。

華美な装飾はないけれど、上品なデザイン。

こんなの、私には縁遠いものだと思ってたのに。

なぜか、そのインナーが、きらきら光って見えた。

私を呼んでるみたいに。


これだ。

直感が、ビリビリと震えた。

これならきっと、私を「新しい私」に変えてくれる。


スマホの画面を凝視する私の指先が、

購入ボタンの上で、小刻みに震え、汗ばんだ。

心臓はドクドクと、けたたましい警鐘を鳴らす。

「こんなものに頼って、どうするんや」

「今さら、誰が見るねん! 無駄遣いになるだけやろ!」

「無理してるって思われたらどうしよう…」

自己嫌悪と不安が、嵐のように脳裏をよぎる。

指が止まる。

頭の中では「やめとけ」って言うてる。

でも、心の奥底で、

「私、本当は、もう一度だけ輝きたい!」

という、純粋で、強い衝動が湧き上がってきた。

それが、私の本音だった。

「がんばれ、私、もう一度自分を信じるんや!」

小さく震える指先で、意を決して、

「ポチッ……」

購入ボタンを押した。

画面が切り替わり、「注文完了」の文字。

心臓が、大きく跳ねた。

顔が、耳まで熱くなる。

こんなパッド付きインナー。

自分のために買うなんて、久しぶりだ。

届くまでの数日間は、ソワソワしっぱなし。

遠足の日程が近づくにつれて、不安と期待が交錯する。

頭の中を、新しいインナーが、

ひらひらと舞う。

まるで、私じゃない誰かが、

私の中で、そわそわしてるみたいだ。


そして、ついに、その日が来た。

ピンポーン。

インターホンが鳴る。

慌てて玄関に出ると、

宅配業者さんが笑顔で立っていた。

小さな段ボール箱を受け取る。

夫に見られないように、

自分の部屋に駆け込んだ。

まるで、悪いことでもしたみたいに。


丁寧に、セロハンテープを剥がす。

蓋を開ける。

ふわり、と。

新品の布の匂いがした。

箱の中から取り出したのは、

私がポチった、自然なリフトアップ効果のあるインナー。

シンプルだけど、上品なデザイン。

指でそっと触れる。

滑らかな生地の感触。

こんな下着で、私、本当に変われるんだろうか。


胸の奥が、熱い。

期待と、ほんの少しの不安。

混ざり合った、不思議な感情が、胸の奥で渦巻く。

部屋の鍵をカチリ。ガチャリ。

二重にロックする。

ゆっくりと、いつもの部屋着を脱ぐ。

そして、新しいインナーを身につける。

ひんやりとした感触が、肌に触れる。

ああ。

なんてことだ。

鏡に映ったのは、胸元が自然に整った自分!

なんだか、気分が上がる。

「おお…!」

思わず、そう呟いた。

感動する一方で、不安もよぎる。

「これ、無理しちゃったかな…」

「他の参加者に、若作りって思われたらどうしよう…」

そう思ったら、急に顔が熱くなった。


遠足当日。

集合場所で、鈴木さんと合流する。

他の参加者の視線が、気になって仕方がない。

みんな、私をどう見ているんだろう。

不自然に見えてないか?

ドキドキが止まらない。

自然体で振る舞おうと努力するけれど、

内心はヒヤヒヤしていた。


ハイキング中。

美しい景色に感動し、写真を撮ろうとスマホを構える。

その時、ふと自分の胸元が目に入った。

自然に整った胸元。

それを見て、自然と笑顔になる自分がいた。

景色だけでなく、自分自身も楽しめる。

そんな新しい感覚があった。


帰りの電車の中。

夫からメッセージが届いた。

「今日、楽しかったか? なんか、生き生きしてるな」

その言葉に、胸が熱くなった。

「べ、別に、あんたには関係ないし!」

と、ツンとしながら返信したけれど、

心の中では、喜びが爆発していた。

見えないインナーが、

もう一度、自分を信じる勇気をくれた。

小さな手応えを、そっと掴んだ。

このインナーが、私を新しい世界へ連れて行ってくれる。

そう、信じて、また明日も一歩を踏み出すんだ。

ポチって、本当によかった。


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SNS


里香の友人(鈴木)のSNS投稿


今日は里香と遠足! 久々に会った里香、なんか前よりずっと綺麗になってた気がする! 楽しい一日だったね!


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【次回予告】


悩み相談です。20代のフリーランス、中島結月。第1部の最終話でパッドを通じて「見えない自信」を獲得したはずの私ですが、新しいクライアントとの打ち合わせで、過去の失敗(自信のなさからチャンスを逃した経験)がフラッシュバックし、再び不安に襲われています。普段使いのパッドよりさらにボリュームのある「勝負パッド」をオンラインで「ポチる」勇気を出したけど、こんなの、もう卒業したはずなのに…。また見栄を張ってるだけかな? 過去の自分に逆戻り? 私、本当にこのチャンスを掴めるんでしょうか?


次回 第23話 再びの試練、パッドの「問いかけ」

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