第15章 亡霊の正体
【読者の皆さまへ】
お読みいただき、誠にありがとうございます。
・この小説はカクヨム様の規約を遵守しておりますが、設定や世界観の関係上「一般向け」の内容ではありません。ご承知おきください。
・[残酷描写][暴力描写]があります。
・短編シリーズ始めました(2025年8月16日より)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438682840548
・近況ノートに、主要キャラクターイラストや相関図を用意しています。イメージ補助にお役立てください。
※最新の相関図(近況ノート)※「キャラごとのキャッチフレーズ」付き!
https://kakuyomu.jp/users/kyotobond007/news/16818792437582060358
※コンセプトアート総合目次
https://kakuyomu.jp/users/kyotobond007/news/16818792437366460945
・感想、考察、質問、意見は常に募集中です。ネガティブなものでも大歓迎です。
以上、よろしくお願い致します。
【本編】
私立あかつき学園の裏庭。
昼間にも関わらず、鬱蒼とした木々が生い茂り、薄暗い闇を作り出していた。
佑梨が閉じこもった廃焼却炉を前に、ひなたたちは思案を巡らせていた。
そんな状況でも、香菜子たちはマイペースだった。
香菜子が自撮り棒につけたスマホで撮影を始める。
「映えーっ!」
七本槍も騒ぎだす。
「エモーい!」
ひなたはそんな騒ぎを耳にも入れず、真剣な眼差しをしていた。
(ここしか……ない!)
そして、重いゴミ入れ扉に手をかける。
――ガチッ!
「開かない!?」
だが、扉の音に呼応するかのように、中から声が漏れ聞こえてきた。
「つまんないよーっ!怖いよー」
ひなたの共感力がざわめき出す。
(一体……何が……起こっている?)
ひなたが驚きながら言う。
「小河さんでしょ!? 出てきて!」
鉄の扉に手をかけ、懸命に引っ張る。
「ダメ!向こうから押さえてるわ!」
京子の身体は震え、後退りしていた。
「…幽霊…怖い…」
すると亮が力強く宣言した。
「俺が……力づくで開ける!ひなた!俺に任せろ!」
「亮!」
すると、香菜子が声を上げる。
「亮さん一人じゃ無理っしょ!?男……一人だけじゃん?」
「確かに……開かねえ……」
すると、七本槍の一人が声を上げる。
「なんかぁ……つまんないって言ってんじゃん?」
「シンちゃん?気持ち爆上げしたら、いけんじゃね?」
「つまんないならあげてこーっ!」
「キヨミ!音楽!」
「ウィース!」
――ジャジャジャジャジャーン!トゥクトゥクトゥク……!
香菜子と七本槍が、スマホで音楽を鳴らす。
もちろんノリノリのユーロビート。
「アゲアゲーッ!」
「イエーイ!」
息の合ったパラパラを踊り狂うギャルたち。
ひなたが呆然とする。
「そんなの……何の解決にも……」
京子も少し呆れ顔を見せる。
「チャラ子さん……やっぱ……苦手だ……」
亮も半ば諦めたような顔をする。
「どうすんだよ?コレ?」
三人は顔を見合わせる。
しかし、その時。
――キィ……
ひなたが真っ先に異変を察知した。
「扉が……」
続けて、亮と京子も扉に視線を向けた。
「隙間が……」
「あ……あいて……る……」
隙間から佑梨の目が覗いていた。
「楽しそう…」
佑梨のつぶやきが漏れた。
動きが止まる。
ひなたは、そのチャンスを見逃さなかった。
「亮!」
「OK!」
亮は間髪入れず、扉にステップで一瞬で間を詰めた。
そして、素早く隙間に手を入れ込む。
「ひなた!京子ちゃん!」
亮の合図で、京子とひなたが扉のノブを思い切り引っ張る。だが、なかなか開かない。ひなたと京子の顔に汗が流れる。
「中から……」
「引っ張られてる……」
焼却炉の中から、佑梨の声が漏れ聞こえる。
「怖い! 怖い!」
ひなたが大声をあげた。
「亮ーっ!」
ひなたの声に、亮が大声を上げ、渾身の力を込めた。
「うおおおおおーっ!」
――ガン!
扉が開き、亮が佑梨を引っ張り出す。
ひなたと京子は扉から手を離し、息も絶え絶えに倒れ込んだ。
「いけた!フウ……フウ……」
「……やった……わ……フウ……フウ……」
亮が佑梨の手を取って宣言した。
「取ったぞーっ!」
香菜子たちは、踊りを中断し歓喜の声を上げた。
「やったねーっ!亮さん!」
「うえーい!」
亮は息も絶え絶えにつぶやく。
「いや……引っ張り出したの……俺なんだけど……」
ひなたが笑顔で言う。
「すごいステップだったね!一瞬だよ!」
「ま……サッカー部だしな……ふぅ……」
ひなたの目が少し緩んだ。そして、心が締め付けられる思いがした。幾分か顔も赤らんでいる。
(亮……カッコいい……)
その様子を見て、京子がつぶやいた。
(ごちそう……さま……だね……)
亮が再び口を開く。視線は佑梨に向けていた。
「そういえば……君?小河さんだよね?」
京子もうなづく。
「……この娘だ……私に……」
ひなたが真剣な目を佑梨に向けた。
「小河さん?!」
香菜子と七本槍たちも黙って視線を佑梨に向けていた。
いつも間にか、音楽は消え、静寂が支配する。
――ヒック……ヒック……
佑梨は泣き崩れた。
「怖い…怖いよぉ…」
ひなたが咄嗟に佑梨を抱き寄せた。
「小河さん…生きてたの……ね……」
すると、佑梨は泣きながら、言葉を発する。
「小河……って、誰?」
ひなたは驚愕する。
「えっ……!どういうこと……?」
一同も驚愕で言葉が出ない。
ひなたが困惑の中、言葉を続けた。
「じゃあ……あなた……は?誰?名前は?」
佑梨は小さく呟いた。
「名前?……おじさんは、
ひなたは佑梨の返答に戸惑いの表情を浮かべた。
「なんですって!小河さんじゃない?!」
「ここ、くらくて……やだやだだったの。でも……おじさんいっぱい来て……おっかけてくるから……かくれっこ、してたの……」
「おじさんたち……?」
「……」
佑梨は……いや、Dは黙り込んでしまった。
そして、静かに泣き続ける。
――ヒック……ヒック……
ひなたは優しく語りかける。
「小河さん……」
共感力が、Dの怯えに不穏を察知した。
そして……問いかけた。
「どんな奴に……追われてたの?」
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