第25章 図書館の邂逅

【読者の皆さまへ】

 お読みいただき、誠にありがとうございます。


 ・この小説はカクヨム様の規約を遵守しておりますが、設定や世界観の関係上「一般向け」の内容ではありません。ご承知おきください。


 ・[残酷描写][暴力描写]があります。


 ・短編シリーズ始めました(2025年8月16日より)

https://kakuyomu.jp/works/16818792438682840548



 ・近況ノートに、主要キャラクターイラストや相関図を用意しています。イメージ補助にお役立てください。


※最新の相関図(近況ノート)※「キャラごとのキャッチフレーズ」付き!

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※コンセプトアート

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※コンセプトアート総合目次

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 ・感想、考察、質問、意見は常に募集中です。ネガティブなものでも大歓迎です。


 以上、よろしくお願い致します。




【本編】

 私立あかつき学園の図書館。

 橙の夕陽の光と静寂が書架の埃を包む。


 ひなた、京子、亮の三人は、息を潜めて書架の影に隠れていた。

 ひなたの共感力が、裏庭の佑梨の怯えた目を呼び戻す。「D…ファウンデーションの仕業?」

 木目の床が軋み、柑奈と土橋の拳銃が光る。


 ――ドクン!ドクン!ドクン!

 

 ひなたの心臓が高鳴る。

「行くしかない!」

 拳を握り、一歩踏み出す。

「えいっ!」

 そして、柑奈と土橋の前に飛び出したのだ。

 

「やめて!撃たないで!」

 声は震えるが、瞳は真っすぐだった。


 柑奈が目を丸くする。

「……碧唯……さん?」

 ひなたが叫ぶ。

「小河さん……が生きていたの……! あの子は自分……Dって言ってたわ……」

 そして、その視線を、真緒に向けた。

「麻倉さん!あなたは……何かを知ってるみたいだけど?!どうなの!?」


 ひなたの背後で、京子と亮は本棚の陰に隠れたままだ。

 二人は小声で思いを吐露する。

「ひなた……」

「おいおい……思い切り過ぎだろ……」

 

 清掃員の男─土橋の目が細まった。

 構えている拳銃は、ひなたに向いたままだ。

「貴様……ファウンデーションか?」

 柑奈も拳銃を下さない。

「動かないで!あなたこそ、何を知ってるの!?」


 ひなたの目が燃え上がった。

 そして、力強く言う。

「お願い! あなたたちが敵じゃないなら、教えて! この学園の秘密……ファウンデーションって何なの!?」


 図書館の空気が張り詰めた。

 一瞬、全員の動きが止まる。


 ―ズシャッ!


「ひなた!」

 亮が本棚から飛び出したのだ。

「無茶するな!」

 そして、ひなたを拳銃の射線からかばう様に立ち塞がる。

「ひなた、危ないだろ!」


 ひなたが亮と目を合わせる。

「いいの、亮!私は真実が知りたいの!なぜ小河さんは死んだのか!そして……この学園の……」

「バカ!だからと言って……」


 ――ビシッ!


 亮のビンタが一閃し、ひなたの頬を打った。

 図書館に乾いた音が響いて消えた。

 

「亮……」

 ひなたは呆然として、左頬に手をやる。

「死んだら意味ないじゃないか!」

「……」

 

 土橋と柑奈は少し訝しげな表情浮かべる。

「敵じゃ……」

「なさそうね……ふぅ……」

 柑奈は拳銃を下ろした。

「おじさん?もういいんじゃない?」

「そうだな……」

 土橋も拳銃をホルスターに静かに収めた。


 ――カチャッ


 土橋が静かに安全装置セーフティをかける音が響いた。


 すると、ゆっくりとした動作で、ひなたと亮の後ろから京子が近づく。

「ひなた……て……寺本……さん……大……丈夫?」

 ひなたは満面の笑みをうかべる。

「大丈夫だよ!京子!」

「ひなたの奴……無茶しやがって……俺も大丈夫だ!ありがとう!」


 京子の顔に微かな笑みが漏れた。

「良かった……私……ひなた……寺本さん……を……」

 ひなたは笑顔で応える。

「ありがとう……京子……」


 真緒とのぞみは様子をじっとみている。

「なあ……真緒?」

「ええ……おさまった様ですわ……」

「せやけど……ネットニュースでも見たけど、この前の事故死と言い、真緒の叔母さんの件も……さっぱわやや……やで」

「ええ……」

「どんな秘密があんねん。この学園は……」


 そこにひなたの言葉が、力強く割り込んだ。

「柚希さん……それに……土橋さん?只者じゃないですよね?」

 亮が更に言葉を重ねる。

「話は……聞いたぜ?NPSOって?何のことだ?」

 京子も恐る恐る口を開く。

「理事長先生を……追って……?」


 一同に沈黙が訪れる。


 何も無い時間、誰も動けない。お互いを探り合うかのように視線だけが交錯する。


(……)

(どないすんねん……これ……)

 真緒とのぞみも動けない。


(どうしたら良い?おじさん?)

(……)

 柑奈と土橋もひなたたちと真緒たちへ交互に視線を向けていた。


 ―キラッ!


 突如、窓から差し込んだ夕陽が、何かを一瞬輝かせた。


(……んっ?)

 土橋の視線が、京子の髪の白いヘアピンに吸い込まれる。

 

 土橋は思わず言葉を漏らす。

「……そのヘアピン、どこで?」

「……えっ?……」

 京子が震える。

「なぜ……聞く……の?」

「……答えられないか?」


 一同の動きが更に凍りつく。


 ひなたの脳裏に疑念が浮かんだ。

(なぜ……?こんな時に?まさか……京子が?)


 少しのためらいの後、京子が口を開いた。

「物心ついた時から……孤児院で、親の形見って……牧師様から……渡された……」


 一同の思いが図書館を交錯する。

 

(なんや?あの娘、孤児やったんか?知らんけど)

 

(なぜ、あの方をあんなことをお聞きに……)

 

(京子ちゃん?どうした?)

 

(おじさん……まさか……この娘が……?そんな偶然?)


(京子!)

 

 土橋の表情が崩れる。

「……まさか……君の名前、土師……京子じゃないのか?」


 ―空気が凍りつく。


「……嘘……なぜ……私の……名前を……」

 京子の顔がこわばる。


 ひなたの共感力がざわめいた。

 京子のこわばった表情に直感が走る。

(まさか……そんな……そんなことって!)


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