オカルト好き、怪異好きとして、これはかなり刺さる作品です。
本作で描かれる怪異は、いきなり派手な化け物が出てくるタイプではありません。むしろ、日常のすぐ隣で「あり得ないことが、静かに起こる」タイプの怪異が描かれます。
たとえば、普通に下校していただけなのに、自転車が突然おかしな形に折れ曲がる。車が事故を起こすのに、原因がはっきりしない。どれも一見すると事故で片づけられそうなのに、どこか決定的におかしい。その違和感が、じわじわと怖さを積み重ねてきます。
しかも、それが一度きりで終わらないのがポイントです。被害は少しずつ増え、関係者も限られていき、「これは偶然じゃない」「誰かが、何かを使って起こしているのでは?」という疑いが自然に浮かび上がってきます。
怪異そのものが見えなくても、日常が壊れていく感覚だけは確かに伝わってくる。このタイプの怪異描写は、オカルト好きにはかなり効きます。そして、それらの怪異がきちんと体系化されているのも、とてもいいですね。ああ、これ結構、好きです。
作中では、こうした怪異について「祈り」や「願い」と深く結びついた存在なのではないか、という示唆が出てきます。怪異は単なる災害や敵ではなく、人の心から生まれてしまったものかもしれない。そのため、怖いと同時にどこかやるせなさも残ります。ただの怪談ではなく、伝奇ものとして読ませる力があると感じました。
そして何より惹かれたのが、この物語には最初からしっかりとした「箱」が用意されている点です。
学校の中に存在する、正体のよくわからない「文化研究部」。怪異を調べ、対処するための場所が最初から明確に提示されていて、ここに相談が持ち込まれる限り、どんな怪異でも描けてしまう構造になっています。正直、この時点で「この設定、ずっと読めるな」と思いました。無限に怪異譚を展開できそうな土台が、序盤からきちんと組まれているのです。
これは、ポイント高いです。同じ怪異やオカルト、伝奇を書いているわたしにとって、「ああ、この設定でわたしも書いてみたい」と思わされました。
その箱があるおかげで、物語は一話完結的な怪異にも、長く続く因縁にも対応できそうですし、「次はどんな怪異が出てくるのか」「次はどんな人の願いが歪んだ形で現れるのか」という期待が自然に生まれます。これは連作の伝奇として、とても強い魅力です。
怪異そのものの怖さだけでなく、それを生んでしまう人間の心にも目を向けている……オカルトや怪異が好きで、日常が少しずつ歪んでいく話が好きな人には、かなりおすすめです。
同じ、オカルト、怪異、伝奇ものを書くわたしにとって、とても応援したくなる、ともに歩んでいきたい作品だと感じました。