犬猿の仲

無意味の意味

犬猿の仲

いつからですかね。

人一人が通れるくらいの路地を挟んだ集合住宅の窓から二人の男が毎日罵倒し合うようになって。

内容は別にどうでもいいことなんですよ。

やれ髪型が気に入らないだの、そんな口論です。

近所でもちょっとした名物になってたんで、苦情とかもなく。


で、ある日一方が入院しまして。

癌だったそうです。

入院した方は相手が不在の自分にどんな悪罵を吐いてるかわからない、

片や相手の方は面罵する相手がいなくなったので更に不機嫌だったとか。


んで、元気だった方が突然首を吊りまして。

窓際の、例の立ち位置でです。

愛憎入り混じってたんで生き甲斐を見失ったのかな、なんて噂してたら、

入院してた方も死んでたと。

こっちの死亡時刻は医師の診断書で分かってるんですが、元気だった方は直前に近所の悪ガキを怒鳴ってたんでその直後と思われるんですが。

奇妙なのはそこで、入院してた方が息を引き取ってから30分も経たずに首吊りが起こった計算で。

みんなして「あの世でも罵り合いしたかったのかねぇ」とか。

因みに、ですけど入院以来閉めたまんまのそこの窓が当日だけ開いてたって。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

犬猿の仲 無意味の意味 @kokurikokuri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る