第6話 ストーカー

「どうしたの、佐藤くん」


 ぼうっとしていると、前の席の前島さんが話しかけてきた。

 稲辺さんにストーカーされているとは言いづらい。

 でも、前島さんには話しておかねば。


「実は、稲辺さんが最近俺につきまとってきていてね」

「……やっぱりね」


「気づいていたんだ」


「うん。佐藤くんを追ってるのよく見かけるからね」

「この前助けちゃったせいかな」

「でも凄いことだよ。誇っていいと思う」


 その代償にストーカーされまくっているんだがな~。好きになってくれるのは嬉しいが、ずっと尾行されているとキツい



 一週間、二週間と経っても状況は変わらず――むしろ悪化。


 俺の家の前に立っていることも多くなった。ヤバイって!



 ある日。



「なあ、前島さん。このままでは俺、刺殺されるかもしれん」

「えぇ……」


「こうなったら、前島さんとキスしているところでも見せるしかないかも」

「その手を使うしかないかもね」



 発狂して襲い掛かってこないといいが、しばらくは沈黙してくれるはずだ。




 放課後。




 教室内には俺と前島さん――そして、教室の外に稲辺さん。こちらを覗いている。……怖いって。



 今がチャンスだ。



 俺は、前島さんにキスをした。

 稲辺さんに見られている状況での、あまり良いとはいえない雰囲気の中で。でも、それでも俺は至福を感じた。



 だが。



『きええええええええええええええ!!』



 廊下で発狂する声が響く。


 こ、これはまずいんじゃ!?

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