第三章 第六話
手を引かれるままにやって来たのは、なんと
間取りはほぼ同じなのに、小さな違いから
なんだか、とても落ち着かない。
「あの、
ここに来るまでの間、
困惑する
「寝る」
「何してるの?
「えっ? だって布団ないし」
部屋にあるのは、真ん中に敷いた
「うん。だから、一緒に寝ればいいじゃん」
言われてみれば、
けれど、それがわかったところで、はいそうですかと入るわけにはいかない。
「寒いから、早くして」
「待って。そんな……一緒になんて寝れないよ」
「どうして?」
「どうしてって……」
「もしかして、人間にとって一緒の布団で寝ることって、特別なの?」
「……うん。特別だと思う」
「そっか。あの夫婦だけじゃなくて、人間の間ではそうなんだ。でも半妖の世界なら、一緒の布団で寝ることくらい普通だよ?」
「本当?」
「うん。夫婦だろうと、恋人だろうと。兄弟だって友達だって。別になんてことないから」
「そうなんだ……」
「だから、別に平気だよ」
そんなさらりと言われても、全然平気ではない。
けれど、さすがに体が冷えてきた。自覚した瞬間に鼻がむずむずして、くしゃみが出てしまった。
「ほら、風邪ひくよ。他にあてがあるわけじゃないんだから、諦めなよ」
「じゃあ……一晩だけ、お邪魔します」
観念して布団の中へと入れさせてもらう。大きく見えた布団も、実際に入ってみると二人で使うにはやっぱり狭かった。
背中を向けて寝れば、見つめ合うこともなかったのに、どうしてわざわざ向かい合うなかたちで寝てしまったのだろう。
「
居たたまれなくなって、体を起こそうとすると腕を掴まれた。
「人間のほうがいい?」
「え?」
聞かれた意味がわからず、聞き返す。
見れば、
「一緒の布団で寝ること、特別なんでしょ? それで、
「どういうこと……?」
けれど、ハッと我に返った様子で掴んでいた手を離すと、
「なんでもない。気にしないで。忘れて」
「え、そんなこと言われても気になるよ。ねえ、
反対側を向いている
「なんでもないって」
「ちゃんと、話してよ」
「本当になんでもない」
はねのけるような言い方に、心が萎んでいく。
さっきまでは向かい合わせで寝るのが恥ずかしく逃げ出したいくらいだったのに、今はもうこちらに向けられたままの背中が
傷つくのは嫌だ。
けれど、不意に
そして、
「じゃあ
「怒ってないよ」
「怒ってるよ。普段はいつもみたいに優しいけど、最近そういう時あるよ。前からそっけないところもあったけど……そういうのじゃなくて、少し違う感じ。わたしが何かしたなら謝るから。だから、ちゃんと教えてほしい」
拙くても、ひとつひとつ言葉にしていく。すると、
「本当に、怒ってないよ」
口調も眼差しも優しい
それから、
「……いや、ごめん。やっぱり、怒ってたかも」
「どうしてなの?」
「理由はたぶん二つ、かな……
「そっか……そうだよね。あきちゃんは、担当場所も違うし。これからは、前みたいに仕事のことは
「うーん、そういうことじゃない」
「え、違うの」
「違くないけど、やっぱり違う……なんか、
「わたしがあきちゃんと仲いいのは、人間だからとかそういう理由じゃないよ」
「うん。
「あとは、
「
「ねえ、知ってる? 人間と半妖も結婚できるんだよ」
脈絡のない発言に、
人間と半妖は、ひと昔前には交流があったという。
「俺の両親もそう。母親は俺と同じ半妖の狐族だけど、父親は人間らしいよ」
「そうなの?」
全く知らなかったので、
「俺は、父親の顔は知らないんだ。俺が生まれる前に、姿を消したらしい。要は、母親と俺を捨てたんだよ。だから、自分の奥さんを大事にしないあの男に無性に腹が立ったんだと思う」
なんて言葉をかけたらいいだろう。伊智に寄りそえる適当な言葉が見つからない。
すると、
目を上げると、
躊躇しながらも
「もちろん、人間にだっていい人がいることは知ってる。いい人も悪い人もいるのは、人間も半妖も妖だって同じ。でも、なんとなく人間を避けてる部分はあった」
話しながら眠気がやってきたのか、
「それは、今も同じ?」
「今は……どうだろう。人間のことは、まだよくわからない。でも、
深い意味はないとわかっていても、心臓が騒がしくなる。
なにより、人間である
「わたしも……
あくまで友人としての好きなのだから、そんなに緊張する必要なんてどこにもないのに。
喉がこくりと鳴って、触れ合っている手が熱い。
「
静かに呼びかけてみるけれど、
どうやら眠ってしまったようだ。
さっき自分が言った言葉は、聞いていたのだろうか。それが気になってしまって、すやすやと眠る
今夜は、
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