第二章 第四話
解決の糸口を見つけるため、
受付にいることもあるが、
なるべく邪魔しないように気をつけながら、
お客様名簿は、名前や年齢、家族構成の基本的な情報の他に、どのような一生を過ごしてきたかが記されている。ただし、どんなに長くても二、三枚にまとめてある簡易的な文書なので、詳しいことまではわからない。
彩の国、妖の地の
貧しいながらも学舎へ通わせてくれた母親に恩返しするため、文官になることを目標にし、卒業後その夢を叶えたそうだ。文官となった三年後に、母親は病気により亡くなっている。
読み終えると、
りんきん餅は家庭でよく出るものだと
藁にもすがる想いで名簿を読みに来たけれど、目の前に大きな壁がある気分だった。
けれど、何か違うと思わせたまま、
悶々と考えを巡らせていると、事務室の襖が開いた。
「失礼します」と入ってきたのは
「あれ、
「妖たちの宴会のほうはどうだ?」
「まだまだって感じですかね。長くなりそうですよ。それにしても最近、俺あっちの助っ人ばかりなんですけど」
「人手が足りないんだ。我慢してくれ。好きなだけ食べて呑んだら、勝手に満足してくれるさ」
「まあ、そういう意味では楽なんですけどね」
それから
「
「うん、それが……美味しいとは言ってもらえたんだけど……子どもの頃に食べた味となんか違うみたいで」
「なんかって?」
「わからない。でも、やっぱり味なのかな。何かわかるかもと思って、名簿を見にきたの」
「うーん……地方によって、りんきんの味が違うとかあるのかな。ちょっと見せて」
「
名簿から目を上げて、
「
「ん?
思わぬ情報に、
「それって、いつ頃ですか?」
「んー、二十年前とかそんなところだったか……ちょっと待て、調べてみる」
すると、その声に応じるかのように分厚い本が一冊、他の本の間からするっと抜け落ちた。畳の上にぽとんと落ちた本は自ら体を起こして、ぴょんぴょんと跳ねながら事務机に近づいてくる。そして、勢いをつけて飛び上がり、机の上に開かれた状態で着地した。
「彩の国、妖の地の
「りんきんの不作は、今から二十年前に始まって三年間は続いたようだな。もともとは家庭に馴染のある食べ物だが、数が極端に減ったことで価格が高騰して、この間は高級品になっていたらしい」
名簿の生年月日と照らし合わせると、
解決の糸口を掴むどころか遠のいていくのを感じ、
「やっぱり記憶違いなのかな。子どもの頃のことだから、よく覚えてないってお客さんも言ってたし……」
そう口にしつつも、なんだか釈然としない。
言葉とは裏腹に、
そのとき、再び事務室の襖がすっと動いた。控えめに開かれた隙間から、大きな丸い瞳と狐の耳が見える。
「どうした、
「
「え、わたし?」
「これ、この前助けてくれたお礼。絵の具を作るの手伝ってくれてありがとう」
「え、本当にもらっていいの? ありがとう!」
「かわいい花。色も綺麗だね」
褒めると、
「折り紙がなかったから、代わりに和紙で作ったんだ」
「へえ、和紙を代わりに」
和紙でできた花は、特有の柔らかな色合いで質感もしなやかだった。
「こんなかわいい花が作れるなんて、すごいね」
「これくらい簡単だよ」
謙遜しつつも、
微笑ましく思いながらその顔を眺めていると、
すると、その様子を傍観していた
「
「照れてないよ!」
どういうことだろうと疑問符を浮かべる
「狐の半妖は、照れると耳が左右に動くんだよ」
「へぇ、そうなんですか」
半妖は照れてもそれが表に出なくてうらやましいと思っていたけれど、実は別のかたちでしっかりと現れるらしい。
「いちいち説明しないでよ、
「悪い悪い。ちょっとからかい過ぎたな」
「もう、なんで勝手に耳が動くんだろう……こんなの僕たち狐族くらいじゃない?」
不服そうに呟かれた言葉に、同じく狐族である
「人間だって照れたら耳が赤くなるし。あれも、自分の意思じゃないよね?」
すると、
「なんで
今度は、
「あっ、
「そんなこと知ってどうするんだよ」
「僕だって、人間のこと知りたいもん! 教えてよー」
純粋にお願いする
その姿を見た
「そうだなぁ、それは俺も知りたいなぁ」
明らかにからかうような口調に、
「ねえ、教えてよ。
「それは……あれだ、もっと大人になったらな」
食い下がる
すると、
「へー、大人にならないと教えられないようなことしたのか、お前」
「ほら、
「えー、まだみんなと話したいー」
強引に退場させられることに不満を訴えながらも、
「でも、仲良くやっているようで安心したよ」
「
「うーん、うまくかわせるかなぁ。
好奇心に目を輝かせる
「よくできてるなぁ。折り紙がないから和紙で作ろうって考えるのも、すごいし……」
言いながら、
「もしかして……ないから、代わりのものを使ったんじゃ……」
呟きながら、その可能性について考えを巡らす。
「
「ねえ、
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