第20話:体育祭、勝利の女神リップ

「よーし、絶対優勝するぞ!」


校庭の隅で、ユウキは叫んだ。

小学六年生の土曜日。

今日は、待ちに待った体育祭の日だ。


ユウキは、体育祭実行委員。

クラスを優勝させたい気持ちでいっぱいだった。

みんなを応援して、

クラスの勝利に貢献したい!

「勝利の女神」みたいに、

みんなを励ましたいな、と思っていた。


そんなユウキの秘密のアイテムは、

長時間潤いが続く、色付きのリップバーム。

塗ると、唇がしっとりして、

なんだか声が出やすくなる気がするのだ。

「これがあれば、きっと大丈夫。」

ユウキは、リップがくれる

「おまじない」のような力で、

やる気を高めていた。


リップバームを唇に塗ると、

唇がしっとりして、

なんだか元気が出た気がする。

これで応援もバッチリだ。

そう確信して、ユウキは校庭へ向かった。

みんなで応援の練習。

「フレーフレー、赤組!」

大きな声で応援歌を歌った。


その時だった。


キュルルルル……。


ユウキのお腹が、

変な音を立ててしまったのだ。

「うそでしょ!?」

ユウキは顔を真っ赤にした。

まさかこんなハプニングが起きるなんて!

心臓がバクバクする。

こんな時、リップのおまじないなんて、

ちっとも役に立たない気がした。


体育祭は午前中いっぱい続く。

でも、ユウキのお腹は、

もう限界だった。

「ねぇ、お腹空いちゃったね…。」

隣にいた友達も、コソコソとつぶやいた。

結局、ユウキは、

応援の途中で、お弁当を先に食べることに。

せっかくのリップバームも、

お弁当を食べるうちに、少し崩れてしまった。


応援は声援のみになってしまったけれど、

お弁当を食べたら、元気が出てきた。

午後の応援は、もっと大きな声が出せた。

リップバームは唇を潤し、声援を支えた。

そして、リップがくれた「元気」が、

美味しい食事への喜びと、

応援を続ける精神力に繋がったんだと気づく。

読後感は、達成感と、食の喜び。


家に帰って、お母さんに

体育祭で優勝できたことと、

お腹が鳴ってしまったハプニングの話をした。

お母さんは、うんうんと頷いてくれた。


「ユウキ、体育祭お疲れ様。

口元、なんだか元気そうだけど、

リップバームのおかげかしら?

ううん、きっとユウキの頑張りね。」


お母さんの呟きが、

ユウキの心にじんわりと温かく響いた。

リップの秘密はまだ内緒だけど、

きっとお母さんも、私の今日の頑張りを

応援してくれているんだ。

そう思ったら、なんだか心がポカポカした。


次回予告:

第21話では、親友の誕生日プレゼントを選びに行く小学五年生が登場! 可愛いリップで気分を上げてプレゼント探しに向かいますが、まさかのハプニングが…? お楽しみに!


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