第19話:女子会旅行、笑顔の潤いリップ

「よーし、今日は最高の思い出作るぞ!」


鏡の前で、ひかりは小さくつぶやいた。

中学二年生の土曜日。

今日は、親友たちとの

初めての「女子会旅行」の日だ。


ひかりは、みんなで計画した旅行を

心から楽しみにしていた。

旅行先で映えるリップを塗って、

最高の笑顔で思い出を作りたい!

そう思っていた。


そんなひかりの秘密のアイテムは、

温泉の湯気でも落ちにくい、ティントタイプのリップ。

塗ると、顔色がパッと明るくなって、

なんだか旅行への気分が高まる気がするのだ。

「これがあれば、きっと大丈夫。」

ひかりは、リップがくれる

「おまじない」のような力で、

わくわく気分を高めていた。


リップを唇に塗ると、

顔色がパッと明るくなり、

旅行への気分が高まる。

これで完璧と確信して、ひかりは家を出た。

友達と駅で待ち合わせ、

電車に乗って旅行先へ出発した。


電車の中で、みんなでおしゃべりしたり、

お菓子を食べたり。

途中のサービスエリアに着いて、

休憩することになった。

ひかりは、ワクワクしながら、

お土産屋さんを見て回った。

その時だった。


「ひかり、ちょっと…」

親友の一人が、ひかりのそばに来て、

顔色が悪そうにつぶやいた。

「なんか、お腹が痛いかも…」

まさかこんなハプニングが起きるなんて!

ひかりは顔を真っ青にした。

せっかくの楽しい旅行なのに!

こんな時、リップのおまじないなんて、

ちっとも役に立たない気がした。


ひかりは、すぐに友達をベンチに座らせた。

「大丈夫?どこか痛いの?」

友達は、だんだん顔色が悪くなっていく。

旅行は諦めて、病院を探すことにした。

リップの出番はなくなってしまったけれど、

ひかりは友達のそばにずっとついて、

優しく背中をさすってあげた。


病院で診てもらうと、

友達は軽い胃腸炎だった。

幸い、すぐに良くなるらしい。

ひかりは、ホッと胸をなでおろした。

リップは活躍できなかったけれど、

看病を通して友達との絆が深まったことが、

何よりも嬉しかった。

リップがくれた「楽しむ気持ち」が、

別の形で、友達との絆を深めてくれたんだと気づく。

読後感は、友情の温かさと、予期せぬ喜び。


家に帰って、お母さんに

旅行で友達が体調を崩したことや、

看病したこと、

そして友達が元気になったことを話した。

お母さんは、うんうんと頷いてくれた。


「ひかり、旅行は大変だったみたいだけど、

友達が元気になって良かったわね。

口元、なんだか潤ってるけど、

リップのおかげかしら?

ううん、きっとひかりの優しさね。」


お母さんの呟きが、

ひかりの心にじんわりと温かく響いた。

リップの秘密はまだ内緒だけど、

きっとお母さんも、私の今日の頑張りを

応援してくれているんだ。

そう思ったら、なんだか心がポカポカした。


次回予告:

第20話では、体育祭実行委員の小学六年生が登場! 勝利の女神リップでクラスを応援しますが、まさかの空腹ハプニングが…? お楽しみに!


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