5
一成の運転する車は
「さっきも通ったけど、落ちそうで怖い」
沈下橋は元々車一台が通るのがやっとの幅な挙げ句欄干が無い。自分の運転では通りたくない、死ぬ。とみむろは思った。実際は工事用のダンプカーが通行出来る幅があるのだが窓の外に映る景色が川の水ばかりだと精神衛生上悪い。
「欄干つけると流木がぶつかって橋が壊れるからな、吊橋効果ならぬ
運転しながらチラリと助手席を見る一成。助手席ではみむろが眉をひそめて嫌そうな顔をしている。
「前見る、落ちたら死ぬ」
かずら橋での蛮行は何処へやら、みむろは眼下の濁流に震えていた。
『こいつ』
みむろは一成が自分を見て楽しんでいる様子に苛立つ。ただ、親しい人が二人も殺されているのだ、ただそれも気晴らしになるならまあ良いのかなとも思う。
「ここの水位も人為的だったのか?」
急に声のトーンを落とし話しかける一成。今度は前を見たままだ。
「多分」
もう草や枝は綺麗に取り除かれている。今さら調べた所で痕跡は残されてないだろう。みむろが見渡しても不審点は無かった。むしろ重機で川底を
「次は何処に行こうか?お嬢さん」
「そろそろ大丈夫かな……今、別邸には誰もいないなら事件のあった部屋を見たい。後はここからの車での経路。それが終わったらお風呂、かな」
みむろは口元に指を当てると、車の天井を見る。考え事をする時の癖なのか足をバタつかせている。若干はしたないが、まあ部屋の中を歩き回る代わりなのだろう。
「お風呂って、余裕あるな」
「うん、まあ、帰れないし。せっかくだから……」
なんともすっきりとしない口ぶりだが、一つくらいはいい思い出があっても良いだろう。と一成は気に留めなかった。
「意外と屋敷まで距離があるのね」
「
里の街並みを通り抜ける暫く車を走らせると、橋部屋敷に到着する。本来なら鼎の状態を皆に伝えるべきだろうが、怪しまれないように先に別邸へと向かう。山間の橋部の里は空が狭くすっかり暗くなっていた。
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