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「ちょっと待って!!」
運転席に座った、鼎が今まさにドライブにシフトを変えようとした時、女がシフトノブを握る鼎の左手にしがみついてそれを制止した。
「何だ!!危ない」
鼎は思わず手を引く。慌てて鼎の言葉からビジネスモードが消える。
「カズ君に連絡してくれるって言ってたでしょ。カズ君から返信があっても私に伝えられなかったら意味無いじゃない、ハイ」
そう言うとバッグの中から携帯電話を取り出し慣れた手付きで二次元コードを見せる。
「それもそうか……?でも橋部さんとは知り合いなんだろ、連絡先知っているんじゃ……」
鼎は仕事柄、この女ストーカーじゃないよな、と警戒した。今のところまともに話は出来ているが……行動が無茶苦茶なだけで。
自業自得なところはあるが一成には恋愛トラブルも多い。
「私は知ってるよ、モチロン。でもカズ君が消してるかも知れないでしょ、私の連絡先。……あんまり言いたくないんだけど喧嘩してて……」
「そう言う事なら仕方ないな……」
鼎が二次元コードを読み込む。友だち登録をしながら
「なんて呼んだら良いんだ」
と、ぶっきらぼうに鼎が質問する。
「読めないの?……あ、違うか、そういえば自己紹介がまだだったね。……私、あや、
奈々は胸に手を当て自己紹介を済ませる。鼎はキューブを発進させる。相変わらず頑張っている事をアピールするエンジン音だ。
「さんづけしろと……それなら奈々さん、俺は鼎を音読みでテイだから登録はT、鼎様でもT様でも良いぞ」
「鼎様、この度のご配意ありがとうございます。……フフ、ノリ良いね」
「それはお互い様」
このところ、口数の少ないみむろと暮らしていたため、沈黙避けにネタを振る癖が出来てしまった。良いんだか悪いんだか……。
暫く運転して、赤信号で停まる。携帯電話がコールされている。ディスプレイを見るとみむろからだ、隣に座る奈々は気になったがみむろが音声通話をしてくるなんて何かあったのだ。Bluetoothのボタンを押して電話に出る。
「みむろか、今クライアントと一緒だから手短に頼む」
『事件があって、橋部の里から出れない、橋部さんも大変。後はメッセージで送る』
下手なメッセージより短いみむろとの通話。クライアントの気にかけてくれてたのだろうが、橋部の名を聞かれてしまった。
「何?あの
奈々は怒ったり悲しんだり忙しい。落ち込んでいる奈々の隙を見て鼎はメッセージを見る。
『鸞蔵さん殺された。橋部さんは家をまとめるので忙しい。救援求む』
メッセージも短い。だが、みむろからの明白なSOSだった。
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