第3話 コンビニバイトと謎の買い占め事件


「田中くん、最近変なお客さんが来るんだよ」

放課後のコンビニバイト中、店長の山田さんが困った顔で話しかけてきた。

「変なお客さんですか?」

「そう。毎日朝の五時くらいに来る美人の女の子なんだけどね」

朝の五時?美人の女の子?

「どんな人ですか?」

「銀色の髪で、すごく綺麗な子なんだ。でも、買い物の仕方が変でさ」

山田さんは防犯カメラの映像を見せてくれた。

そこには、見覚えのある後ろ姿が映っていた。

「有美さん…」

「え?知ってるの?」

「あ、いえ、知り合いかもしれないなと思って」

映像の中の有美さんは、商品を手に取っては戻し、また手に取っては戻しを繰り返していた。そして最終的に、かなりの量の商品をカートに入れている。

「何を買ってるんですか?」

「それが変なんだよ。君の好きそうなものばかり」

「え?」

「コーヒー牛乳、メロンパン、唐揚げ弁当、ポテトチップス…全部君がよく買うやつ」

確かに、それらは僕がよく買う商品だった。

「でも、なんで僕の好みを?」

「さあ?でも、その子が買った後に君が来ると、決まって『あー、売り切れてる』って言うんだよ」

「あー…」

最近、確かに僕の好きな商品がよく売り切れていた。

「もしかして、君のことが好きな子なんじゃない?」

「そんなまさか…」

でも、心当たりがありすぎた。

その日の夜、僕は少し早めにバイトに行くことにした。もしかしたら、有美さんに会えるかもしれない。

午前四時半、コンビニの外で待っていると、案の定有美さんがやってきた。

今日は白いワンピースを着ている。朝の四時半に、なぜそんなに綺麗な格好を?

「有美さん」

「きゃー!」

有美さんは僕を見つけると、持っていた買い物リストを慌てて隠した。

「た、拓也様!なぜここに?」

「バイトなんだ。有美さんこそ、なんでこんな朝早くに?」

「あ、えーっと…早起きが趣味なんです!」

「そうなんだ。でも、毎日このコンビニで買い物してるって聞いたけど」

「え?」

有美さんの顔が青くなった。

「店長さんから聞いたんだ。僕の好きな商品ばかり買ってるって」

「そ、それは…偶然です!偶然!」

「偶然にしては、タイミング良すぎない?」

「………」

有美さんは観念したように、隠していたリストを見せてくれた。

そこには、驚くほど詳細な僕の好みが書かれていた。

『拓也様の好きなもの調査結果』

・コーヒー牛乳(必ず午後三時に飲む)

・メロンパン(火曜日の朝によく買う)

・唐揚げ弁当(雨の日に食べたくなる様子)

・ポテトチップス(コンソメ味限定)

・プリン(疲れた時に食べる)

「すごい詳しいね…」

「あ、あの!決して変な意味ではなくて!」

「じゃあ、どういう意味?」

「えーっと…」

有美さんは真っ赤になって、指をくるくると回していた。

「好きだから…」

「え?」

「拓也様のことが好きだから、好きなものを知りたくて…」

そんな小さな声で呟かれると、僕も顔が熱くなった。

「でも、なんで僕の分まで買っちゃうの?」

「それは…」

有美さんは更に声を小さくした。

「拓也様に、私が用意したものを食べてもらいたくて…」

「え?」

「でも、直接渡すのは恥ずかしいし、迷惑かもしれないから…」

「だから、僕の分を先に買って、僕が困るようにしてるの?」

「はい…」

完全に逆効果だった。でも、そんな有美さんが可愛く思えた。

「ありがとう。でも、そんなことしなくても…」

「え?」

「もし良かったら、一緒に食べない?」

有美さんの目がぱっと輝いた。

「本当ですか?」

「うん。でも、朝の四時半は早すぎるから、普通の時間にしよう」

「はい!」

その日から、有美さんは僕の商品を買い占めるのをやめた。

代わりに、毎日違う手作りのお弁当を持ってきてくれるようになった。

「今日は唐揚げ弁当風にしてみました」

「美味しそう!」

「昨日は拓也様がメロンパンを食べていたので、メロンパンを作ってみました」

「手作りのメロンパン?すごいね」

でも、食べてみると少し変だった。

「この味…なんか神々しい」

「え?」

「すごく美味しいんだけど、なんか普通の食材じゃない気がする」

「そ、そんなことないです!普通の材料です!」

慌てて否定する有美さんだったが、後でわかったことには、アンブロシア(神々の食べ物)を少し混ぜていたらしい。

「有美さんって、本当に普通の女の子?」

「え?」

「なんか、色々と規格外だよね」

「そんなことないです!とても普通です!」

でも、その時空から声が聞こえた。

「姉上、もう正体を明かしたらどうですか?」

例の金髪の青年だった。

「きゃー!アポロン!」

「アポロン?」

「あ、いえ!弟の名前です!」

「弟さんなんだ。でも、なんで空に?」

「え?空?どこに?」

有美さんは必死に空を見上げないようにしていた。

「あそこに…」

「何も見えませんよ?拓也様の見間違いです!」

でも、アポロンは容赦なく続けた。

「いい加減に告白したらどうですか?このままだと、父上に怒られますよ」

「うるさい!」

有美さんが空に向かって叫んだ。

「え?有美さん、誰と話してるの?」

「あ、えーっと…独り言です!」

その時、コンビニの商品棚が突然光り始めた。

「なにこれ?」

見ると、僕の好きな商品だけが光っている。

「あ、あー!」

有美さんが慌てて手をかざすと、光は収まった。

「今のは?」

「電気の故障です!」

「そうかな…」

でも、確実に言えることがあった。

有美さんは、絶対に普通の女の子じゃない。

でも、それでも僕は有美さんといると楽しかった。

謎だらけだけど、一生懸命で、可愛くて、優しい有美さんが好きになっていた。

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