『ストーカーが女神で、まさかのアルテミス様!』
漣
第1話 謎の美少女と動物パレード
僕の名前は田中拓也。どこにでもいる普通の高校二年生だ。
強いて言えば、動物が好きなことくらいが特徴だろうか。犬も猫も、リスも鳥も、とにかく動物を見ると放っておけない性格らしい。母親からは「拓也は優しすぎる」とよく言われている。
その日も、いつものように学校からの帰り道で、神社の裏で小さな鳴き声を聞いた。
「ピー、ピー…」
見ると、茶色い小さな鳥が翼を怪我して羽ばたけずにいる。
「大丈夫?」
僕は慎重に鳥を手に取り、持っていたハンカチで翼を優しく包んだ。幸い、傷は浅そうだ。
「とりあえず、動物病院に連れて行こう」
そう呟いた時だった。
「まあ、なんて優しい方なのでしょう」
振り返ると、見たことのない美少女が立っていた。
銀色の髪が月光のように輝き、澄んだ青い瞳は夜空よりも深い。和服…いや、何か古代ギリシャの衣装のような白い布を身にまとい、まるで絵画から抜け出してきたような美しさだった。
「え、あの…」
「その子は私の大切な使いなのです。助けてくださって、ありがとうございます」
美少女は僕の手から鳥を受け取ると、そっと撫でた。すると、あれほど弱っていた鳥が元気に羽ばたき始めた。
「え?治っちゃった?」
「ええ。私は…動物を癒すのが得意なんです」
美少女は微笑みながら鳥を空に放った。鳥は一度僕の周りを飛び回ってから、夜空に消えていった。
「君は?」
「私は…アル…」
「アル?」
「あ、いえ!あるみ!有美です!」
明らかに取り繕った感じだったが、美しい人だったので僕は特に気にしなかった。
「僕は田中拓也。よろしく、有美さん」
「た、拓也様…」
「様って、そんな敬語使わなくても」
「でも、あなたは私の…」
「え?」
「い、いえ!何でもありません!」
有美さんは顔を真っ赤にして、慌てて手をぶんぶん振った。
「それでは、私はこれで!」
「あ、待って!」
だが、有美さんは月明かりの中に消えてしまった。文字通り、本当に消えてしまったのだ。
「…幻だったのかな?」
首を傾げながら家路についた僕だったが、翌日から妙なことが起き始めた。
まず、通学路で異常に動物に出会うようになった。
「おはよう、リスさん」
電柱にリス。
「おはよう、鳩さんたち」
歩道に鳩の群れ。
「おはよう…って、なんで鹿?」
住宅街のど真ん中に鹿。
しかも、みんな僕を見つめている。じーっと。
「気のせいだよね…」
そう自分に言い聞かせながら学校に向かうと、今度は空から鳥たちが僕の頭上を飛んでいく。まるで護衛のように。
「拓也、お前の周りなんか動物多くない?」
親友の佐藤が不思議そうに言った。
「そう?気のせいじゃない?」
「いや、明らかに異常だって。お前、ドリトル先生にでもなったの?」
確かに、最近動物たちの行動が変だった。でも、害があるわけじゃないし、動物好きの僕にとっては嬉しいことでもある。
問題は、その夜だった。
窓際で宿題をしていると、なんとなく視線を感じた。
カーテンを開けると、向かいのマンションの屋上に人影が見えた。
月明かりに照らされたシルエットは…
「有美さん?」
だが、目を擦って再び見ると、もう誰もいなかった。
「まさかね…」
でも、なぜか胸の奥が温かくなった。
翌日も、その次の日も、動物たちは僕の周りに集まり続けた。そして、どこか遠くから見つめる視線を感じ続けた。
まだこの時の僕は知らなかった。
自分が、神話の中でも最も高貴で手の届かない存在である月と狩猟の女神アルテミスに、ロックオンされてしまったことを。
そして、これから始まる、とんでもない日常の変化を。
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