【ハ】 桃に気づかない
●【ハ】 桃に気づかない
おばあさんは 桃に気づきませんでした。
なぜなら おばあさんは
洗たくをしながら
歌を 熱唱していたからです。
大きな桃が 流れてきたタイミングは
歌が いちばん盛り上がる
サビの部分だったのです。
「ヤーヤーヤーヤー ヤヤーヤー
オー イェー」
大きな桃は おばあさんに気づかれることなく
どんぶらこ~ どんぶらこ~と
流れていってしまいました。
…『【ハ・1】 流されて、桃』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・1】 流されて、桃
大きな桃は
どんぶらこ~ どんぶらこ~と
流れていきました。
すると 川の行く先が
三つに 分かれていました。
大きな桃は……
1
まっすぐ流れていきました。
…『【ハ・2】 まっすぐ、どんぶらこ』にすすむ
2
右へと流れていきました。
…『【ハ・3】 右へ、どんぶらこ』にすすむ
3
左へと流れていきました。
…『【ハ・4】 左へ、どんぶらこ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・2】 まっすぐ、どんぶらこ
大きな桃は
川を まっすぐに
どんぶらこ~ どんぶらこ~と
流れていきました。
すると 川で魚釣りをしていた
南の村の おばあさんが
桃に気づきました。
「あら まあ
大きな桃だこと」
大きくて みずみずしくて
とても美味しそうな桃です。
おばあさんは おじいさんと
一緒に 食べようと
桃をお家へ 持って帰りました。
…『【ハ・5】 桃の中から飛び出した』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・3】 右へ、どんぶらこ
大きな桃は
川の支流から はずれて
右の方へと
どんぶらこ~ どんぶらこ~と
流れていきました。
それから 大きな桃は
七日七晩 流され続け
そして 湖へと 流れ着きました。
大きな桃は
静かな湖の上に
ぷかぷかと浮かびながら
漂っていました。
すると シジミ獲りをしていた
湖畔の村の おばあさんが
大きな桃に 気づきました。
「なんじゃあ こりゃ!
こんな でっけぇ桃は
見たことねぇっぺな。
じぃさまに見せたら
きっと びっくらこいて
腰 抜かしちまうに
違いねぇっぺよ!」
おばあさんは
おじいさんを おどろかせたくて
大きな桃を 持って帰ることにしました。
…『【ハ・6】 どっきり大作戦』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・4】 左へ、どんぶらこ
大きな桃は
川の支流から はずれて
左の方へと
どんぶらこ~ どんぶらこ~と
流れていきました。
それから どれくらいの日々が
経ったでしょう。
大きな桃は
ついに 川から海へと 流れ着きました。
大きな桃は
波間に浮かんで
どんぶらこ~ どんぶらこ~と
沖へ 沖へと 流れていきました。
すると 大きな桃は
ある島に たどり着きました。
…『【ハ・7】 たどり着いて、島』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・5】 桃の中から飛び出した
その夜 おじいさんと おばあさんは
大きな桃を切ってみました。
すると 桃の中から
飛び出したのは……
1
女の子でした。
…『【ハ・8】 桃から生まれた女の子』にすすむ
2
金銀財宝でした。
…『【ハ・9】 桃から金銀財宝』にすすむ
3
スマートフォンでした。
…『【ハ・10】 桃からスマホ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・6】 どっきり大作戦
「な なんじゃ こりゃあ!」
おじいさんは お家に帰るなり
大きな桃を見つけて
おどろいて 腰を抜かしました。
おばあさんの作戦は 大成功しました。
ひとしきり おどろいたあと
おじいさんと おばあさんは
桃を切ってみることにしました。
半分に切ってみると
なんとも みずみずしくて
美味しそうな桃です。
おじいさんと おばあさんは
桃を 半分ずつ 食べました。
かなりの大きさだったので
食べ終わったときには
もう お腹は パンパンでした。
二人とも
満腹すぎて 一歩も動けず
そのまま 眠ってしまいました。
そして 目が覚めると……
…『【ネ】 目覚めると…』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・7】 たどり着いて、島
大きな桃が
たどり着いた島は
なんと 鬼ヶ島でした。
大きな桃を 発見したのは
下っ端の 鬼でした。
下っ端の鬼は
毎日 先輩たちの 食べ残ししか
食べさせて もらえていなかったので
いつも空腹でした。
なので 大きな桃をみつけたとき
独り占めして 食べてやる! と
思いました。
下っ端の鬼は
誰にも みつからないように
大きな桃を 虎柄のパンツで隠して
自分の家へ 帰りました。
下っ端の鬼の家は
鬼ヶ島の いちばん はじっこにありました。
そのおかげで
大きな桃を こっそり持ち帰っても
他の鬼たちに あやしまれることは
ありませんでした。
下っ端の鬼は
ヨダレを たらしながら
桃を切りました。
すると 桃の中から
元気な男の子が 飛び出しました。
下っ端の鬼は
おどろきすぎて 尻もちをつきました。
…『【ナ】 下っ端鬼の苦悩』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・8】 桃から生まれた女の子
桃の中から 飛び出したのは
なんと 女の子でした。
おじいさんと おばあさんは
子宝に恵まれませんでしたので
「これは 天からの授かりものだ」
と 女の子を育てることにしました。
女の子の名前は
桃姫 に決めました。
桃姫は すくすくと育って
村でも評判の 美少女になりました。
ある日 桃姫は
おじいさんと おばあさんに 言いました。
1
「鬼退治に いってまいります」
…『【ハ・11】 桃姫、鬼退治へ』にすすむ
2
「月へ 帰ります」
…『【ハ・12】 桃姫、月へ』にすすむ
3
「アイドルに なりたい」
…『【ハ・13】 桃姫、アイドルへ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・9】 桃から金銀財宝
桃の中から 飛び出したのは
なんと 目がくらむほどの
金銀財宝でした。
金銀財宝からは
なんだか とても甘美な香りが
していましたが
二人は 興奮しすぎていて
そのことに 気づきませんでした。
おじいさんは
すぐに 窓に駆け寄り
誰も 近くにいないことを確かめてから
雨戸を 閉じました。
玄関も 同様に
誰も 近くにいないことを確かめてから
鍵をかけました。
おじいさんは 声をひそめて言いました。
「ばあさん いいかい。
このことは 誰にも話しちゃいけないぞ。
わしと ばあさんだけの 秘密だ。
これから 三ヶ月の間
この金銀財宝は 床下に隠す」
「三ヶ月も?
今すぐ 使ってしまえば
いいじゃありませんか?」
「いいかい ばあさん。
今 わしらが
こんな大金を使ったら
すぐ 噂になる。
そしたら
この金銀財宝の 本当の持ち主に
誰が拾ったのか
気づかれてしまうに違いない。
だから 三ヶ月待つんじゃ。
三ヶ月経って
本当の持ち主が
探すのを諦めた頃に
わしらは これを使うんじゃ。
三ヶ月後
都に 屋敷を構えて
贅沢三昧な 老後を楽しもう。
だから よいな?
ぜったいに 誰にも
話しちゃいけんぞ」
「わ わかりました……」
そうして おじいさんと おばあさんは
床下に 穴を掘り
金銀財宝を 竹でできた箱に入れて
土の中に隠しました。
…『【ラ】 床下の秘密』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・10】 桃からスマホ
桃の中から 飛び出したのは
なんと 一台の スマートフォンでした。
おじいさんと おばあさんは
スマホを 見たことも 聞いたことも
ありませんでしたので
それがなんなのか
さっぱり わかりませんでした。
恐る恐る 手に取ってみると
スマホは 自動的に起動しました。
起動したところで
おじいさんと おばあさんには
なにを どうしたらいいのか わかりません。
それでも おじいさんと おばあさんは
スマホが気になって
いじり続けました。
――三日後
おじいさんは スマホを
すっかり 使いこなしていました。
もちろん これが なんなのかは
いまだに わかっていません。
スマートフォンという名称すら
わかっていません。
でも おじいさんは
スマホを じょうずに使いこなし
いろんなゲームに ハマりました。
そのせいで おじいさんは
山へ 柴刈りへ
行かなくなってしまいました。
おばあさんはというと
スマホに ハマらなかったわけではなく
ただ単に おじいさんに貸してもらえず
いじりたくても いじれなかったのです。
おばあさんは スマホばかり いじっている
おじいさんを 叱りました。
「うるせぇな!
今 いいとこなんだよ!
ばばぁは 洗たくでも 行ってろ!」
スマホを いじり出してから
おじいさんの性格は
悪くなる一方でした。
おばあさんは 泣きながら
川へ 洗たくに行きました。
涙をぬぐいながら
川で 洗たくをしていると
どんぶらこ~ どんぶらこ~と
また大きな桃が 流れてきました。
おばあさんは 大きな桃を ひろうと
その場で 割ってみました。
すると 中から
前とまったく同じ スマートフォンが
出てきました。
おばあさんは 大喜びして
急いで お家に帰りました。
おじいさんに スマホを見せると
「ふうん よかったじゃん」
とだけ 言いました。
おばあさんは
すぐに スマホを いじり始め
そして あっという間に
使いこなせるようになりました。
もちろん これがなんなのか
どういう仕組みで動いているのかなど
なんにもわかっていません。
それでも
やっぱり おばあさんも
スマホの虜になってしまったのでした。
――一ヶ月後
家の中は すっかり荒れ果て
おじいさんと おばあさんは
ガリガリに痩せこけていました。
なにも食べず 掃除もせずに
スマホだけを いじり続けていたからです。
おじいさんも おばあさんも
未だに これがなんなのか
なんで動いているのか
どういう仕組みなのか
まったく なにも知りません。
知らないのに
二人は すっかり ハマってしまって
抜け出せなくなってしまったのです。
その後 二人がどうなったのかは
誰にも わかりません。
スマホがなければ
こんなことになんて
ならなかったはずなのに……
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・11】 桃姫、鬼退治へ
桃姫は
おじいさんと おばあさんに
「鬼退治に いってきます」
と 言いました。
おじいさんと おばあさんは
こんな日がくるような気が
ずっとしていました。
それでも
可愛い 桃姫を
鬼退治へと送り出すのは
不安で しかたがありません。
そこで おじいさんと おばあさんは……
1
護衛を付けることにしました。
…『【ハ・14】 桃姫の護衛隊』にすすむ
2
一緒に行くことにしました。
…『【ハ・15】 桃姫に同行』にすすむ
3
下調べをすることにしました。
…『【ハ・16】 旅路の事前調査』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・12】 桃姫、月へ
桃姫は
おじいさんと おばあさんに
「月へ 帰ります」
と 言いました。
「実は わたしの故郷は
あの夜空に浮かぶ 月なんです。
我々 月の民は
地球の きれいな水と 空気の中で
生まれるのです。
そして 成長したら
月へ 帰らなくてはならないのです。
ええ そうです。
お二人も ご存じの かぐや姫は
いとこの お姉さんです」
桃姫は そこまで話して
あることに気づきました。
おじいさんと おばあさんが
まったく おどろいていなかったのです。
「どうやら 信じられないようですね……
そうですよね
こんな突拍子もない話
信じられないですよね。
疑るのも 当然です……」
「いやいや 違うんじゃ 桃姫。
わしらが 桃姫のことを
疑るわけがなかろう」
「それじゃあ どうして
そんなにも無反応なんですか?」
「さすがに 月の人だとは
思わんかったが
なんせ 桃から生まれているからねぇ。
今さら なにを言われても
おどろきはせんよ」
おばあさんも 笑顔で
うなずきました。
桃姫は
こんなにも 心が広くて 大らかな
二人にひろっていただいて
本当によかった…… と
改めて思いました。
桃姫が 月へ帰るのは
次の 満月の晩です。
その前に 三人で
おでかけをすることにしました。
翌日 桃姫は
おばあさんと 一緒に
おばあさんの 得意料理で
桃姫の 大好物である
きびだんごを 作りました。
桃姫たちが
きびだんごを持って 向かったのは
おじいさんの お気に入りの
山の上でした。
そこは 眺めがよく
三人で暮らした家も
駆け回って 遊んだ草原も
おばあさんが 洗たくをする川も
すべてが見えました。
桃姫は すべてを目に焼き付けようと
しばらくの間 景色を眺めました。
そのときです。
背後で 雷鳴が轟きました。
振り返ると
数匹の鬼が 立っていました。
…『【ム】 雷と鬼と月の秘密』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・13】 桃姫、アイドルへ
桃姫は
おじいさんと おばあさんに
「わたし……
アイドルに なりたいんです」
と 言いました。
桃姫は 反対されることを
覚悟していました。
しかし おじいさんと おばあさんは
桃姫が いつか そう言うだろうと
気づいていました。
桃姫が アイドル好きであることも
ひそかに 神社の裏で
歌や ダンスの練習をしていることも
二人は 知っていたのです。
「わしらは いつでも
桃姫の 味方だよ。
だから がんばんなさい」
おじいさんと おばあさんの優しさに
桃姫は 涙が あふれて
止まりませんでした。
「わたし がんばる。
ぜったいに アイドルで
いちばんに なってみせるからね」
こうして 桃姫は
アイドルを目指して
都へと 上京することになりました。
…『【ハ・41】 桃姫、アイドルへの道』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・14】 桃姫の護衛隊
鬼退治へと向かう 桃姫のために
おじいさんと おばあさんは
護衛隊を 雇うことにしました。
さまざまな捜査で 大活躍した
元警察犬と
かつて 有名なお坊さんと
天竺まで 旅をしたことがある
めっぽう強い猿と
空軍の偵察隊員として
多くの 武勲をあげている 雉が
桃姫の護衛隊として
鬼退治に 同行することになりました。
こうして 桃姫は
人々を苦しめる 鬼どもを退治すべく
最強の護衛たちと共に
鬼ヶ島へと 向かったのでした。
…『【ハ・17】 いざ、鬼ヶ島へ』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・15】 桃姫に同行
桃姫のことが 心配で しかたのない
おじいさんと おばあさんは
一緒に 鬼退治へ 行くことにしました。
もちろん 桃姫は 反対しました。
しかし おじいさんと おばあさんは
すっかり 準備を整えて
行く気 満々です。
桃姫は……
1
同行を認める
…『【ハ・18】 桃姫たちの旅立ち』にすすむ
2
同行は認めない
…『【ク】 桃姫だけの旅立ち』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・16】 旅路の事前調査
桃姫のことが 心配で仕方のない
おじいさんと おばあさんは
これから 桃姫が行くことになる旅路を
事前に下調べすることにしました。
桃姫には 二人が帰ってくるまで
家を出てはならないと言って
下調べの旅に 出発しました。
道中のこと。
お腹を空かせた
犬と 猿と 雉がいたので
おばあさんは 持参した きびだんごを
分けてあげました。
その優しさに感激した 犬たちは
下調べの旅に お供として
同行することになりました。
おじいさんと おばあさんは
桃姫が 旅の途中で 立ち寄れそうな
お茶屋さんを見つけては
そのお店の 人気ナンバーワンの商品を
調査したり
桃姫が 泊まることになるであろう 宿が
女性一人で 泊っても安全かどうか
実際に宿泊して 調査したり
各地で評判のグルメを
実際に食べて 調査したり……
あれやこれやを
調査という名目で 満喫しながら
下調べの旅を 続けました。
そして 気づけば
おじいさんと おばあさんと
お供の犬と 猿と 雉は
鬼ヶ島へ たどり着いていました。
いよいよ
最終調査である
『鬼の強さの確認調査』の
開始です。
「何者だ!」
鬼たちが 襲いかかってきました。
おじいさんと おばあさんは
「これは下調べなので
本気で戦う必要はありません。
軽く相手をしていただければ
それで十分ですので」
と 言ったのですが
鬼たちは 聞こうとしてくれません。
おじいさんと おばあさんは
しかたなく 鬼たちと 戦いました。
おじいさんは 山で 柴刈りをしていて
足腰が とてつもなく 鍛えられていました。
おばあさんも 川で 洗たくをしていて
腕力が ものすごく 鍛えられていました。
さらに お供として 同行していた
犬と 猿と 雉も
多くの修羅場を潜り抜けてきた
猛者たちだったので
めっちゃ 強かったのです。
おじいさんと おばあさんと お供たちは
襲いかかってくる 鬼どもを
次から次へと 倒していきました。
そして 気づけば
鬼のボスまで
倒してしまっていたのです。
おじいさんも おばあさんも
あまり目が良くなく
耳も 遠くなっていたので
最後に戦った相手が
鬼のボスだったとは
気づかなかったのです。
鬼どもは 白旗をあげて
奪った 金銀財宝を すべて差し出して
鬼ヶ島から 逃げていきました。
こうして
おじいさんと おばあさんと お供たちは
鬼に勝利し 金銀財宝を持って
家へ帰ったのでした。
桃姫は
「なんで 下調べに行って
鬼退治まで してきちゃうのよ!」
と言って 怒りました。
でも おじいさんと おばあさんは
可愛い可愛い 桃姫が
危険な旅に 行かなくて済んだので
ホッと 一安心しましたとさ。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・17】 いざ、鬼ヶ島へ
桃姫は 護衛隊と共に
鬼ヶ島へと 向かいました。
しばらく進むと
道が 二手に分かれていました。
雉が 上空から
二つの道を 調べてくれました。
「どちらの道を通っても
同じ海岸に たどり着くよ。
ただし
右は 近道だけど 険しい道で
左は 遠回りだけど 安全な道。
どっちにする?」
桃姫が 選んだのは……
1
右の道
…『【ハ・19】 近いけど険しい道』にすすむ
2
左の道
…『【ハ・20】 遠回りだけど安全な道』にすすむ
3
まっすぐすすむ
…『【ハ・21】 いざ、直進!』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・18】 桃姫たちの旅立ち
桃姫は
おじいさん おばあさんと 一緒に
鬼退治へと 出発しました。
桃姫は
さくさくと歩きたかったのですが
おじいさんと おばあさんは
歩くのが とてもゆっくりです。
それに きれいな花が咲いていたり
変わった 鳥の鳴き声が
聞こえてきたりすると
そのたびに 立ち止まりました。
「ちょっと! いい加減にして!
わたしは 一刻もはやく
鬼退治に行きたいの!
そんなに 立ち止まるのなら
わたしは 一人で行きますからね!」
桃姫は怒って
早歩きで 行ってしまいました。
おじいさんと おばあさんは
慌てて 桃姫のあとを 追いました。
それから しばらくの間
おじいさんと おばあさんは
ぜぇぜぇと 息を切らしながらも
桃姫の 早歩きに ついてきました。
桃姫は ちょっと言い過ぎたかな と思い
歩く速度を 緩めました。
そして 休憩を 提案しようと思って
振り返ると
そこに おじいさんと おばあさんの姿は
ありませんでした。
慌てて引き返すと
二人は 知らない誰かと
立ち話をしていました。
さすがの桃姫も
ついに限界を超えました。
「もう いい!
わたしは 一人で鬼退治にいくから!」
桃姫は おじいさんと おばあさんを置いて
一人で 先へと進みました。
しばらくすると 遠くから
おじいさんと おばあさんが
桃姫の名を 呼ぶ声が聞こえてきました。
しかし 桃姫は無視して
歩き続けました。
すると 馬が駆けてくる音が
背後から 聞こえてきました。
馬は 桃姫の前で 止まりました。
馬に乗っていたのは
先ほどの見知らぬ男性と
おじいさんと おばあさんでした。
「桃姫や 待っておくれ。
今さっき そこで 知り合いに会ってね。
鬼退治に行くことを話したら
みんなで 協力すると言ってくれたんだよ」
おじいさんたちが 立ち話をしていたのは
かつて おじいさんが 土地を タダで譲った
牧場主だったのです。
牧場主は
牧場で働く 屈強な男たち 五人と
大きな角の牛 十八頭
足の速い 牧羊犬 三匹
鋭いくちばしの 雄鶏 二十羽を
鬼退治の お供として引き連れてきました。
桃姫は 迷惑ではないかと
とても心配しましたが
同時に うれしくもありました。
こうして 桃姫たちの一団は
鬼ヶ島へと 乗り込むことになったのです。
そして 鬼ヶ島へと 到着したとき
桃姫は……
1
右足から 降り立ちました。
…『【ハ・25】 右足から降り立った』にすすむ
2
両足で 降り立ちました。
…『【ハ・26】 両足で降り立った』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・19】 近いけど険しい道
桃姫は 近いけれど 険しい道を
選ぶことにしました。
それは 近道をしたいという
理由ではなく
一刻も早く 鬼退治を成し遂げて
みんなに 安心して暮らしてほしい
という 想いからでした。
桃姫たちは
切り立った崖を 素手で登ったり
片足ぶんの 足場しかない道を通ったり
滝の上にある 濡れた岩場を通ったりして
目的の海岸へ 着きました。
そして 桃姫たちは
漁師さんに 舟を借りて
鬼ヶ島へと向かいました。
…『【ハ・27】 鬼ヶ島、上陸』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・20】 遠回りだけど安全な道
桃姫は 遠回りだけど 安全な道を
選ぶことにしました。
それは
鬼たちとの戦いのために
体力を温存しておきたい という
想いからでした。
こちらの道は ほとんど 平坦で
のんびりと 歩くことができました。
そのときです。
「止まれ!」
突然 武装した一団が 現れました。
一団は 男たちばかりで
見るからに 荒くれ者どもといった
格好をしていました。
「おまえたち 鬼退治へ行こうと
しているらしいが 本当か?」
「ええ 本当よ。
それが なにか?」
桃姫が 答えると
男たちは ばかにしたように
大笑いしました。
「おまえみたいな お嬢ちゃんに
鬼どもを 倒せるわけがねぇだろ!
鬼どもは おれたち
『モモタロー一座』が 倒す!
そして 鬼どもが集めた 金銀財宝を
まるっと全部 いただくぜ!
お嬢ちゃんは ケガして
お嫁に行けなくなる前に
さっさと おうちに帰んな!」
男どもは ガハガハ笑いながら
先へと 進んでいきました。
桃姫は ばかにされたことが悔しくて
その場に 立ち尽くしてしまいました。
「……桃姫さん
どうやら あいつらが
鬼退治を してくれるらしい。
我々が出る幕は なさそうだし
このまま 引き返すのも
悪い話じゃないと思うよ」
と 犬が言いました。
桃姫は……
1
家へ 帰ることにしました。
…『【ハ・22】 鬼退治をやめた』にすすむ
2
追いかけました。
…『【ハ・23】 追撃』にすすむ
3
訴えることにしました。
…『【ハ・24】 法的処置』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・21】 いざ、直進!
桃姫は まっすぐ進むことにしました。
犬たちは そこは道ないよ! と
慌てて言いました。
すると 桃姫は
「ここ 見て。
ほら ケモノ道があるよ。
どこかに続いてるはずだから
行ってみよう!」
桃姫は 木々や草をかきわけて
ぐんぐんと 進んでいきました。
護衛隊の 猿と 雉は
ご主人さまの命令だからな……
と ぼやきながら
桃姫のあとに 続きました。
犬はというと
「たしかに これはケモノ道だが
ケモノの匂いが まったくしない……
いったい どんなケモノが通った道
なんだろうか……」
と 嫌な予感を覚えながら
桃姫たちのあとに 続きました。
…『【ハ・40】 謎のケモノ道』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・22】 鬼退治をやめた
桃姫は 鬼退治へ行くことをやめて
家へ帰ることにしました。
帰路の途中 護衛隊の三匹は
「鬼退治へ 行かないのなら
契約は ここまでです」
と言って それぞれ 家へと
帰っていきました。
桃姫は 一人で とぼとぼと歩いて
家へ向かいました。
そのときです。
「きゃー!」
女性の叫び声が 聞こえてきました。
すると 山賊どもが
女性を担いで 現れました。
桃姫は
山賊どもの前に 立ちはだかりました。
「待て! その女性を放しなさい!」
「なんだ てめぇは?
おれらは 泣く子も黙る 恐怖の山賊団
『突撃! イノシシ団!』だぞ!」
「おい 見ろよ!
こいつ 女のくせして
刀なんか 持ってやがるぜ!」
「生意気だな。
だが よく見たら
こいつは なかなかのタマだぞ。
うまくいきゃ 高く売れそうだ。
よし こいつも一緒に 連れてくぞ」
山賊どもは
桃姫に 襲いかかりました。
――わずか 三十秒後
山賊どもは 全員
地面に突っ伏して
気を失っていました。
桃姫は 鬼退治をしようと
していただけあって
めっちゃくちゃに強かったのです。
桃姫は 助けた女性を
村へ 送り届けてから
再び 家へと歩き出しました。
桃姫は なんだか不思議な気持ちでした。
もし
あのまま 鬼ヶ島へ行っていたら
あの女性を助けることは
できなかったでしょう。
でも モモタロー一座に出会ったことで
桃姫は 鬼退治を諦め
女性を助けることができたのです。
最悪な出来事も
最高の結末に
繋がっていることがあるのだと
桃姫は 知ることができました。
鬼退治は できなかったけど
女性を 助けることができたし
とても大切なことを
学ぶこともできたと思いながら
桃姫は おじいさんと おばあさんの待つ
家へと 帰ったのでした。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・23】 追撃
桃姫は モモタロー一座を 追いかけました。
そして 追いつくと
モモタローの背中に
強烈な ドロップキックを くらわせました。
「うぎゃあっ!」
無様に倒れた モモタローの前に
桃姫は 仁王立ちして 叫びました。
「おい てめぇ!
誰が お嬢ちゃんだって?
誰には 鬼も 倒せねぇって?
もいっぺん 言ってみろ!」
それから
桃姫たちと モモタロー一座の
大乱闘が 始まりました。
数では モモタロー一座が
圧倒していましたが
個々の強さでは 桃姫たちが
完全に 圧倒していました。
大乱闘は ものの数分で
終わりました。
もちろん 桃姫たちの圧勝です。
桃姫たちは 身体についた 埃を払って
その場を あとにしました。
しばらく歩くと 海岸へ 出ました。
海の向こうに 鬼ヶ島が見えます。
桃姫は 改めて 気が引き締まる
思いがしました。
そのときです。
「姉さ~ん!
桃姫の姉さ~ん!」
やってきたのは
モモタロー一座でした。
「おれたち 反省したっす!
もう二度と
生意気なことは言わないっす!
だから おれたちを
桃姫の姉さんの一味に
入れてほしいっす!
姉さんと一緒に
鬼どもと戦わせてほしいっす!」
桃姫は ぜったいに嫌だと思いましたが
あらゆる修羅場を経験してきた
護衛隊の犬と 猿と 雉が
「鬼の数を 完全に把握できていない以上
こちらも 頭数は いたほうがいいですよ」
「こいつらのことは 嫌いだけど
いれば そこそこ役に立ちそうだよ」
と 言うので
お供に くわえることになりました。
こうして 桃姫は
最強の護衛隊の犬と 猿と 雉と
モモタロー一座を お供に従えて
鬼ヶ島へ 向かいました。
…『【ハ・35】 決戦の地、鬼ヶ島』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・24】 法的処置
桃姫は モモタロー一座を
訴えることにしました。
罪状は
『性的な差別発言により
一個人の心に深い傷を負わせた』
ことによる 罪です。
実は 桃姫は
こんなこともあろうかと
小型のレコーダーを隠し持っていたのです。
なので モモタローが 桃姫に言った暴言は
すべて録音してありました。
モモタロー一座は すぐに起訴され
出廷命令が下されました。
モモタローは 裁判所へ 出廷するなり
「おれたちは これから
鬼退治に行こうとしているんだぞ?
つまりは 英雄ってことだ。
英雄を訴えるだなんて
どういう了見だ!」
と 文句を言いました。
しかし 威張っていられるのも
最初のうちだけでした。
モモタローの 性的差別発言が
大音量で 再生されると
裁判所内の空気は 重くなりました。
――翌日
判決が 言い渡されました。
「モモタロー 及び その一座は
全員まとめて 有罪。
禁固30年の罪に処す」
この判決には
『女性蔑視をするような奴に
英雄ヅラしてほしくない!』
などの世間の声が
大きく反映されていました。
今回の判決を受けて
桃姫のもとには
夫の暴力に苦しむ妻や
上司からのセクハラに悩む女性など
女性差別で悩み 苦しむ人たちから
裁判を起こすための相談依頼が
舞い込むようになりました。
「鬼退治は わたしじゃなくても
できることだけど
世の女性たちを助けるのは
わたしにしか できないことだわ」
桃姫は 鬼退治ではなく
女性のために戦う道を選ぶことにしました。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・25】 右足から降り立った
桃姫は 鬼ヶ島へ上陸するとき
右足から 降り立ちました。
侵入者に気づいた鬼たちが
いっせいに駆けてきます。
桃姫たちも
鬼たちに向かっていきました。
激しい戦いが 始まりました。
桃姫は お供たちを従えて
鬼どもを 次から次へと 斬りながら
鬼ヶ島の中心部へと 向かいました。
――一方 その頃
おじいさんと おばあさんは
舟で隠れていました。
戦闘には参加しないで
ずっと隠れていることが
桃姫との約束だったからです。
そのとき。
一頭のモンシロチョウが
どこからともなく 飛んできました。
まるで 桃姫の肌のように
真っ白な モンシロチョウを見ていると
その純白の羽が
じんわりと 赤く染まり
しまいには 真っ赤なチョウになって
どこかへ 飛んでいきました。
おじいさんは 妙な胸騒ぎを覚えました。
居ても立っても居られなくなり
おじいさんは おばあさんを置いて
戦乱の鬼ヶ島へと
駆け込んでいきました――
桃姫は
いよいよ 鬼ヶ島の中心部へと
やってきました。
そこにいたのは
通常の鬼より
三倍以上も大きな
鬼の王でした。
「ほう……
我が玉座へ 勝手に入ってくるとは
いい度胸ではないか。
特別に 名を聞いてやろう」
「わたしは
桃から生まれた 桃姫!
鬼の王よ!
わたしと……
1
「勝負しなさい!」
…『【ハ・28】 桃姫 対 鬼の王』にすすむ
2
「話し合いなさい!」
…『【ハ・29】 鬼の王との話し合い』にすすむ
3
「クイズ対決しなさい!」
…『【ハ・30】 鬼ヶ島クイズ大会』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・26】 両足で降り立った
桃姫は 鬼ヶ島へ上陸するとき
両足で降り立ちました。
このとき 桃姫は 自分の足元を
まったく見ていませんでした。
足元には 海水で濡れた岩があり
ものすごく すべりやすく
なっていたのです。
そんな岩の上に 両足で着地した桃姫は
着地と同時に 足を滑らせました。
それは 本当に
ほんの一瞬の 出来事でした。
着地と同時に 足をすべらせた桃姫は
そのまま 転倒して 舟の縁に
後頭部を 強打してしまいました。
本当に
ほんの一瞬の 出来事すぎて
誰も すぐに理解することが
できませんでした。
桃姫は 死んでしまったのです。
おじいさんと おばあさんの
悲痛な叫び声が
鬼ヶ島中に 響き渡りました。
あまりにも 悲痛すぎる叫びに
鬼たちも足を止めました。
戦いは すんでのところで
起こりませんでした。
桃姫の 不運な死を契機に
鬼たちは 人間と話し合うことに
なりました。
その仲介役を 買って出たのは
あの牧場主でした。
鬼たちは これまでの傍若無人を詫び
奪った金銀財宝を返しました。
さらに 鬼のボスは
「これからは 人間たちと協力し合って
生きていく」と 宣言したのでした。
きっかけは 桃姫の 非業の死でした。
しかし 桃姫のおかげで
無用な戦いが 起きることなく
人間にとっても 鬼にとっても
友好的で 平和な未来が
やってきたのでした。
そのため 桃姫は
平和の女神として 崇拝され
金の立像になりました。
桃姫の像は
鬼ヶ島の 中央に飾られています。
あれから 数百年が経ち
多くの人や鬼たちが
平和の女神である 桃姫の像に
手を合わせに 集まります。
たしかに 桃姫の死によって
この平和は訪れたと言えるでしょう。
ですが
もしも あのとき
桃姫が 足を滑らせなかったら
きっと 鬼ヶ島では
激しい戦いが起こり
鬼は 殲滅させられていたでしょう。
その未来世界では
桃姫は 鬼を退治した 英雄として
語られることになったでしょう。
歴史は いつも
結果でしか 語られません。
でも 歴史から 学ぶことはできます。
どんな未来を望むのか
過去から学びながら
しっかりと考えたいものです。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・27】 鬼ヶ島、上陸
桃姫と
護衛隊の犬 猿 雉は
いよいよ 鬼ヶ島へ上陸しました。
侵入者に気づいた鬼たちが
金棒を持って 襲いかかってきます。
鬼たちは 次から次へと
湧くように出てきました。
ですが 桃姫と 最強の護衛隊の
敵ではありませんでした。
――一時間後
桃姫たちは 鬼のボスを倒し
鬼退治を成し遂げたのでした。
目的を果たしたため
護衛隊の犬と 猿と 雉は
それぞれの家へと 帰っていきました。
桃姫も おじいさんと おばあさんの待つ
家へと 帰ることにしました。
帰りの道中
桃姫は 鬼の脅威が去ったことで
平和に 楽しく暮らす人々を
たくさん見かけました。
みんなの笑顔を見るたび
桃姫は 鬼退治をしてよかったと
心から 思うことができました。
桃姫は お土産を いっぱい持って
家の戸を 開けました。
「ただい……え?」
家の中には 誰もいませんでした。
家具なども すべてありません。
桃姫は 近所の人たちに
おじいさんと おばあさんのことを
聞いて回りました。
でも 誰も知りませんでした。
おじいさんと おばあさんは
いったい どこへ
行ってしまったのでしょう……
そのとき 護衛隊の一員だった
犬が やってきました。
「きっと こういうことだろうと
思っていたんだ」
「え…… どういうこと?」
「きみの
おじいさんと おばあさんからは
口止めをされていたんだが……
おれたちのような
一流の護衛を雇うには
それなりの金額が 必要なんだよ。
今回 おれたちは
いつも通りの金額を受け取り
そして きみの護衛をしていたんだ。
だけど……
きみの おじいさんと おばあさんは
お世辞にも 裕福だとは
言えなかっただろう?
だから ずっと気になっていたんだ。
おれたちを雇う お金は
どこから集めたんだろうって」
「そ それじゃあ
おじいさんと おばあさんは……」
「きっと 家も 土地も
そして 自分自身をも売ることで
お金を集めたんだろう」
「そんな……」
桃姫は なにも知りませんでした。
正義感とはいえ
自分のわがままで
鬼退治へ 行くと言ったのに
おじいさんと おばあさんに
とんでもない無理を させていたとは……
桃姫は その場で泣き崩れました。
犬は 桃姫が泣き止むまで
そばにいてくれました……
その後 桃姫は
おじいさんと おばあさんを
探す旅に出ました。
だけど 結局
見つけることはできませんでした。
現在 桃姫は
あの おじいさんと おばあさんと
暮らした家を買い取り
一人で暮らしています。
鬼の脅威が なくなった世界は
とても平和です。
でも この平和を手に入れるために
犠牲になった人たちもいたのです。
桃姫は 今も
おじいさんと おばあさんを想いながら
静かに暮らしているのでした。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・28】 桃姫 対 鬼の王
「鬼の王!
わたしと 勝負しなさい!」
「ガーッハッハッハッハッ!
小娘ごときが
鬼の王に戦いを挑むとは!
今年いちばん 面白いぞ!」
「さあ 勝負しなさい!」
「もう よい。
我は 笑い疲れた。
娘よ 笑わせてくれた礼に
命だけは 助けてやろう。
下がってよいぞ」
「そんなことを言って
本当は わたしが怖いのでしょう?
鬼の王とも あろう者が
こんなにも 臆病者だったとはね」
「……ほう。
よほど 我に殺されたいらしいな。
いいだろう。
その願い 叶えてくれる」
鬼の王は 牛よりも大きな金棒を
軽々と持ち上げました。
桃姫の お供たちや
鬼の手下たちが 見守る中
桃姫 対 鬼の王の
最後の戦いが 始まりました。
…『【ハ・31】 激戦の行方』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・29】 鬼の王との話し合い
「鬼の王!
わたしと 話し合いなさい!」
「話し合う? なぜ?」
「あなただって こんな戦いは
望んでいないはずよ。
だけど あなたたち 鬼が
我々 人間の暮らしを
おびやかし続ける以上
戦わざるを得ないわ。
でも 両者が共存しながらも
平和に暮らすための方法が
必ずあるはず。
その方法を 話し合いましょう」
「なるほど……
桃姫と言ったな。
ありがとう。
そう言ってくれる人間が 現れるのを
我はずっと 待っていたのだ」
そう言って
鬼の王は 桃姫の方へと
近づいてきました。
「我も ずっと考えていたのだ。
どうすれば ずっと平和に
暮らすことができるのだろう と」
「ああ よかった!
鬼の王なら 話が通じるに違いないと
思っていたんです。
では 話し合いを始める前に
一緒に 終戦を宣言して
外で続いている戦いを 終わらせましょう!」
「そうだな。
だが その前に……」
鬼の王は 隠し持っていた金棒を
桃姫に向けて 振り下ろしました。
「我らの平和のために
まずは 貴様を 消し去ってくれよう!」
桃姫は
完全に鬼の王を信じていたため
とっさに 逃げることが
できませんでした。
そのときです。
「桃姫っ!」
おじいさんが 桃姫に向かって
飛び込みました。
…『【ハ・32】 おじいさん』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・30】 鬼ヶ島クイズ大会
「鬼の王!
わたしと クイズで対決しなさい!」
「フッフッフッ。
桃姫 と言ったな。
貴様 わしのことを
しっかりと 調べてきたようだな」
「ええ もちろん。
鬼の王が 無類のクイズ好きということは
ばっちり 調査済みよ!」
「わしの クイズ熱を知った上で
戦いを挑んでくるとは 愚かな。
まあ よい。
貴様の度胸に免じて
この対決 受けて立とう」
こうして
鬼ヶ島の中心で
桃姫 対 鬼の王の クイズ大会が
開催されることになりました。
司会者 兼 出題者は
桃姫の おじいさんです。
実は おじいさんは
クイズの司会者 兼 出題者用の
国際ライセンスを持っていたのです。
「舟の中で 待っていたんじゃが
桃姫が クイズをする予感がして
飛び出してきたんじゃ」
おじいさんの
中立で公平な司会で
クイズ大会は 始まりました。
果たして
鬼ヶ島クイズ大会を
制したのは……
…『【ハ・33】 クイズ王』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・31】 激戦の行方
桃姫 対 鬼の王の戦いは
熾烈を極めました。
力で勝る 鬼の王に対し
桃姫は 華麗な身のこなしと
巧みな剣術で 応戦しました。
鬼の王は 攻撃が当たらないため
次第に 苛立っていきました。
まさに それこそが
桃姫の戦略だったのです。
鬼の王は 冷静さを完全に失い
力のままに 金棒を振り回しました。
桃姫は
金棒を避けると同時に
鬼の王を斬りました。
鬼の王は倒れ
そのまま 起き上がることは
ありませんでした。
勝利した桃姫は
鬼ヶ島の中心に
桃印の旗をたてました。
…『【ハ・34】 勝利のあとで』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・32】 おじいさん
「桃姫っ!」
おじいさんが 桃姫に向かって
飛び込みました。
ほんの一瞬の出来事でした。
おじいさんが 桃姫の体を押して
弾き飛ばした瞬間
鬼の王の金棒が
地面に叩きつけられました。
おじいさんは 桃姫を助けたことで
金棒に 叩き潰されてしまいました。
桃姫は 完全に
思考が停止してしまいました。
桃姫は 見たのです。
おじいさんが 桃姫を押し飛ばしたあとで
いつもの笑顔を 桃姫に向けていたのを。
「ちっ。
邪魔が入ったか。
次は はずさないぞ」
鬼の王は 再び 桃姫に向けて
金棒を振り下ろしました。
激しい音と共に
金棒は 地面を叩きました。
鬼の王は ニヤリと笑いながら
金棒を上げました。
しかし そこに潰れた桃姫は
いませんでした。
鬼の王は 慌てて周囲を見渡しました。
桃姫は いつの間にか
鬼の王の背後に立っていました。
その表情はうつろで
おじいさんを 目の前で失った衝撃から
まだ 立ち直れていないようでした。
鬼の王は 再度 桃姫に向けて
金棒を振り下ろしました。
しかし 今回も
桃姫には当たりませんでした。
桃姫は 目で追えないほどの速さで
移動していたのです。
そのとき 鬼の王は
桃姫が 持っている刀から
血が したたっていることに気づきました。
鬼の王の右腕が
ざっくりと 斬られていたのです。
鬼の王は 不気味な桃姫に 恐怖を覚え
その場から 逃げ出そうとしました。
しかし 不意に転んでしまいました。
見ると 両足が
ズタズタに 斬られていました。
鬼の王は 転んだのではなく
足を斬られて 歩けなかったのです。
倒れた鬼の王の目の前に
血で 赤く染まった刀を持つ
桃姫が うつろな表情で 立っていました。
「……許さない」
「ま 待ってくれ!
おれの財宝を 全部くれてやる!
だから――」
桃姫は いっさい ためらうことなく
鬼の王に とどめを刺しました。
こうして
鬼どもは すべて倒され
桃姫は 鬼退治を成し遂げたのでした。
桃姫は 多くの人から 感謝されました。
感謝の印として 都に豪邸をいただき
おばあさんと ふたりで
豊かな暮らしを 送れるように
なりました。
だけど 桃姫が 笑顔になることは
ありませんでした。
桃姫は
おじいさんが 死んだのは
自分のせいだと 責め続けました。
おばあさんが
そんなことはないよ と言っても
桃姫には 届きませんでした。
桃姫のおかげで
世界は平和になりました。
でも それ以降
桃姫が笑顔になることは
一度もありませんでした。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・33】 クイズ王
そして 同点のまま
最後のクイズになりました。
「第百問!
皿の真ん中に イチジクを置いたら
綺麗な花が咲きました。
それは どんな花?」
一秒にも満たない時間の中で
桃姫と 鬼の王は
頭をフル回転させました。
先に回答ボタンを押したのは
鬼の王でした。
「イチジクは 漢字で書くと
無花果……
よって 正解は
花など 咲かない!」
一瞬の静寂のあと
ブッブー という不正解音が
鳴り響きました。
そして 桃姫が
回答ボタンを押しました。
「皿の真ん中だから……
サ と ラの真ん中に
一字『ク』を 置くと……
正解は 『サクラ』!」
一生とも思えるほどの
長く短い沈黙のあと
会場内に 鳴り響いたのは……
ピンポーン!
正解音と共に
クラッカー砲が放たれ
会場内に 金色の花吹雪が舞いました。
「優勝は 桃姫!」
おじいさんが宣言すると
桃姫のお供たちも
鬼の手下どもも 一緒になって
大きな拍手を 送りました。
「桃姫……
我の完敗だ。
実に見事な
クイズバトルだった」
「あなたも 素晴らしい相手だったわ。
最後に 早押しで負けたときは
もうだめだって 思っちゃった」
「早押しで勝っても
正解しなければ 意味がない。
我は 再度 クイズの修行をする。
いつかまた 対戦してくれるか?」
「ええ もちろん!」
そして 敗北を認めた 鬼の王は
二度と 人間を襲わないと誓い
その証として
今までに奪った 金銀財宝を
すべて返還しました。
こうして 桃姫は
クイズによって 鬼退治を成し遂げ
世界に 平和をもたらしたのでした。
――その後
三年に一度 鬼ヶ島では
桃姫軍団 対 鬼軍団による
『鬼ヶ島クイズ大会』が
開かれるようになったそうです。
めでたし めでたし
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・34】 勝利のあとで
戦いは 終わりました。
桃姫は お供たちと共に
鬼たちが奪った 金銀財宝を持って
舟の待つ 海岸へと向かいました。
その途中 おじいさんが
駆けてくるのが見えました。
桃姫は おじいさんに向かって
笑顔で 手を振りました。
おじいさんは 桃姫の笑顔を見て
ホッと一安心し
手を振り返しました。
そのときです。
隠れていた 鬼の残党が
桃姫に 斬りかかりました。
突然のことに 桃姫は対応できず
斬られてしまいました。
鮮血が 宙を舞い
桃姫は 天を仰ぎながら
倒れました。
おじいさんは 慌てて駆け寄り
桃姫を 抱きかかえました。
「桃姫!
ああ わしが来てしまったせいで
桃姫が こんなことに……」
「おじいさん…… 悲しまないで。
わたしは 鬼を退治するために
やってきたんです。
わたしは 目的を果たしたのです。
これも すべては
おじいさんと おばあさんの
おかげです。
育ててくれて
本当に ありがとう――」
桃姫の体は 光に包まれ
そして 小さな 美しい桃になりました。
桃は 宙に浮かぶと
そのまま どこかへ飛んでいきました。
桃姫のおかげで 鬼は退治され
世界には 平和が訪れました。
おじいさんと おばあさんは
悲しみのうちに 家へと帰りました。
――一年後
おじいさんと おばあさんの
家の周りには
いつの間にか 桃の木が生え
美味しい桃が 実るようになりました。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・35】 決戦の地、鬼ヶ島
桃姫一行は
ついに 鬼ヶ島へやってきました。
不審者の侵入に 気づいた鬼どもが
四方八方から 襲いかかってきます。
桃姫は 先陣を切って
鬼どもに 斬りかかっていきました。
護衛隊の犬と 猿と 雉も
モモタロー一座の面々も
桃姫に続きました。
激しい戦いの中
桃姫の前に
一際 大きな鬼が現れました。
鬼の頭です。
鬼の頭は 力も 数倍強く
桃姫は 鬼の頭が振る 金棒を
刀で 防いだのですが
後ろへ 吹き飛ばされてしまいました。
倒れた 桃姫に とどめを刺すべく
鬼の頭が迫ります。
そのとき 桃姫の前に
颯爽と 現れたのは……
1
護衛隊
…『【ハ・36】 護衛隊、参上』にすすむ
2
モモタロー
…『【ハ・37】 モモタロー、参上』にすすむ
3
ブタのヒーロー
…『【ハ・38】 ヒーロー、参上』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・36】 護衛隊、参上
そのとき 桃姫の前に
颯爽と 現れたのは
最強の護衛隊たちでした。
「桃姫を 守ることが
おれたちの 任務なんでね」
と 犬が言うと
猿と 雉も 笑顔で頷きました。
桃姫は
犬 猿 雉と共に
鬼の頭に 戦いを挑みました。
鬼どもを 束ねる 頭だけあって
力だけでなく 知恵も働き
強烈な攻撃をくらわせることが
なかなかできません。
反対に
桃姫たちは
鬼の頭の強烈な攻撃を
幾発も くらってしまい
徐々に 疲弊していきました。
このままでは 負けてしまう……
桃姫は 起死回生を信じて
犬 猿 雉と
団結して 攻撃することにしました。
それぞれに 声を掛け合って
単独で 攻撃をするのではなく
連携して 攻撃しました。
すると 次第に攻撃が効きだして
鬼の頭の表情にも
疲れの色が 見え始めました。
桃姫たちも
相当に 疲れてはいましたが
決して 諦めることなく
力を合わせて
攻撃を続けました。
そして――
…『【ハ・39】 大団円』にすすむ
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・37】 モモタロー、参上
そのとき 桃姫の前に
颯爽と 現れたのは
モモタローでした。
「姉さん!
大丈夫ですか!」
間一髪のところで
危機を乗り越えた 桃姫は
モモタローと 力を合わせて
鬼の頭に 戦いを挑みました。
――約三十分後
熾烈な戦いの果て
最後に 剣を振ったのは
桃姫でした。
モモタローが
鬼の頭の攻撃を わざと受けることで
一瞬の隙を作り
桃姫が 鬼の頭を斬りました。
鬼の頭は 首から血を吹き出しながら倒れ
二度と起き上がることがありませんでした。
こうして
鬼ヶ島の決戦は
桃姫たちの勝利で 幕を閉じました――
鬼ヶ島を 離れるときのことです。
モモタロー一座の姿が
どこにも 見当たりませんでした。
そのとき 猿が気づきました。
「あーっ!
鬼から 回収した 金銀財宝が
一部 なくなってる!」
犯人は 明らかに
モモタロー一座です。
雉が 上空高く飛んで
モモタロー一座の舟を 発見しました。
今なら まだ追いつけそうです。
ですが
桃姫は 追いかけませんでした。
桃姫の鬼退治は
終わりを迎えたのでした。
――数年後
ある地方を中心に
こんな物語が 語られるように
なりました。
『桃太郎は 鬼退治を成し遂げて
この世に 平和をもたらしたのでした』
そんな話を広めた犯人は
もちろん 奴らでしたとさ。
めでたし めでたし
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・38】 ヒーロー、参上
そのとき 桃姫の前に
颯爽と 現れたのは
ブタの姿をした
謎のヒーローでした。
「そこの娘 困っているようだな。
助けてやろうか?」
「え……?」
「なぁに 安心しろ。
お助け料は 一億万円だ。
ローンも可」
「え えっと……」
「それで おまえの相手は
どこにいる?」
桃姫は 鬼の頭を指さしました。
ブタのヒーローは
鬼の頭を見た途端
動きが止まりました。
しかし
ブタのヒーローは
果敢にも 鬼の頭に
近づいていきました。
刀を抜き
戦いを挑む……
かと思いきや
鬼の頭の隣に立ち
桃姫の方を向いて
刀を構えました。
「さあ 小娘!
どっからでも かかってこい!」
「ちょっと!
わたしの味方なんじゃないの!?」
「ふっふっふっ 甘いな。
わたしは 常に強い者の味方だ。
そーですよね 鬼の親分!」
ブタのヒーローは
満面の笑みを浮かべて
鬼の頭の足に 抱きつきました。
次の瞬間。
ブタのヒーローは
鬼の頭に 蹴り上げられて
遥か彼方へと 飛んで行きました。
――その後
桃姫は 一人で 鬼の頭に戦いを挑み
勝利を手にしました。
こうして
桃姫は 鬼退治を成し遂げて
みんな 平和に暮らすことが
できましたとさ。
おしまい
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・39】 大団円
そして 桃姫たちは
鬼の頭を 打ち倒しました。
鬼の頭は
「おれの負けだ。
さあ 一思いに 斬れ」
と 言いました。
桃姫は 刀をしまいました。
鬼の頭は もちろんのこと
護衛隊も おどろきました。
「あなたは これでわかったでしょう。
わたしたちには 敵わない と。
もう二度と
悪さはしないでください。
それから みんなから奪った
金銀財宝は 返してもらいます。
わたしが みなさんに
返しておきますので」
「なぜだ?
なぜ おれの命を奪わない?」
「殺生からは なにも生まれない。
でも 生きて 希望を知れば
なにかを 変えることが
できるかもしれない。
あなたのその手は
人々に 迷惑をかけるためだけに
あるのでは ないのだから」
桃姫は 護衛隊を引き連れて
鬼の頭の前から 去りました。
こうして
桃姫の鬼退治は
成し遂げられたのでした。
――数年後
すっかり 暴れなくなった鬼たちは
土砂災害の起こった地域で
土砂の撤去を手伝ったり
震災で崩れた家の再建を
無償で手伝ったりと
各地で 人々のために
活躍しました。
桃姫が 鬼の頭を助けたことで
助け合いの輪は 少しずつ広がり続け
人間も 鬼も 協力し合って
生きていける世界へと
繋がっていったのでした。
めでたし めでたし
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・40】 謎のケモノ道
桃姫を先頭に
ぐんぐんと ケモノ道を進んでいきます。
すると 大きな穴が ありました。
穴の中は 下り坂になっており
先は 暗くて見えません。
見るからに 怪しい穴だったので
護衛隊の三匹は
桃姫に 引き返そうと言いました。
「待って。
今 なにか聞こえたよ。
ほら また!
誰かいるみたい」
桃姫は 穴の中へと
入っていってしまいました。
護衛隊は
「これも 任務か……」
と 溜め息をつきながら
桃姫のあとに 続きました。
穴の中の坂を
ずっと下っていくと
急に まばゆいばかりの光に
辺り一帯が包まれました。
しばらくして 目が慣れると
そこにあったのは
パチンコ屋でした。
なんと 時空がゆがんで
未来の世界にあるはずの
パチンコ屋が
この時代の 穴の奥に
出現したのです。
桃姫たちは おそるおそる
パチンコ屋の中に
入ってみました。
すると 店内は
この時代の人々で 満員でした。
その中には なんと
桃姫の おじいさんもいました。
おじいさんは
山へ 柴刈りへ行く フリをして
この穴の中のパチンコ屋に
入り浸っていたのです。
さらに おどろいたことに
パチンコ屋の店内には
鬼たちが 多数いて
人間たちと一緒に
和気あいあいとしながら
パチンコを 打っていたのです。
さらに さらに!
鬼たちの中には
なんと 鬼のボスまでいたのです。
鬼たちが 鬼ヶ島から
人々の暮らす場所へと
姿を現すようになった理由は
このパチンコ屋に来るためだったのです。
しかも 鬼たちが
人間から奪ったと言われていた
金銀財宝は
このパチンコ屋で得た
景品だったのです。
事実を知った 桃姫は
もうすっかり
呆れ果ててしまいました。
桃姫は 桃姫の存在に気づかずに
パチンコを打ち続けている
おじいさんの頭を 後ろから
パチンッ! と叩いて
その場を後にしました。
穴から出ると
桃姫も 護衛隊も
それぞれ 家へと
帰っていきました。
――その後
おじいさんが
パチンコ屋に入り浸っていたことを
知った おばあさんは
おじいさんに 離婚届を突き付けて
桃姫と一緒に 出て行ったのでした。
おわり
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
●【ハ・41】 桃姫、アイドルへの道
桃姫は 都へ 上京しました。
さっそく 事前に連絡をしておいた
芸能事務所へと 向かいました。
対応してくれた男性は
桃姫を見るなり 鼻で笑いました。
桃姫の身なりが
あまりにも 田舎者だったからです。
桃姫は 恥ずかしくなって
面接の間中 ずっと下を向いたまま
顔をあげることが できませんでした。
結局 面接はうまくいきませんでした。
桃姫は 下を向いたまま
芸能事務所を出ました。
そのときです。
ちょうど 入ろうとしていた人と
ぶつかってしまいました。
「す すみませんっ」
桃姫は とっさに顔を上げて
謝りました。
そこにいたのは
身なりの立派な
年配の女性でした。
桃姫は またすぐに 下を向いて
その場を 去ろうとしました。
「待って」
年配の女性が
桃姫を 呼び留めました。
すべては ここから始まりました。
年配の女性は
この芸能事務所の社長でした。
業界でも やり手と評判の人で
幾人ものスターを
世に送り出していました。
その人の目に
桃姫は留まったのです。
桃姫は 女性社長に連れられて
髪型も 服装も 化粧も
すべてを変えてもらいました。
数時間後
鏡の前に立っていたのは
まるで別人のように美しくなった
桃姫でした。
その日から
アイドルになるための
レッスンが始まりました。
桃姫は どんなにつらくても
文句一つ 言いませんでした。
――そして
デビューを果たした桃姫は
すぐに トップアイドルになりました。
その人気は 海を越え
鬼ヶ島まで 轟きました。
鬼たちは 桃姫のライブに
参加したいがために
今までに起こした 暴動などを
すべて謝り
奪った金銀財宝を
すべて返しました。
桃姫は アイドルになることで
鬼退治を 成し遂げたのでした。
もちろん 桃姫は
そのことに 気づいてはいません。
今日も 桃姫はステージに立って
歌い 踊ります。
その歌と笑顔で
みんなに 幸せを届けるために――
おしまい
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