第14話 そしてつながる話

俺に向けて手を差し伸べてくれているふたりをみて、俺は愕然とした。

女の子にここまで言わせてしまったのは、ひとえに俺に度胸がなかったからだ。勇気がなかったからだ。


2人がここまで思いを告げてくれたうえで、俺がしり込みするわけにはいかない…と思う。


思い返せば、あの事件から向こう、彼女たちはずっと俺に寄り添ってくれていた。

それに対して、俺は何かお返しすることができていただろうか。


あの病室で初めて言葉を交わしてから、俺は二人にお世話になりっぱなしだ。


登下校から昼休みまで、彼女たちにはずっと楽しい時間や空間を俺に提供し続けてくれている。


決して献身ではない。二人が心の底から俺との時間を楽しんでくれているからこそ、俺も目いっぱい楽しむことができるんだ。


そんなふたりだから、俺も二人のことを好きになったんだ。


だから、もう迷わない。


俺の全力をもって、彼女たちの想いに応えたい。そう思う。


「ふぅ…」


息を吐きながら、手を差し伸べる彼女たちに近づいていく。


「龍くん…?」


「龍…」


2人は不安そうな顔をしながら、頭をゆっくりとあげる。

やはり、気丈にふるまっていても、心のうちは不安を感じていたのだろう。


もう、彼女たちにはこんな顔をさせないと、俺をこの世界に残してくれた女神さまに誓う。


彼女たちの手を握らず、俺は二人の間に入る。

手を握ってもらえなかったからか、彼女たちはその表情をゆがませる。


そんな二人のことを、両肩に腕を回して抱き留める。


「りゅっ、龍くん!?急にどうしたの!?」


「…今日は供給がおおすぎるっ…!」


二人が目を丸くしてる。

ハハッ、さっきまで結構重たい雰囲気だったと思うんだけど、2人のおかげで心が軽くなった気がする。


こういうところも俺たちらしさ、なのかも。


「ごめん、二人にここまで言わせて。改めて俺からも言わせてもらっていいか?」


「…うん、教えて龍くんの気持ち」


「私も知りたい。龍が私たちのことどう思ってるか」


「俺も二人のことが大好きだ。二人で、俺の彼女になってくれないか?」


そういうと、彼女たちのキレイな瞳から大粒の涙がこぼれだす。


「はいっ…!私を龍くんの彼女にしてください!」


「龍が私たちにどんなに飽きても、離してあげないから…!」


そんな彼女たちを見て、俺も感情があふれ出してしまう。


これは涙ではない。雨である。男は、生まれた時と、愛する者が死んだときにしか泣かないって、映画かドラマで言ってたはずだからな。






俺たちは、気持ちを落ち着かせるためにしばらくベンチに座ってゆったりとした時間を過ごした。


2人とも、思いが通じたからかスキンシップの壁が薄くなったように感じる。

今は、両側から俺の肩に持たれつつ、俺の膝の上で二人が手をつないでいる。


俺を含めて誰もしゃべらない静かな空間だが、そんな時間すらもいとおしく感じる。これが付き合ったことによる変化というやつか。


「えへへ…これが幸せってやつなんだね…」


右隣にいるひいら…いや、真琴は顔を最大限ふやけてしまっている。

これからは、こういう表情をたくさん見たいなと思う。


「…、好きだよ」


「ひぅっ!きゅ、急に名前を呼ぶのは反則では!?」


呼ぶなら、今だと思った。

俺の性格的に、タイミングを逃すとずっと名字呼びになりそうだったからな。


そういえば由奈の時も、慣れるのに時間かかったっけ…

と考えていると、突然左の二の腕をつままれる。


「むぅ、今私たち以外の女の子と考えた」


「そ、そんなことないって、


「…もっと呼んでくれたら許す」


「大好きだよ、奏」


「…クフッ」


「むぅ、私も私も!」


そういってさらに顔を近づけてくる真琴の頭をなでる。


「ふやへぁぇ…」


真琴さんや、おなごがしてはいけない顔になってますよ?

彼女たちの可愛いしぐさや顔をながめながらリラックスしていた俺なわけだが、

そんな俺の心を殴打するような言葉が、奏から飛び出した。


「龍」


「ん?どうした?」


「奥さんはあと4人までにしてね」


「…はい?」


「そうだそうだ!その話しなきゃだったよね!」


「ん、あとお付き合いしたい人が他にできたら、ちゃんと私たちに相談してね」


「…ごめんごめん。ちょっと言ってる意味が」


「え、だって結婚できるのは一人当たり6だもんね?」


「そう。だけど、せっかく一緒に奥さんするなら、やっぱり仲良くしたい」


「…はいぃ?」


「あれ?結構大きなニュースになってたと思うけど」


「結婚可能人数、5年ぐらい前に変わった」


んん?俺の記憶が正しければ、ここ日本にそんな重婚制度なんてなかったはずだが…!?


だからこそ世間的に受け入れられなくても、俺の全力で二人を守ると覚悟を決めたわけだが!?


いや、別に重婚が認められたからって二人を守るという思いに変化があるわけではないけれども…


まずい、いろいろと起こりすぎて混乱が…


「さっきも顔色悪かったし…大丈夫?病院…はもう開いてないだろうし…」


真琴は俺の体を隅々までペタペタ触ってくる。

あの…真琴さん、あまり男の子に不用意に触れるのは良くないと思います。


「いや、少し疲れが出ただけだと思う。一日寝たら元に戻るよ」


「明日も変わんない様子だったら、引きずってでも病院に連れていく」


「そのときはお願いするよ」


「…甘えてくるの、ずるい。不意打ち禁止」


奏はそのまま俺の腰に抱き着いてくる。


まぁ、もろもろのことは後でいいか。

いまは、この時間を甘んじて享受することにしよう。








帰宅後、俺はまっすぐに自室で重婚問題を解決すべくインターネットの海へと沈んだ。


『重婚化法案が可決、少子化対策のウルトラCとなるか』


これか…

脳の中の記憶媒体をどれだけ漁っても、こんなニュース全く覚えていない。

記事のpv数を見てもそれなりに大きなニュースだったはずなのだが。


「う~ん、考えててもわからん!だけど、俺にとって都合がいいのは確かなわけで…」


重婚化政策を詳しく調べると、




・男女ともに、配偶者を最大で6名まで持つことが可能


・重婚者のもとに子供が生まれた場合、一人当たり30万円の補助金が出る


・配偶者の数によって政府が支援を行う




このあたりが俺に関係する内容かな。

この政策が実施された当初は、いわゆる偽装結婚で補助金を不正受給するみたいなものが横行したみたいだけど、この1~2年は制度も定着して、実際男女ともに配偶者を多く持つ家庭も少なくないらしい。


簡単にいえば、割と普通にハーレムやら逆ハーレムが存在するってことだ。もうよくわからん。俺は考えるのをやめた。


俺はブラウザを閉じると、LIINリーンのアプリを開く。


目に留まったのが、いつも真琴と奏、そして俺の三人で作ったグループチャット、その名前である。


『愛の巣』


シンプル過ぎない?

なんか怖いんだが。


ま、まぁいいか。




KOTOKOTO:ふふふ、いいね、いい名前だね!これ眺めてるだけでご飯3杯はいけるね!


かなで:わかる。やっと私たちが龍のものになれたっていう実感がわく





…もう少し落ち着いたらメッセージを送ろう。なんか気恥ずかしいし。


さて、今日会ったことを報告しないといけない人間が何人かいるから、そちらに面セージを送るとしよう。




ryu:咲夜、ちょっといいか?


saku:なに?どうしたのお兄ちゃん?


ryu:いや実はな、真琴と奏の二人とおつきあいすることになった。


saku:__音声通話 着信__




「お兄ちゃんどういうこと!?」


「いや、その、メッセージに書いた通りなんだが…」


「グヌヌ…付き合うにしてももっと遅いと思ってたのに…」


「咲夜ー?今なんて?」


「な、何でもない!まぁとりあえずおめでとうって言っといてあげるよ!今はね!」


「あ、ありがとうな。…今はってなんだ?」


「さぁね!私はちょっと考えないといけないことができたから切るね!おやすみ!」


「お、おい…!」


そういうと、咲夜は本当に通話を切った。

なんか嵐みたいな時間だったな。どうしたんだ咲夜のヤツ…


次だ次。




ryu:今ちょっといいか?


山村由奈:なんだこんな時間に?


ryu:ちょっと報告しときたいことがあってさ


山村由奈:藪から棒にどうした


ryu:いやな、俺彼女ができてな。


山村由奈:__音声通話 着信__




「どういうことだ!彼女ができたって!」


「や、その、今日告白されたというかしたというか…それで」


「…なんということだ…初めては私がもらうはずだったのに…」


「由奈?」


「な、なんでもない!それで、どんな子なんだ」


「えっと、前にも話したろ?俺が通り魔から庇ったって子たち」


「待て。子ってなんだ」


「あ、いや、その…」


「…」


「庇った二人、両方とお付き合いすることに…」


「…はぁ。まぁ真っ先に私に報告したことは誉めてやろう」


「最初はさ…何でもない」


「すでに2枠が埋まってしまったというのか…これはウカウカしてられん…!」


「お~い、由奈~?」


「作戦をかんがえねば…まずは彼女とやらと会う機会を設けて…」


「由奈さ~ん、聞こえてますか~?」


「すまんが切るぞ!こうしてはおられん!ではな!」


「ちょ、ちょっと待て…切れたわ」


2人ともあわただしすぎではないだろうか。

いったい何があったってんだ…。


そのあと、両親にも報告を忘れずにしたところ、しっかりと祝福してくれた。

退院の時に、父さんも母さんも真琴と奏と仲良くなってたからな。


夏休みには二人を連れて帰ってこいとまで言われてしまった。

そのあたりは二人と相談して、だな。





KOTOKOTO:奏は龍くんのお嫁さん、後何人できると思う?


かなで:私の予想では2人は固い。


ryu:ちょっと待ってふたりとも。何言ってる?


KOTOKOTO:あ、龍くん!もし私たち以外に好きな人ができたらちゃんと相談してね!


かなで:私たちが直々に、龍にふさわしいかチェックする


ryu:ほかに彼女ができる前提なの?


KOTOKOTO:龍くんから自発的に作るっていうより…ねぇ?


かなで:たぶん、女の子の方から寄ってくる。龍はイケメンだから


ryu:そう言ってくれるのはうれしいけど…




そんな会話をしながら、日曜日の夜は更けていった。


2人の彼氏になって初めての登校、初めての授業、初めての放課後…すべてが全く違う景色に思えてくる。すごい新鮮な感じだ。


明日からの学校、楽しみだな。















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