無能と追放されたけど、“スキル進化”で全職業を極めた俺は、辺境で最強のギルドを作ることにした

天城リク

第1話「無能と罵られたその日、俺の“スキル進化”が覚醒した」

「──クロウ・レイン。お前を、ギルドから追放する」


その一言は、雷鳴のように俺の胸を打ち抜いた。


周囲を囲む冒険者たちは、皆、無表情。

仲間だったはずの視線は、どこか冷たく、突き放すようなものだった。


「お前のスキル《スキル保管》。一見便利そうだが、使えた試しがない」

「敵の行動を“記録する”だけで、“使う”ことも“発動”もできない」

「もう三年も育ててきたのに、まだ一つもまともな成果が出ていない……限界だ」


……わかってる。

俺だって、自分のスキルが戦いに役立っていないことくらい、分かってた。


だが、それでも。


「俺は、戦いたかった。役に立ちたかった。もっと──」


「十分だ。これ以上、時間を浪費させるな」


短く言い捨てたギルドマスターの声に、誰も異を唱えなかった。


 


唯一、幼馴染のエルナだけが、少しだけ視線を揺らした。

けれど、何も言わなかった。


俺を庇えば、次は自分が“足手まとい”と扱われる。

そんな空気が支配していた。


 


そして俺は、何も持たずにギルドを追われた。


 


* * *


 


森をさまよって、どれだけ時間が経ったのかもわからない。

何もかもが終わったような気がして、何も考えられなかった。


(……くそっ)


そう思った瞬間、ガサッ、と草の音。


振り返ると、2人組の盗賊風の男が、ニヤリと笑っていた。


「おいおい、こんな時間にひとりか? おとなしく金目のモン置いていけ」


「おや……“追放者”じゃねえか。こりゃ抵抗する力もなさそうだ」


 


まずい……逃げ場がない。武器もない。

スキルだって──いや、待て。


俺には、《スキル保管》がある。


今まで、数えきれないほどの戦闘を見てきた。

仲間たちの動き。敵の攻撃。剣の振り方、足運び、間合い──


(あの時は“使えない”と思っていた。だが、全部……覚えてる)


《スキル保管》が反応する。


【スキル条件達成──スキル《観察》が進化します】


──進化? 


【新スキル:《弱点分析》を獲得しました】


脳内に、ひらめくような視界の変化。

相手の動きが、読める……見える!


盗賊の右腕が、わずかに力む。

次の瞬間に繰り出される動きが、明確に予測できた。


(この角度……この間合い……)


落ちていた太めの枝を拾い、わずかな体重移動で踏み込む。

喉元の筋肉が開いた瞬間──


「が……ッ!?」


枝の先が、盗賊の首をかすめた。

軽い一撃だったが、ピタリと急所を突いたことで相手は倒れた。


もう一人も、驚愕して逃げていった。


 


勝った。……俺が、俺だけの力で。


(俺のスキルは、“進化”する……)


(なら……これから全部、進化させればいい)


息を吐く。震えていた手が、少しずつ落ち着いていく。


「──やってやるよ。俺を見下したやつら、全員見返してやる」


夜の森に、かすかな風が吹いた。


俺の“終わり”だと思っていた日が、“始まり”に変わった。


 


──次回、第2話『スキルは、進化する──俺だけの力で』へ続く。

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