一度だけなら、
花冷えの春から梅雨までは地味な色のハイネック、焙られる夏には飾り気もなにもないチョーカー、骨まで冷える秋から冬にかけては朱色のマフラーと一年中首元を何かしらで覆っている先輩に、サークルの飲み会の帰り道に他の連中と逸れて二人きりになったのを幸い、先輩のそれっておまじないか何かですかそれとも寒がりなんですかと酔った勢いで尋ねれば「こうしとかないと外れるんだよね、首」とこちらに黒々とした目を向けて「せっかくだから外してみる? 一回だけならお試しってことで、タダでいいけど」と酔いに生温く煮えた俺の右手を掴んでそのまま首元に添えて笑う先輩の肌の冷たさだけが指の先にいつまでもまとわりつく冬の夜。
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