解釈

迷い子が 帰らぬ森に 風が鳴る まだ私だけ 忘れられない

【私は、あなたと暮らした森に居る。

 大切なあなたを失い、長い年月ときを経てみな忘れたが、

 まだ私だけがあなたを想っている。】


木漏れ日の 記憶を抱いて 旅に出る 魔法の杖は 折れたままでも

【私は、輝いていた過去の記憶を抱えて旅立つ。

 かつての力は失われ、無力さを感じつつも、あなたとの思い出を求めて。】


良き強敵ともと 呼んだドラゴン 夕暮れに 炎のような さよなら告げた

【敵であり、仲間でもあったドラゴンとの別れ。

 別離の際、夕暮れの赤い空と、ドラゴンの吐く炎が重なる。】


蒼の花 あなたがつけた 名前さえ 忘れてしまう 千年の旅

【旅のさなかに見つけた名も無き花。かつて、あなたが名前を付けた花。

 その名前すらも、時の流れとともに薄れゆく。】


懐かしい あなたの使う 呪文さえ 唱える声も 震えて消える

【あなたのよく使っていた呪文を唱えようとするも、声が震えて途切れてしまう。

 いまだ治まらない、あなたを失ったことへの深い悲しみ。】


約束は 永久とわに眠る 遺跡へと 置き去りにした あなたの幻

【あなたと交わした約束は果たされないまま、

 長い年月ときが経ち、古代の遺跡のように忘れ去られてゆく。】


戦士らの 墓標に添えた 銀の羽 もう飛べぬまま 大地に塗れる

【かつて共に戦った仲間たちは既に亡くなり、墓標に銀の羽を供える。

 もうあの日の輝きは、失われてしまった。】


帰る場所 もう無いけれど 指さした 星座はきっと あの頃のまま

【幼き日を共に過ごした故郷はもう消えてしまったが、

 空を見上げると星座は昔のまま輝いている。

 その変わらぬ光が、わたしの慰めとなる。】


さよならを 幾度も告げた 旅の果て 今もあなたに 会いたくて泣く

【旅の中であなたとの思い出に触れ、そのたび私は別れを告げた。

 けれど旅の終わりに近づくにつれ、あなたに会いたいという切望が増す。】


ああ森よ もう一度だけ 抱きしめて 帰らぬ者が 還れるように

【最後に、私はあなたと暮らした森に戻ってくる。

 帰れなかったあなたが、いつか安らかに還ることができるようにと願い。】

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千年の旅 厳座励主(ごんざれす) @Gonzaless_1007

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