「化け物」と呼ばれる存在と、それを見張る立場に置かれた人間。
本作はその対立構造を強調しながらも、単純な善悪には落とし込まず、それぞれが抱えてきた時間と感情を、淡々と積み重ねている。そう、感じました。
物語の印象的な点は、残酷な設定や出来事がありながらも、描写の重心が「暴力」ではなく「日常」に置かれているところです。
食事をすること、会話をすること、眠れない夜を過ごすこと。
その一つひとつが、彼らが確かに“生きている存在”であることを伝えてきます。
誰が正しいのか、誰が嘘をついているのか。
その答えを急がず、余白を残したまま進んでいく語り口が、読後にじんわりとした重さと考える時間を残してくれる。そんな素敵な作品です。