第1話「口裂け女」

物置を片付けていたミオが偶然見つけた、ガムテープぐるぐる巻きの謎のスチール缶。

その中に入っていたのは、封印されていた「怪異」アノ。

勝手にスマホに住み着いたアノと、ミオの奇妙な共同生活が始まった――



物置でのアノ発掘事件のあと――

ミオは即座に姉・サナへ電話突撃をかました。

「お姉ちゃん!ちょっと説明して!? このスマホとアノのこと!!」

サナは例によってゴーグルを装着し、謎ガジェットを組み立てながら軽いノリで答えた。

「あ〜、見つけちゃった? いや〜隠してたつもりだったんだけどな〜」

「ごまかさないで!!」

サナは肩をすくめ、観念したように説明を始める。


 ① 祖母の実家に帰ったとき遭遇

 ② 元々はその土地の地縛霊的な存在だった

 ③ 追いかけてきたから返り討ちにした

 ④ 捕まえてスチール缶に封印 → そのまま物置に放置


「いや放置すんなよ!!封印したなら管理しといてよ!!」

《ひどーい!私はずっと大人しく反省してたのに〜》

スマホからアノが抗議の声を上げる。

「ていうかさ、専門機関とか相談しようとは思わなかったの?」

「だって怪異なんて滅多に出ないし? それにミオ、こういうの興味あるでしょ?都市伝説とか〜♪」

「軽く言うなーーー!!」


翌朝、ミオは気持ちを切り替えて学校へ向かう。

……が、もちろんアノは同行中。

《ところでミオ〜。この町、なんか怪異反応多いね〜♪ ワクワクしちゃう!》

「ワクワクすんな!」

《だってさ、最近はこういう怪異もデジタルに影響受けちゃってるし? 電波とかネットとか、昔よりずっと侵食しやすいんだよね〜♪》

「アンタが言うと冗談に聞こえないからやめて!」

《まあ私も電子化したクチだしね〜♪》

「怪異がデジタル化って普通ないからね!?」

《技術の進歩ってスゴイよね☆》

「うん、ホント迷惑の極みだけどね!」


教室に着くと、クラスメイトたちがざわざわ噂していた。

「ねえ知ってる? 駅前で“盛りすぎ自撮り女”出たって!」

「マスクしてたけど、口がバッキバキに裂けてたんだって〜」

「ヤバくない? 本物の“口裂け女”じゃん……!」

──ピコン。

《怪異反応:微弱ながら実在の可能性アリ》

「……マジで出てるの!?」


放課後の帰り道。

明らかに怪しい人物が立っていた。

白いコートに長い黒髪、マスク姿の長身女性──しかもチラチラこちらを伺ってくる。

「……もしかして、例のあれだよね?」

《まあ、間違いないだろうな》

次の瞬間、ミオのスマホがぶるっと震える。

画面を見ると──勝手に画像が送られてきていた。

《強制的に画像を送りつけてきたぞ》

「うわ…積極的すぎるストーカー系妖怪…」

開いた画像には、盛りすぎた自撮りが。


”#今日の自撮り #盛れた #口元加工しすぎたかも?”


「盛りすぎどころじゃない!これ──顎が三段階に割れてるじゃん…!」

《電波ノイズ検知完了──都市伝説“口裂け女”ver3.07β!最新パッチ適用済み!》

「そんなアップデートいらんわ!!」

女性──いや怪異は、“いいね”が付かないのか苛立ち始める。そしてついに口を開いた。

『わたし、キレイ?』

「う〜ん……はいとも言えないなあ〜…」

《正直すぎる!もっとオブラートに包め!》

「あ……歯は白いと思う!」

《……》

……が、それは地雷ワードだったらしい。

怪異は包丁を取り出し、屈伸運動を始めた。

「え、キレイって言わなかったらどうなるんだっけ?」

《それは──》

包丁をシャキンと構える口裂け女。

『──キレイって言わなかったら、盛って(物理)あげる♡』

「物騒すぎるわ!!」

口裂け女は低く沈み、まるで陸上スプリンター。

『わたし、キレイィィィ?』

ドン!!

超高速ダッシュ開始!

「ヒィィィィ!!めちゃくちゃ速い!!」

《ミオ、逃げて逃げて逃げてーー!!》

全力疾走するミオ。ハイヒールの音が猛追してくる。

「アノォォォ!!マジでなんとかしてぇぇ!!」

《待って待って!今…何かある…このスマホの中に…》

《……あった!!》

「え?なに?」

《『封印プロトコルβ版・試験実装中』──これ、サナが作ったアプリだ!》

「ちょっと待って!?私のスマホいつの間に改造されてんの!?」

《細かいことは後!とにかく起動!!》

封印アプリが起動。電波ノイズが渦巻く。

『もぉぉぉっと…盛らせてええええ!!』

袋小路で追い詰められるミオ。

「うわーー!もうダメーー!!」

《封印パラメータ収集完了!対象:口裂け女ver3.07β!》

「いやぁぁぁ!!」

口裂け女がジャンプして跳びかかる――その瞬間!

《封印プロトコル発動!吸引モード!!》

ピコンッ!!

怪異の体が粒子となり、スマホへと吸い込まれていく。

『いいね…くだ…さ……』

ピッ、ピッ、ピッ、キーン!

《怪異データ『口裂け女』──保存完了☆》

ミオはその場にへたり込んだ。

「はぁ…はぁ……なにこれマジで……」

《ミオ!大成功だよ!封印完了!》

「よくわかんないけど、なんとなく姉のおかげで助かったってことはわかったよ……」

《ちなみにこのアプリ、他にも色々隠し機能があるみたい♪》

「それが一番怖いわ!!」


ミオはスマホを見つめながら呟いた。

「……これ、保存したってことはさ……」

《うん♪ データ化されたから、いつでも引き出せるよ!》

「いや!引き出す必要ないからね!?封印しといて!」

ふと気づくミオ。

「ていうかさ、これお姉ちゃんのアプリだよね?勝手にインストールされてたやつ」

《うん♪ 他にもたぶん色々入ってるよ?試験実装中のやつ──》

「なんで私のスマホが実験場になってるのよ!?」

《だいじょーぶだよ!ミオならなんとかなるって♪》

「その軽いノリが一番コワイわー!!」



「──って、結局『盛りすぎ口裂け女』ってなんなのよ!」

《現代は自己顕示欲が強すぎる世界だからね☆》

「アンタが言うなぁぁぁぁ!」

《ミオも加工アプリ愛用者でしょ?》

「いや今その話する!?」



こうして、ミオの「日常系災難ライフ」はますますカオスに進化していくのであった──

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