私のスマホに怪異が住んでるんですが!?
水城七瀬
プロローグ
春の風がまだ冷たいある午後。
ミオは実家の物置でせっせと片付け作業に励んでいた。
「はあ〜……お姉ちゃん、自分で片付けるって言ったのに、結局私に丸投げじゃん……」
埃をかぶったダンボールの山。昔の教科書、ぬいぐるみ、絡まったコードの束、謎ガジェットたち──
姉・サナのおかげで、物置はすっかり私設ガラクタ博物館と化していた。
「……これ何?」「これも何?」と、ダンボールを開けては首をかしげ、ため息のループ。
そんな中、ひときわ目を引く物体が現れた。
――ガムテープでぐるぐる巻きにされたスチール缶。
「……なんでスチール缶?中身、大事なの?お姉ちゃんのまた変な実験道具とか……?」
半ば呆れながらも、好奇心が勝ったミオはペリペリとガムテープを剥がしていく。
ようやく開封すると──中から出てきたのは、一台のスマートフォンだった。
「スマホ……?しかも古っ!分厚っ!平成どころか昭和じゃん!てか、重いなこれ……なんか妙に重っ!」
手の中のスマホは、最新型とは真逆の無骨デザイン。
けれど、なぜかただのガラクタには見えなかった。不意にひんやりした空気が流れ、不穏な気配が漂い始める。
「お姉ちゃんのかな……?でもこんなの見たこと……」
なんとなく気になり、ミオは電源ボタンを押してみた。
当然、バッテリーなんて残ってないと思ったのに──画面がじわじわと点灯を始める。
まるで古いブラウン管テレビのように揺れる光。
やがて、砂嵐のようなザラついた画面が現れた。
「うわ、なにこれ。バグってない?ていうか、そもそも起動するの!?」
その瞬間、不意に音声が流れる。
《……ん……? あれ? 起きた……?》
「……え?」
耳に届いたのは、機械音声ともAIとも違う、不自然に自然な少女の声。
《……誰? サナ?じゃない……》
一瞬で目が覚めるミオ。
画面には少女のようなアバターが映っていた。淡い金髪に、和風のドレス風衣装。アニメキャラのように表情豊かに動くが、その瞳だけは──妙に生き生きしていた。まるで、本当に“そこにいる”みたいに。
《ねえ、あなた誰? もしかして……外に出られた?》
「え?え?待って、何このアプリ!?隠し機能?AI?いや、でも妙にリアルだし……動きも変に生々しい……」
《アプリって失礼な!私は“アノ”。サナに封印されてた──怪異だよ》
「………………は???」
あまりの情報量に、脳が一時フリーズするミオ。
《怪異って言っても、そんなに怖がらなくていいよ?私は悪い子じゃないし♪》
「怪異ってあの“怪異”!?妖怪とか幽霊とか、そういう部類!?AIじゃないの!?なんで普通に喋ってるの!?」
《普通にって言われても〜。あ、でも前よりはだいぶ劣化してるの。そろそろ限界だったかも〜》
「え、ちょ、お姉ちゃん何やってたの!?ええええ!?」
すると突然、ミオのスマホがブルブルと震え始める。
「わわっ!?ちょ、何これ!?」
《ちょっとだけお邪魔しまーす♪ やっぱ新しいスマホはサクサクだね〜♪》
慌ててスマホを振り回すミオ。しかし、画面内のアノは楽しそうに拍手していた。
《これで外の世界にアクセスできる!……ま、まだ制限は多いけどね〜》
「ちょ、待って!?勝手に私のスマホに入るなぁぁ!消せばいい?アンインストールどこ!?え?アプリ一覧にない!?ええ!?!?」
《消せませ〜ん♪ ま、しばらくお世話になります☆》
「よろしくじゃない!!」
──こうして、ミオとアノの奇妙すぎる日常が幕を開けた──。
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