第40話  ゲイランゲルの森を抜けよう! (2)

 インリさんの魔法はやっぱり便利だと言うことを再認識した。



「まだ、罠があるかもしれないので、気をつけて進んでいきましょう」



 各々が休憩を済ませた後、ヨル先輩は少し赤いオーラを出しながら僕達に言った。この能力に目覚めてから初めて赤い色のオーラを見たが、これは警戒?の色なのだろうか?まだまだこの能力について知らないことばかりで戸惑ってしまう。



 ふと好奇心にかけられてインリさんを見てみる。彼女は今どのような気持ちなのだろうか?



 しかし、どれだけ彼女を凝視してみてもオーラは見えない。少しぐらい警戒?のオーラが出てもおかしくはないと疑問に思ったがすぐに打ち消された。


 彼女は僕が漫画で見てきた魔女の中でも目を瞠るほどの技量をもつ魔女だ。何かあったとしても対処できると考えているのだろう。




 それからまた歩き出し西を目指した。途中でモンスターや罠が出てきたが、二人からのアドバイスもあって僕一人でもでも対処できるようになってきた。確実に一歩ずつ成長している。前世では得ることの出来なかった、心を満たされるような達成感に酔ってしまいそうだった。だがそれは唐突に終わる。別にモンスターとの戦いに負けたわけではない。



 村が見えたのだ。




「あっ」



 インリさんが驚きの声をあげる。



 今まで何の景色も変わらなかった木々が突然途切れ、開けた場所にいきなりドラゴンが横切る。



 ゴォー!


 あまりの風圧に身体がよろけ目に砂埃が入ってしまった。目をしっかり閉じ、風圧に抵抗するようにつま先に力を込める。


 そのまま風を切りながらそのドラゴンはそのまま去っていた。オレンジ色のドラゴンだった。だけど驚いたのはそれだけではない、また上空に別のドラゴンが飛んでいる。右にも左にも、視界で確認できる場所にはドラゴンの群れがいた。



 そしてそのドラゴン達が向かっている場所。長くて太い紫色をした塔を中心に黄金色に輝いている麦畑、森で見かけたモンスターを飼っている牧場、まだらに集落のようなものも見える。きっとあれが・・・・!




「インリさん、ユウ、あれがドラゴンランズビーです。あと一息です頑張ってください」


 そういったヨル先輩も興奮を完全に隠せていないように見えた。オーラが黄色だし、声も心なし弾んでいる。




「よ〜し!もうここまで来たら私、休憩無しで頑張れそうです!・・・・って!なんかあのドラゴン近づいてきていませんか!?」



 インリさんがビシッ!と指を指している方向には確かにドラゴンが、こちらに近づいて来ていた。しかし他のドラゴンの個体と比べてみると一回りも二回りも小さく見える。しかもすごい勢いでこちらに・・・・ってなんか僕にぶつかってくるんじゃ!?


 ?「オーイ!!危ねぇぞ!」


 その掛け声でハッとして慌てて回れ右をし、走り出す。今こそ修行の成果が発揮なるか?と思ったがドラゴンの方が速くあっけなくぶつかり、倒れた。



 くるくると僕の頭の周りに星が回っている幻覚をみる。



 ?「大丈夫かぁ?」



 気の強そうな男の声を最後に僕は気を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る