第33話 初めての野宿!


 しばらくお互い無言のまま、お姫様抱っこされながら森を進んでいた。奥の方に湖が見えたときは心底、安心した。


 ガサゴソ、ガサゴソ


 奥の方の草むらが揺れ動く。魔物か?ヨル先輩もそう思ったのか僕を静かに下ろして剣を出現させ構えをとった。


 ガサゴソ、ガサゴソ!


 草むらの揺れがだんだん近づき何か黒い影がピョンと飛び出した!


「うわ~ん!置いてかないでくださいよ〜!!さ゛ひ゛し゛か゛った゛〜!!!」


 飛び出してきたのはなんとインリさんだった。インリさんは涙やら鼻水やらで顔をグチョグチョにしてヨル先輩に抱きついた。そのせいでヨル先輩の服にインリさんの鼻水がべったりくっついた。ここからだと表情は見えないが心做しか青いオーラが見える。



 しばらくヨル先輩に抱きついて落ち着いてきたのか、鼻をすする回数が少なくなってきた。そこでようやくインリさんは怪我をした僕に気がついた。



「うわあああ!えっと・・た、旅人さん!ものすごい怪我をしているじゃないですか!?どうしたんですか!?」


 怪我の理由を聞かれて僕は苦笑する。修行の成果とでもいったらインリさんは驚いてしまうだろうか?というか旅人さんって・・・・・・そう言えば自己紹介をまだ済ましていないまま別れてしまったことに今気づく。ヨル先輩も僕の呼び名の違和感に気づいたようだ。



「ああ、すみません、インリさん。私の名前はヨル。そしてこちらがユウといいます。自己紹介が遅くなり申し訳ありません」


 ヨル先輩はペコっと謝罪の意を示すように頭を下げた。それを見たインリさんが慌てたように手を振る。


「そんな!そもそも私が勝手に出ていってしまったようなものですし!先程は気が動転してあんな事を口走ってしまいましたがヨルさんが謝ることは一切ありません!」


 そしてインリさんは僕に向き直り、僕のお腹に手をかざした。眩しい緑のオーラがお腹全体に纏った。



「ヘルブレードゥルセ!」



 その一言でみるみる僕のお腹の火傷のような怪我は跡形もなく消え去った。



「うわぁ!ありがとうございます!インリさん!」



「どういたしまして!何があったのかは取り敢えず後で聞くとして・・・・・私の魔法で簡易的なものですけど休める場所を造ったので、まずはそこで休みましょう!」



 ありがたいことに僕がエルフと苦闘している間にインリさんはせっせと休める場所をつくっていてくれたらしい。早速休める場所に案内してもらう。


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 インリさんが造ってくれた休める場所は、最初に魔法で木の枝を動かして腰掛けるスペースを造ってくれた所に焚き火をするための薪や樹の実、魚などを集められていた。



 僕達はその木の枝に腰を掛けた。この星には太陽がないので今が何時か分からないが、少し冷え始めていたので恐らく夜なのだろう。インリさんがブルッと身体を震わせたかと思えば、魔法で薪に火を付けた。


 パチパチパチ・・・


 心地よい音が、身体に伝わる火の熱が僕を暖かく包みこんだ。



「それで、一体何があってユウさんがあんな怪我を負ったのですか?」


 インリさんが恐る恐るという感じで切り出した。

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