第4話 再び寄り添う日々
再会から数日が経った。アキの部屋には、以前よりも頻繁にソラの姿があった。
ソラは決まって昼過ぎにやってきて、カフェで買ったパンや温かい飲み物を手に、アキの部屋のチャイムを鳴らす。アキはそれを受け取りながら、無言でソラを中に通した。
「なんか、もうここが自分の部屋みたいに思えてきた」
ソラが冗談交じりに言ったとき、アキはわずかに笑った。
「それ、俺が言うべき台詞じゃね?」
暖房の効いた部屋の中、ふたりはソファに座り、テレビもつけずにただ静かに時間を過ごした。言葉は少なかったが、不思議と空気はやわらかかった。
「なあ」
ソラがぽつりと呟く。
「またこうして一緒にいられるなんて、思ってなかった」
「……俺も」
「でも……このままでいいのかって、ふと思うときがある」
その言葉に、アキは目を伏せた。
「世間には、俺たちみたいなのはきっと受け入れられないって思ってた。だから……お前の未来を、壊しちゃうんじゃないかって、怖くなる」
ソラはすぐには返事をしなかった。
けれど、やがてソファから立ち上がると、窓際に寄ってカーテンを開いた。外はまた雪が降り始めていた。
「未来がどうとか、正しいとか間違ってるとか、そんなこと考えてる暇があったら……今、一緒にいることを大事にしたいと思う」
「……ソラ」
「意味なんて、あとからついてくるもんだろ」
ソラは振り返らず、雪を見ながら言った。
「俺はお前といることで、ちゃんと生きてるって感じられる。それだけで、もう十分だって思えるんだよ」
アキは立ち上がり、ソラの隣に並んだ。窓の外には、白い雪が降りしきっている。
ソラの肩に、ひとひらの雪が落ちた。アキはそっと手を伸ばし、その雪を指先で払った。
「あったかいな」
「それは、俺の手があったかいんじゃなくて、お前の気持ちが、今は冷たくないからだろ」
思わずアキは笑ってしまう。
ソラも同じように、少し照れたような笑顔を見せた。
「なあ、アキ」
「ん?」
「もし、また怖くなったら……そのときは、俺の手、掴んでてくれよな」
アキは短く頷き、隣に並んだソラの手をそっと握った。
ふたりの間に、ことさら大げさな言葉はなかった。
けれど、握られた手の温もりが、何より確かな約束のように感じられた。
雪が、静かにふたりの時間を包み込んでいく。
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