父はあまり頭がいいとは言えず、短気で、飲み込みが遅いです。更年期にもなり、余計に頭が悪く見えます。そんな人なので、給料もよくないらしく、生活の大部分は母によって支えられています。

父はことあるごとに、姉の潔白さを害しました。性的な意味ではなく、ただ、不快にしていました。私も、多少は苛立ちを覚えました。ただ、中学の頃に、学校も行かず勉強もしなかった時期に、一度「自殺してやる」と言われてから、私は父に強く刃向かえませんでした。

なので、姉が綺麗な眉を曇らせても、庇うことはしませんでした。

また別の日、父は私を連れて銭湯に行きました。車を走らせている最中、少しの気まづさの中、私は重い口を開きました。

「あ、夾竹桃が咲いている。珍しい。」

「咲いているな。あれは、毒だ。お前だ。」

また沈黙が生まれました。

「お父さんは、学生の頃は、何かしていたの。」

少し嫌味のように言いました。

「……まあ、友達とバイクで海に行ったり。お前のようには……。」

何か言いかけて、やめました。大体の見当はついていますが。

昔から、自分勝手なのです。人の、失敗だけを見て、憤慨します。なのに、母とは仲睦まじく、父と母、姉の三人の家庭が完成されているのです。

車を停め、銭湯に入った時には、父はなんの表情も浮かべてはいませんでした。

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